「富士通ゼネラル体育館」老朽化で閉館へ 地域で親しまれ60年余「こわさないで」惜しむ声

3月末の閉館が発表された「富士通ゼネラル体育館」=川崎市高津区

 地域に親しまれてきた川崎市高津区の「富士通ゼネラル体育館」が、3月31日に閉館することが分かった。年間延べ2万人ほどが利用し幅広い世代がスポーツを楽しみ、憩いの場でもあった。利用者からは、急な閉館とその理由が分からず、悲嘆や混乱が広がっている。

 「どうかこわさないでください」

 体育館の管理事務所には、ダンス教室に通う子どもが存続を願う気持ちを書いた手紙がいくつもあった。テニス教室に通う50代女性は「和気あいあいとしていて地域の交流の場でもあったのに…」と話し、肩を落とした。

 体育館は1961(昭和36)年にオープン。富士通ゼネラルではなく、同社の健康保険組合が所有している。70年代から一般開放され、地域住民が利用できるようになり、愛されてきた。

 しかし、高齢者医療費が増えるなどし、同健保の財政状況はひっ迫していた。老朽化が進む体育館は修繕費や維持費などがかさみ、継続が難しくなったという。今月に入り「諸事情により3月31日をもって閉館」などとする通知を体育館に貼り出し、ホームページでも周知した。

 「子どもたちが来て『やめないで』と言うんです」

 NPO法人「高津総合型スポーツクラブSELF」の担当者は顔を曇らせる。同法人はスポーツ教室を展開するなどし体育館の管理運営を2015年から委託されていた。閉館を同健保側から聞いたのは昨年12月末で、「1、2年前の通知なら準備もできた。あまりに急だ」と憤る。

 利用者によるオンラインの署名活動も進み、2023年度中まで閉鎖の先延ばしを求めている。同健保の担当者は「このままでは赤字が続いてしまう。苦渋の決断だった」と明かす。詳しい閉館理由を利用者へ説明しなかったことについては、「困惑させてしまい、おわび申し上げたい。個別の問い合わせには誠実に対応する」とコメントした。

© 株式会社神奈川新聞社