捕獲動物を家庭の食材に 相模原・藤野地区で試み 鳥獣対策、森林保全へ ジビエ料理の体験イベントも

ジビエ肉の調理法などを学んだ体験イベント=相模原市緑区

 野生鳥獣による農作物被害が後を絶たない中、捕獲した動物を「家庭の食材」として活用する試みが相模原市緑区の藤野地区で始まっている。捕獲から消費までの循環モデルを地域で構築しようと、先月にはジビエ料理の体験イベントを開催。住民らは「日々の暮らしでできることから始め、鳥獣被害対策や森林保全につなげていきたい」と語る。

 今月20日夕方、藤野地区の住民らでつくる無料通信アプリ「LINE」グループにメッセージが入った。

 ≪明日さばきますので、お手伝いいただける方、よろしくお願いします≫
 投稿主は地元温泉旅館「陣渓園」の代表・大木康敏さん。メッセージには捕獲されたばかりのイノシシの写真が添えられていた。間もなくして数人が「行きます」と返信。翌朝、解体処理が行われ、希望者の家に食材として渡った。

 市によると、2021年度の鳥獣による農作物の被害は21トンで、金額は計640万円に上る。このうち最も被害が大きいのはシカ(10トン、350万円)で、イノシシ(6トン、111万円)と続く。

 シカやイノシシの被害は緑区に多く、藤野地区でも10年以上前から悩まされてきたという。農作物が食い荒らされることに加え、新芽や下草を食べられることによる土壌流出、その先の森林機能低下も長年の課題となっている。

 数年前に自治会のメンバーが猟銃免許を取得して捕獲に乗り出したが、廃棄という新たな問題が浮上した。同地区には加工処理の場所がなく、肉を流通させる仕組みもないため、捕獲しても大半を現地に埋めるしかなかったという。

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