NBAエリート養成機関で腕を磨く18歳のジェイコブス晶が一時帰国で見せた充実の表情 古巣の試合を観戦、話を聞いた

ポーズを取るNBAグローバル・アカデミーのジェイコブス晶=2022年12月25日、横浜国際プール

 バスケットボール男子のBリーグ1部(B1)の横浜ビー・コルセアーズ(BC)で特別指定選手としてプレーし、アメリカのプロNBAのエリート養成機関グローバル・アカデミーに日本勢として初めて参加しているジェイコブス晶(18)。昨年末、一時帰国し、古巣の横浜BCと大阪エヴェッサ戦を観戦した。その際に近況を聞いたところ、少数精鋭の一人として過ごす日々に「毎日バスケばかりですごく楽しい。やっぱり高いレベルでできるのがすごく楽しい」と生来のバスケ好きらしく充実の表情を浮かべた。(共同通信=木村督士)

 ▽身長7ミリ伸びた

 NBAは米国外の才能を育成するプログラムとしてインド、メキシコなどにも同様のアカデミーを置く。グローバル・アカデミーは2017年にオーストラリアのキャンベラに開設された。これまで同アカデミーからNBAには、2021年のドラフトで出身者として初の指名を全体6位で受けたジョシュ・ギディー(サンダー)や、昨年のドラフトでペリカンズに入団したダイソン・ダニエルズが巣立った。ジェイコブスはそこでバスケ漬けの生活を送る。

米国遠征でプレーするNBAグローバル・アカデミーのジェイコブス晶=2022年12月17日、ラスベガス(NBA Academy提供)

 午前9時ごろからのシュート練習にウエートトレーニング。昼食を挟み、午後3時半から夕方6時までのチーム練習が加わる。居残り練習もできるという。年代別日本代表デビューを果たした昨年8月のU18(18歳以下)アジア選手権で負った左手首の傷も癒えた。同12月にソルトレークシティー、ネバダ州ラスベガスと回った米国遠征では同年代の選手らを相手に対外試合に臨み「自分の活躍が見せられた」とうなずいた。201センチの身長も7ミリ伸びて201・7センチになったという。

 ▽米遠征での収穫

 「NBAと日本代表はずっと目標で夢」と公言してきたジェイコブスにとって収穫の多い遠征となった。アカデミー出身者のダニエルズが所属するNBAペリカンズの試合も観戦。先輩が最高峰のコートで躍動する姿を目の当たりにし「このアカデミーから出た選手が、ここで活躍している」と大いに刺激を受けた。
 ジェイコブスと同じくBリーグを経由してNBA入りを目指す東京五輪代表の馬場雄大とも言葉を交わす機会があった。NBA下部Gリーグでマーベリックス傘下レジェンズに所属する馬場のプレーを実際に見て「代表になるにはどのぐらいのレベルじゃないといけないか、もっと分かった」と2028年ロサンゼルス五輪出場を狙う自身の現状との距離を測った。

取材に応じるNBAグローバル・アカデミーのジェイコブス晶=2022年12月25日、横浜国際プール

 新たな環境に身を置くことで、思い描く道筋もより具体的になってきた。昨年のドラフトでは1~7位までが米大学を経ており、8位がダニエルズだった。ジェイコブスも今後は全米大学体育協会(NCAA)1部校への進学を念頭に置きながら、今年6月開幕のU19ワールドカップ(W杯)にも「そこで活躍したい」と狙いを定める。

 ▽日本への思い

 昨年8月にNBAと国際バスケットボール連盟(FIBA)がキャンベラで開催したキャンプ、バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・アジアでは、英語やプレーで苦労する仲間の選手を助ける献身的な働きが認められてスポーツマンシップ賞に輝いたように、周囲への気遣いを忘れない。昨季自身がつくった17歳7カ月の史上最年少出場の記録は内藤耀悠(北海道)に16歳10カ月で更新され、さらにその数字も今西優斗(名古屋D)が16歳7カ月に塗り替えた。それもジェイコブスはごく自然に「若い選手が日本の未来になるし、そういうのを見ているとうれしい」とポジティブに捉えている。
 大阪戦では試合前のセレモニーに横浜BC出身者として登場。ファンから温かい拍手を受けた。「とてもうれしい。今はチームにいないけど、ビー・コルセアーズの一人という気持ちがすごくあるので」と古巣への思いを語る。今季河村勇輝を軸に好調なチームの動向も把握しており「ビー・コルセアーズで機会をもらったから今、NBAアカデミーにいる。すごく感謝しているし、応援したい気持ちがすごくある」と話す。河村とも連絡を取ることがあるといい、リーグを代表する司令塔に成長した先輩の活躍には「すごく励みになる」と刺激を受けている。

Bリーグ1部大阪戦前のセレモニーに横浜BC出身者として登場したジェイコブス晶=2022年12月25日、横浜国際プール(C)B.LEAGUE

 ▽高みを見据えて

 参考にするルカ・ドンチッチ(マーベリックス)の今季のプレーぶりに「シュートがすごくきれい。難しいシュートもさらっと決める」と脱帽する。身長201センチとサイズが似通っているドンチッチのオールラウンドなパフォーマンスぶりは、チームでガードとフォワードの両方をこなせる役割でコートに立つジェイコブスが目指す理想だ。
 世界には同じ2004年生まれで既に注目を集める存在もいる。身長221センチのフランスの新星ビクトル・ウェンバンヤマは今年のNBAドラフトで全体1位指名が有力視される。NBAのアダム・シルバー・コミッショナーが各チームがドラフトで有利な順位を得られるよう、あえて負ける行為がないようにと言及し、釘を刺すほどだ。

2022年10月6日、イグナイト戦で3点シュートを放つメトロポリタンズ92のウェンバンヤマ(右)=米ネバダ州(NBAE/ゲッティ=共同)

 ジェイコブスはウェンバンヤマに「本物の人間じゃないなと思っちゃうサイズでドリブル、シュートができる。どうやってディフェンスすればいいんだろう」と驚きながらも、気後れする様子はない。日本から新たな道を切り開いている先駆者は「彼と比べれば身長がないが、もっと頑張れば同じレベルにいけると思う」と高みを見据えた。

ジェイコブス晶=22002年12月25日、横浜国際プール

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