【おんなの目】 どんぶらこっこ

 暖かい部屋で、ゆっくりお茶を飲んでいたら、洗濯機からピーという電子音がして、洗濯が終わりましたよ、と知らせた。外は寒く首をすくめて洗濯物を干した。ふっと母の世代を思った。彼女達は井戸端や五右衛門風呂の残り湯を使って、洗濯板で洗っていたのだ。大きな敷布などは足まで使って。

 その昔、昔は、洗濯は川でしていた。物語の世界では、お爺さんは山に薪を伐りに行き、お婆さんは川で洗濯をするのだ。すると、川からはいつも何かが流れてくる。

 桃が流れてきて、お婆さんはそれを拾う。桃太郎が生まれる。

 川上から瓜が一つ流れて来た。割ってみたら、中から美しい女の子がオギャーと生まれた。瓜子姫と名づけて可愛がって育てた。ある日、瓜子姫が一人機を織っていると天邪鬼が来て姫を柿の木にしばり姫と入れ替わる。が、お爺さんに気づかれ鎌で首を切られ黍の畑に棄てられた。黍の首が秋に赤くなるのは天邪鬼の血が染まったからだそうです。

 殺された愛犬の灰を枯れ木に撒き、花を咲かせた、花さか爺さんの話。あの犬もお婆さんが川で洗濯していたら美しい香箱が流れて来た。拾って開けたら犬がいた。

 昔は、川には面白いものが流れていたのだなあー。今は洗濯は洗濯機がしてくれる。川には近寄らない。

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