JR西、芸備線の厳しい現状説明 沿線自治体 岡山でヒアリング開始

岡山、広島県が芸備線を巡って初めて行ったJR西日本へのヒアリング

 利用が少なく存廃問題が浮上しているJR芸備線を巡り、岡山、広島県などの沿線自治体は1日、JR西日本に対し、初のヒアリングを行った。詳しい経営状況の把握が狙い。初回は、JR西がこれまで公表してきた資料を整理して路線を取り巻く厳しい現状を説明した。継続開催する予定で、自治体側は次回以降、さらに踏み込んだデータを示すよう求めた。

 JR西は、利用が低迷している赤字路線で、地元に存廃を含めた将来の在り方を協議するよう求めている。岡山、広島県など芸備線の沿線自治体は応じておらず、ヒアリングは利用促進策検討のために企画。初回は両県と新見、庄原市など沿線5市とJR西、国土交通省が参加して岡山市内で開催。冒頭を除き、非公開で行われた。

 終了後、取材に応じた岡山県の池永亘県民生活部長らによると、JR西は、会社発足時(1987年)から芸備線の一部区間で乗客が92%減り、1キロ当たりの1日平均乗客数(輸送密度)が2桁台の区間もあるなど、同社の中で最低ランクにある利用状況や収支を報告。沿線人口は今後も減り、これまで新幹線や都市部在来線の収益で赤字路線を維持してきた内部補助の仕組みが新型コロナウイルス禍による社会の変化で崩れているなどと説明した。

 自治体側は、赤字路線維持の可能性を探るため全路線の収支公開を求めたほか、芸備線利用者の具体像といった資料も要求。JR西は「算出や精査に時間がかかる」などとし、次回以降に持ち越した。

 国交省は、準備中の公共交通支援策の概要を紹介。2023年度の開始を目指し、路線の存廃や利用促進策を国が主導して自治体、事業者が議論する路線協議会(関連法案を今国会提出予定)などを説明した。

 今後の開催日程は未定だが、池永部長は「疑問がなくなるまで続け、必要な情報を求める」とした。

 JR西は昨年4月、岡山県内の芸備、姫新、因美線を含む輸送密度2千人未満の17路線30区間の収支を公表し、自社単独での維持は困難と表明。地元協議が進まないため、同11月には、芸備線で特に利用が少ない備中神代(新見市)から備後庄原(庄原市)までの3区間(計68.5キロ)で、他路線に先行して協議できるよう国に協力を要請した。

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