秦の始皇帝の時代に起こった、歴史上名高い「焚書坑儒」とは?【論語】

さらに四百〜五百年後、秦(しん)の始皇帝の時代になると、それまで受け入れられていた儒教(孔子を祖とする教学)が、今度は排斥されるようになるのです。

民間にある、医薬と農業以外のあらゆる書が焼き捨てられ、数百人の儒者を坑(あな)に埋めて殺害しました。歴史上名高い焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)とは、このことです。

孔子の一族は危機を察知し、『論語』の原本を早々に家の土壁に塗り込めて隠すことで、何とか難を逃れることができました。当時の書物が、まだ紙に書かれたものではなく、竹簡や木簡に記されていたために、壁の中に塗り込めることが可能だったのです。

その後、孔子の教えは、漢の時代には儒教として国教化されるまでになり『論語』は聖典として普及するところとなったのです。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 論語』
監修:山口謠司 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1963年長崎県生まれ。博士(中国学)。大東文化大学文学部大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現大東文化大 学文学部中国学科准教授。 主な著書に『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)、『日本語を作った男 上田万年とその時代』(第29回和辻哲郎文化賞を受賞。集英社インターナショナル)、『日本語の奇跡〈アイウエオ〉と〈いろは〉の発明』『ん─日本語最後の謎に挑む─』『名前の暗号』(新潮社)、『てんてん 日本語究極の謎に迫る』(角川書店)、『日本語にとってカタカナとは何か』(河出書房新社)、『大人の漢字教室』『にほんご歳時記』(PHP 研究所)、『漢字はすごい』(講談社)、『語彙力のヘソ』(徳間書店刊)、『おとなのための 1 分読書』(自由国民社)など著書多数。

2500年の時を超え、「聖書」と並び読み継がれてきた孔子の言葉を著した『論語』。「人生最高の教え」と賞される、この全20章500余の短文から現代により通じる「珠玉の言葉」を厳選して紹介、図解でわかりやすくまとめた1冊!

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