【ライブレビュー】未唯mie Sings 新春 ”Pink Lady Night” 懐メロにはならない!  ステージに上がった瞬間に実感できるオーラ。今を生きる美しさと強さがそこにある!

キラキラと多幸感に溢れたピンク・レディーのオーラ

70年代後半、日本全国の茶の間の風景―― テレビでピンク・レディーが登場すると、子どもたちは「うわぁピンク・レディーだ!」と大はしゃぎをし、お母さんは台所で彼女たちの歌を口ずさむ。お父さんは平静を装いながらも、画面に釘付けだ。彼女たちがテレビに出ない日がなかった時代、国民はこれから日本がもっともっと良くなることを信じて疑わず、豊潤な80年代へと向かう日々にピンク・レディーは時代の寵児だった。

ピンク・レディーの多くの楽曲を手掛ける都倉俊一のメロディはディスコ、ソウルをフォーマットにしながらも歌謡曲独特のフックで子どもたちまで踊らせ、阿久悠のリリックは色濃く時代を映し出しながらもインパクトの強い語感で楽曲のイメージを人々の脳裏に深く焼き付ける。そして何よりもピンク・レディーが登場するだけで、ふたりの佇まいから放たれるキラキラと多幸感に溢れたオーラをあの時代を過ごした人なら誰もが知っているだろう。

毎年恒例、未唯mieの『新春 “Pink Lady Night”』

毎年恒例、今回で14回目を数える未唯mieの『新春 “Pink Lady Night”』が今年も1月14日、15日に目黒BLUES ALLEY JAPANで行われた。Pink Ladyと銘打っているこのイベントは、未唯mieがピンク・レディーナンバーを歌い魅せる。そして、そこには懐かしさの微塵もなかった。エバーグリーンの名曲として燦然と輝いていた。

ステージを見渡すと和洋折衷大所帯のバックメンバーに驚く。小鼓(こつづみ)大鼓(おおつづみ)、笛といった和楽器、コーラスを含めると30人近くの大所帯だ。ギターにはムーンライダーズの白井良明や、パール兄弟にも在籍したベーシスト、バカボン鈴木など“ロックの匠”とも言えるミュージシャンの姿が。そして、メンバークレジットには、このイベントの礎を作った村上 “ポンタ” 秀一が “Eternal Drummer” として名を連ねる。

期待が最高潮になった時、スパンコールが煌めくブルーの着物をアレンジした衣装にブーツというスタイルの未唯mieがステージに姿を現す。その瞬間に解き放たれたオーラといえば、それは昭和のスターなんて言葉では括ることのできない今を生きる美しさと強さがあった。まさに令和のスターじゃないかと。

2023年という時代と完全にコミットしたピンク・レディーナンバー

和楽器の音がフロアに鳴り響く新春らしいオープニングから一変、1曲目はロックンロールのスタンダードとしても有名な米ドラマのテーマソング「ピーターガン」のイントロからの「S・O・S」だった。ロックをフォーマットとし、複雑なアレンジを施しながらも、誰もが知る普遍的なメロディで歌われる国民的ヒット曲に度肝を抜かれる。そして「カメレオン・アーミー」「透明人間」「UFO」「サウスポー」と続く至福の時間。魅せて踊って聴かせるというピンク・レディー時代から変わらないスタンスが時を経てアップデートされている。とにかく懐メロにはならないのだ。

往年の名曲は斬新なアレンジにより、新たな命が注ぎ込まれる。ディープ・パープルの名曲「バーン」のリフを引用し疾走感溢れる「透明人間」。レゲエアレンジの「UFO」「サウスポー」ではコブシを利かせて音頭風に。この多様性に満ちたバンドアレンジの中で聴かせるピンク・レディーは、2023年という時代に完全にコミットしていた。

この新しさは、未唯mieのロックフィーリングを核としながらも様々な音楽的エッセンスを吸収したヴォーカリストとしてのスタンスだと思う。ピンク・レディーという時代を超え燦然と輝く看板を背負いながらも解散後の81年、阿木燿子、宇崎竜童が手がけた痛快なロッキンナンバー「ブラームスはロックがお好き」からソロとして歌い続け、皮膚感覚として身につけた音楽の多様性が時代に即しながら2023バージョンのピンク・レディーを作り上げたと。

そして、この日のライブのアンコール、ラストナンバーはピンク・レディー後期の大名曲「ピンク・タイフーン(In The Navy)だった。バンドアレンジは極めてシンプルに、言葉の響きに重きを置き、観客を励ますかのように力強く歌う。

 PINK LADY もっと元気よく
 PINK LADY もっとめちゃくちゃに
 PINK LADY もっと幸せに
 PINK LADY PINK LADY

シンプルな言葉が、不確かな時代だからこそ身に沁みる。令和の時代になっても未唯mieはピンク・レディーという看板を背負いながら、歌を通じ聴くものに力を与え続けている。その煌めきの中に垣間見せる、揺らぐことのない強さこそがシンガー未唯mieの本質なのだろう。

未唯mieオールタイムベスト、いよいよリリース

そして、このようなステージングで観客を魅了する未唯mieの魅力を語るのであればピンク・レディー時代だけでなく、ソロとしてのロックシンガーとしての軌跡も不可欠なものだ。3月1日(未唯mieの日)には待望のオールタイム・ベスト『MIE to 未唯mie 1981-2023 ALL TIME BEST』がビクターよりリリースされる。2枚組のCDには、レーベルの枠を越えてヒット曲「NEVER」(映画『フットルース』挿入歌日本語カヴァー)も収録されているのは嬉しい限りだ。

時代に即したアップデートで令和の今にも響くピンク・レディーの楽曲に圧倒されたからこそ、今につながる未唯mieの軌跡であるソロ作品をじっくり聴き直してみたい。ライブを観た後に強くそう思った。

カタリベ: 本田隆

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