ふるさと納税、ワンストップ特例制度を申請し忘れた…具体的な手続きと期限は?

2022年はエネルギー価格の上昇や、値上げラッシュによる家計への影響から、お金に対する危機感を持ち、少し勉強してふるさと納税などを始めたという方も多いのではないでしょうか? ふるさと納税は好きな地域に寄付をして、ワンストップ特例制度などの手続きをすることで自分の自治体に納める住民税を安くする制度です。でも「手続きが必要だったなんて知らなかった」ですって? なんて……嘆かわしい!

寄付をしただけで控除の手続きをしなければ、ただの気前がいい人になってしまいますよ。手続きを忘れてしまった方も、まだ間に合います。ふるさと納税で返礼品を選んで購入した後に何をしなければならないか、また手続きをしそびれている方が税金の控除を受ける方法について、お笑い芸人で本物の税理士である税理士りーなが解説します。


ふるさと納税の基本

「ふるさと納税で商品を買ったけれど、何がお得なのかわからない」「むしろ普通に買うより高いと感じた」という方が多いので、「いったい何がお得なのか?」というところから解説していきましょう。

まず、ふるさと納税のおおまかな流れは下記の通りです。限度額については、こちらの記事をご覧ください。

(1)自分が住んでいる自治体以外の自治体に寄付をする(限度額以内)
(2)「寄付をしてくれてありがとう!」の商品が届く
(3)控除の手続きをする(2と3が逆の場合もあり)
(4)翌年6月から納める住民税が安くなる(寄付金額 ― 2,000円の金額)

つまり、住民税を自分が住んでいる地域に納める分を減らして、別の自治体に付け替えることができる、ということです。2,000円余分に払う代わりに返礼品がもらえてお得ですね!

総務省の発表によると、特産品を活かした魅力的な返礼品が多い地方は、ふるさと納税による寄付で潤っている一方で、都心部など人口が集中する地域では税金の控除を受ける方も多く、東京都では令和3年の実績で150万人近くがふるさと納税を利用し、1,400億円もの税収減となっています。

この、税金の控除を受けるためには、「ワンストップ特例制度」または「所得税の確定申告」という手続きをする必要があり、いずれかをすることで翌年分の住民税が安くなります。「よくわからないから……」と返礼品を購入しただけで放置してしまうと、税額の控除を受けることなく、ちょっと高めの値段設定となっている返礼品を自腹で買って寄付しただけ、ということになってしまいます。

欲張ってたくさん返礼品を買って、手続きを忘れていては「なんて……嘆かわしい!」となってしまいます。改めて、きちんともれなく手続きが完了しているかを確認しましょう。

ワンストップ特例制度とは

1月から12月までの1年間の所得が給与のみの方で、ふるさと納税の寄付先が5自治体以内の方は、「ワンストップ特例制度」を利用することで、確定申告をしなくても控除の手続きが完了します。

給与のみで年末調整をすることで所得税の処理が完了している方は、確定申告をする必要がないケースがほとんどなので、その確定申告の手間を省くための制度です。寄付先の自治体のうち1ヶ所でも手続きが漏れていた場合は、すべての自治体の寄付について確定申告で手続きをしなければなりません。

すべて手続きしたと思っても、ワンストップ特例制度の締切りは寄付の翌年1月10日必着ですので、どこか1ヶ所でも遅れてしまった場合は確定申告を行うことになります。郵送でギリギリになってしまった場合は、自治体に問い合わせして期限内に手続きが完了しているかどうか、確認しましょう。

自治体に確認した結果、間に合っていなかったですって? なんて……嘆かわしい!

いいえ、嘆いていないで、落ち着いて確定申告の準備をしましょう。大丈夫です、確定申告の期限は3月15日です。確定申告で「寄付金控除」という手続きをすることで、ふるさと納税に関連する少しの所得税が安くなり、残りの金額は2,000円残しで住民税から安くなります。

確定申告の準備資料

まず必要なものは、給与所得の源泉徴収票です。毎年1度もらうA4サイズの半分、つまりA5サイズの用紙です。この用紙に、給与の総額や所得税の計算をする時の控除の内容などがしっかり書いてあります。ないのは、年末調整で行うことができない「医療費控除」など一部の控除と、ふるさと納税を含む「寄付金控除」です。

これら、源泉徴収票に記載のないものについて資料を揃え、確定申告を行うのです。寄付金控除に必要な書類は、具体的には「寄付金に関する受領書」または「寄付金控除に関する証明書」が該当します。

「寄付金控除に関する証明書」は、自治体ではなくふるさと納税サイトで発行が可能です。国税庁長官が指定した特定事業者で発行することができ、「さとふる」「ふるなび」「楽天ふるさと納税」「ふるさとチョイス」など、有名ふるさと納税サイトはほとんどがこの証明書を発行することができる事業者として登録されています。この証明書は、これまで自治体ごとに発行されていた寄付金の証明書を、ふるさと納税サイトでまとめて1枚に集約して発行できるため、従来と比べると大変便利になりました。

証明書の発行は、XMLデータというデータ形式でダウンロードすることも可能で、XMLデータなら確定申告書を作成する際にe-Taxを使う場合は、そのデータファイルを読み込むだけで、詳細の入力をすることなく自動的に寄付の内容を読み込んでくれます。または、マイナポータルを連携されている方は、e-Taxとマイナポータルを連携させた上で、「e-私書箱」というポータルサイトでふるさと納税データを連携することで、e-Taxの入力時にe-私書箱からふるさと納税データを事前に読み込んで、確定申告書を作成することができます。

なお、e-私書箱を使ったマイナポータル連携を利用できるふるさと納税サイトは、さとふる・ふるなび・楽天ふるさと納税・ふるさとチョイスなど7サイトのみです。

マイナポータル連携は「ふるさと納税」だけではなく、生命保険や地震保険の控除証明や公的年金の受け取り(源泉徴収票)、株式などの特定口座年間取引報告書、住宅ローン控除についても連携が可能ですので、毎年年末調整や確定申告で添付する資料がたくさんある方は、これを活用すると毎年の手続きがかなり簡略化されます。なんて……喜ばしい!

ただし1枚にまとまる「寄付金証明書」の発行や「e-私書箱」との連携は、ふるさと納税サイトで集約するのに自治体とのやりとりがあるため、数日間の日数が必要です。証明書をまだ取得していない方は確定申告期限ギリギリに発行しようとすると申告期限に間に合わないことも出てきます。

期限を過ぎても税金が増えるわけではありませんが、早めに資料を取り寄せて、早めに申告の準備をしておきたいですね。早く申告しておくことで、還付が早く返ってきて「なんて……喜ばしい!」ですね。

具体的なe-Taxの入力

e-Taxを利用して確定申告を行うには、国税庁「確定申告書等作成コーナー」というページにある、「作成開始」ボタンでスタートします。

画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」より引用

提出方法を聞いてきますので、印刷して税務署に提出するか、マイナンバーカードとスマホを使ってマイナポータル連携させて提出するかなどの中から選択して次に進めてください。令和4年分申告書の中の、所得税の申告ですので一番左のボタンで申告書を作成します。

画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」より引用

その後は、質問に答えながら画面を進めてください。

画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」より引用

給与所得の入力で「源泉徴収票」の記載内容をもれなく入力してください。これ1枚だけを入力した時点で、画面を税額まで進めて源泉徴収票に記載の「源泉徴収税額」と一致しているかどうかで、源泉徴収票の内容がもれなく正しく入力できているかどうかが確認できますので、不安な場合は試してみてください。

給与所得の入力ができたら、いよいよ寄付金控除の入力です。所得控除の画面で寄付金控除の「入力する」ボタンを押してください。

画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」より引用

寄付金控除の入力画面では「都道府県、市区町村に対する寄付金(ふるさと納税など)」を選択し、寄付先や寄付年月日などもれなく入力してください。

画像:国税庁「確定申告書等作成コーナー」より引用

「入力終了(次へ)」ボタンで画面を進めて、住所や還付銀行口座などを登録すれば出来上がりです。税務署に提出が完了したら、控えをスクリーンショットや印刷などして保存しておきましょう。問い合わせなど、何かあった時に役に立ちます。

また、電子申告の場合は提出後に申告書の控えとは別に「受信通知(メール詳細)」という画面が表示されます。これは、税務署が間違えなくこの日時で受け付けましたという証拠になりますので、そちらも保存(または保管)するようにしましょう。


ワンストップ特例制度を使えなかった方でも、税金を控除する方法がありますので、5自治体を超えてしまったり、期限に間に合わなかったりした方も、諦めずにしっかり申告書を提出して控除を受けましょう。

そして、6月以降に給与から天引きされる「住民税」の金額をどうぞお楽しみに!

© 株式会社マネーフォワード