新生児検査に2難病追加へ 全額公費負担は都道府県初 栃木県

栃木県庁

 栃木県が2023年度、新生児の先天性の病気を無料で調べる「新生児マススクリーニング検査」の対象に、「脊髄性筋萎縮症(SMA)」と「重症複合免疫不全症(SCID)」を加える方針であることが31日までに分かった。この二つの難病は近年、治療技術の進歩などで早期に発見すれば救命が可能になった。一般社団法人日本小児先進治療協議会(熊本市)によると、二つの検査費を全額公費で負担するのは47都道府県で初めてとみられる。

 県は現在の対象と合わせた計22種類の病気の検査費として、23年度一般会計当初予算案に約7700万円を計上する見通し。マススクリーニング検査は全ての新生児が対象で、都道府県や政令指定都市が実施している。本県では県保健衛生事業団が新生児の血液を検査している。

 SMAは遺伝子の一部が欠け、全身の筋力低下や筋萎縮が進行する。重症では寝たきりとなり死亡することもある。SCIDは遺伝子の変異で感染症にかかりやすくなり、早期に治療を受けないと生後1年以内に死亡することが多い。それぞれ2万人に1人、5万人に1人の割合で出生すると推定されている。

 一方、SMAは20年に治療薬が承認され、症状の進行などを防げるようになった。SCIDも早期発見すれば命を救うことができ、名古屋大病院は21年10月、国内で初めてスクリーニング検査で患者を見つけ治療につなげたと発表した。

 県保健衛生事業団は22年度、日本小児先進治療協議会の補助金を活用。自治医大と獨協医大、済生会宇都宮病院と連携し、県事業とは別の「研究事業」として二つの難病の検査も無料で行っている。

 一方で、研究事業が終了後の23年度以降は保護者が数千円を負担する必要があるため、医療関係者から公費支援を求める声が出ていた。

 福田富一(ふくだとみかず)知事も22年10月の関東地方知事会議で要望するなどして全国一律での実施を国に求めてきたが、安心して妊娠・出産できる環境づくりを進めるため県独自で公費負担することを決めたとみられる。

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