韓国高裁 対馬・観音寺に仏像所有権認める 関係者ら歓迎「返還への第一歩」

韓国の高裁判決を受け「返還に向けた第一歩。光明が見えた気がした」と話す田中前住職=対馬市、西山寺

 長崎県対馬市の観音寺から盗まれ韓国に持ち込まれた仏像を巡り、韓国の大田高裁は1日、同寺に盗難仏像の所有権があると認めた。2013年1月に韓国当局が窃盗団を摘発、仏像を回収してから10年。同市の関係者からは「返還への第一歩。光明が見えた」と歓迎の声が聞かれた。
 観音寺前住職の田中節孝さん(76)は同市厳原町で報道陣に対応。所有権を主張する韓国の浮石寺側が上告の方針を示したことに「根気強く返してくれと訴え続けるしかない。最高裁にも良心のある決定を望みたい」と淡々と話した。
 高裁判決は、民法上の「取得時効」が成立し、観音寺に所有権があると認定。総代長の村瀬辰馬さん(68)=同市豊玉町小綱=は「地域の人がご本尊を何百年も敬い、大事に守ってきたことが認められた」と喜んだ。日韓両国が関係改善に動く中での判決。「対馬は古くから日韓関係の橋渡しの場所。仏像問題は喉に刺さったとげだったが、今回の判決が改めて両国の友好の契機になれば」とした。
 対馬市の比田勝尚喜市長は「ようやく正当な判決が下されてうれしい。一日も早く仏像が戻ることを心から待ち望んでいる」。大石賢吾知事は「県としても、一日も早く地元対馬に返還されるよう、引き続き関係機関とも連携を図り、働きかけていく」とそれぞれコメントした。


© 株式会社長崎新聞社