「育児中の学び直し」発言に批判の声…日本のリスキリングで重要なこととは

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。1月30日(月)放送の「ニュースFLASH」のコーナーでは、岸田首相の育休中のリスキリング発言に関するニュースを取り上げました。

◆岸田首相、育児中の学び直し後押し発言が問題に

1月27日、参議院本会議で自民党議員から産休・育休期間中の女性に対するリスキリング(学び直し)支援が提案されました。これを受けて、岸田首相が「育児中の学び直しをしっかりと後押ししていく」と発言。

この発言に対し、翌日のテレビ番組で、日本共産党の小池書記局長が「育休中は子育てに格闘している。リスキリングなどできるわけがない」と批判し、国民民主党の榛葉幹事長は「がっかりした」と落胆。また、兵庫県明石市の泉市長は自身のTwitterで「夜も寝れない状態で何を学び直せというのか。そういう総理こそ、政治を学び直したらいかがか」とつぶやいています。

番組Twitterには「手当という形で支給するより、保育料や授業料の一部負担にしたら?」と再分配のあり方に対しての意見、そして「リスキリング発言、もう終わりだなと思った。『休んでいると遅れるぞ』って感覚がそもそもズレている」、「新生児子育て中の母の自分時間は多く見積もっても1日5分」という厳しい意見が。一方で「育休明けには学ぶ余裕もないにしても、子どもが大きくなってからの再就職には例の政策は有効だなって見ている。反対するんじゃなく誘導してあげればいいのに」という声もありました。

また、自民党の松川るい議員は、自身のTwitterに「育休中にリスキリング、良いアイディアだと思うのでつぶさないでほしい」、「批判は育休を『暇扱い』しているとの義憤によるものでしょうし、その点は育休中は決して暇ではなく大変な重労働が存在することは私も実感」といった旨をツイート。育児は女性だけの仕事ではなく、夫やパートナーも一緒に育休を取り子育てすべきであり、ぜひこの制度を使ってほしいと訴えています。

岸田首相は1月30日の国会で、「リスキリング(学び直し)に取り組める環境整備を強化していくことが重要だという趣旨で申し上げた」と釈明しました。

◆育休中ではなく全世代に…リスキリングで大切なこと

この件に関して、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんはまず「リスキリングが悪者になっているのはちょっとかわいそう」と嘆きつつ、問題の本質は「産休・育休にターゲットを絞ってリスキリングを当ててきたところにある」と指摘。「本来は当然産休・育休の人も含め、全ての世代が支援の対象にならないといけないのに、なぜ優先順位として産休・育休を一番上に持ってきたのか。そこが完全に間違っている」と主張します。

大空さんは全ての世代がリスキリングできるようにすべきとし、もっと本質的なリスキリング、学び直しが広がらないといけない」と懸念します。

獨協大学特任教授の深澤真紀さんは「日本は卒業した後に学ばない、先進国でも特殊な国」と言い、「リスキリングも危険」と訴えます。IT技術を身につければいいといったイメージがあるものの、「そうではなくて、働くための思想であったり、私たちは学び直しというより"学び足し”という言葉を使うことが多く、新しいことを足していこうと思っている」と深澤さん。「全ての世代がどんなときでも学び続ける、学び足していくんだという思想だと思うので、それを子育てにぶつけるのは非常に上手くない」と持論を述べます。

臨床心理士のみたらし加奈さんは、自民党議員の質問に首相が答えたことから、「個人的には岸田さんが名指しで批判されていることに関しては疑問がある」とその矛先に疑問を感じつつも、「こうした批判が集まるくらい、育業中の方に対する理解がないように見えるスタンスを取り続けていたり、それこそ女性に対しての支援というところで、当事者の声を抑えてしまってきたからこそ、こういうふうに批判が集まるんだろうなと思った」と語っていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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