好調のサイゼリヤ、冴えない無印良品、ユニクロ…。小売業全体は好調でも差がでた要因

3月末決算企業の第3四半期の決算発表が本格化しています。市場では米国や欧州などの景気減速を背景に、製造業を中心に通期の業績予想の下方修正が増えるのではないかとの懸念が出ているようです。


実際決算発表の先陣を切った世界的なモーターメーカーである日本電産(6594)は今期の業績予想を大幅に下方修正しました。これまで2,100億円としていた通期の営業利益予想を1,100億円と半分近くにまで減らしたのです。

日本電産は第3四半期までの累計で1,244億円の営業利益だったと発表しました。同社は第2四半期までに963億円の利益を稼いでいましたので、第3四半期の利益は280億円にとどまったことになり、これは前年同期比37%の大幅減益です。さらにこれらから逆算すると今迎えている第4四半期(1-3月期)は144億円の営業赤字を見込んでいることになります。

もちろん一社の結果だけでは個別要因が大きく、必ずしも全体の傾向と一致するわけではありません。ですが、今後の景気減速への不安から、日本株全体として上値を追うような雰囲気にはなりづらいようです。

3月決算企業の決算発表はまだこれからですが、先に小売業を中心とした2月・8月決算企業の決算発表はほぼ終わりました。ここからは小売業全体の決算の結果や、個別の好調企業・不調企業をご紹介します。

まず、小売業全体の決算動向は以下の通り増収増益で好調と言って良さそうです。

好調な企業2社は?

それでは好調な決算が目立った企業をご紹介します。まずはファミリーレストランチェーンのサイゼリヤ(7581)です。飲食業界は原材料や人件費の高騰が向かい風となり厳しい環境下にありますが、サイゼリヤは「値上げはしない」との方針を表明しています。

筆者も1人や家族でサイゼリヤによく行きます。一部人気メニューの数量が以前に比べて減らされるなど「実質値上げ」は行われている印象ですが、変わらぬ値段とおいしさはありがたい限りです。

そんなサイゼリヤの9-11月期の売上高は前年同期比27%増の431億円、営業利益は17億円と前年同期の2億円の赤字から黒字転換しました。実は日本セグメントはまだ赤字なのですが、その赤字が縮小したことに加え、中国などのアジア地域での売上高が大幅に増加したことが好調の要因です。株価は2022年秋からジリジリと上昇を始めると、1月11日の決算発表後に一段高となっています。

続いてもう一つ好調が目立ったのが靴の小売チェーン国内最大手のABCマート(2670)です。同社の9-11月決算は売上高が22%増の723億円、営業利益は62%増の90億円でした。国内・海外事業とも好調で、国内事業では外国人観光客(インバウンド)の売上が徐々に増えてきていることも発表されています。

決算が冴えなかった2社の共通点

一方で決算が冴えなかった企業ももちろんあります。代表的なのが無印良品を展開する良品計画(7453)です。9-11月の売上高は11%増の1,369億円と11%増加したものの、営業利益は55%減の50億円と大幅な減益となってしまいました。国内も中国も売上が思ったほど伸びきれておらず、原材料費の高騰や円安による仕入れ価格の上昇を吸収できなかったようです。ただ、明るい材料もあり、タイ・シンガポール・マレーシアなどASEAN地域での売上が好調で東南アジア・オセアニア事業は大幅な増収増益となっています。

また、大幅な年俸アップを発表し話題となったユニクロやGUを展開するファーストリテイリング(9983)も不調とまではいかないまでもやや冴えない決算でした。売上高は14.2%増の7,163億円と四半期として過去最高ですが、営業利益は2%減の1,170億円と小幅な減益でした。GU事業は増収増益を達成しましたが、やはり円安による仕入れ価格の上昇が厳しく国内・海外ともユニクロ事業は減益となってしまいました。

インバウンドの本格回復は2023年

このように日本の小売業は全体として見るとコロナ禍から立ち直ってきていますが、原材料費の高騰や円安によるコスト増をどう吸収していくかが課題となっています。

消費者の立場からすると値上げは避けてほしいのが本音ですが、日本経済全体のことを考えると値上げにより売上や粗利を増加させ、その分従業員の給与を増やして物価の上昇率を給与の増加率が上回って実質賃金が増加していくのが望ましいと思われます。

また、2022年秋以降徐々に増加している外国人観光客とその消費ですが、本格的に回復するのは2023年になってからです。このインバウンド消費が日本企業の業績にプラス寄与する可能性は非常に高いでしょう。日本経済復活の起爆剤、株価上昇材料として期待していきたいと思います。

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