帯広藤丸 再生へ キーマン2人の手腕と構想とは

今回の特集は帯広の百貨店「藤丸」。北海道の地元資本としては最後の百貨店とされるが、先月末に閉店した。今、地方創生ベンチャー企業の「そら」という会社などがスポンサーとなって、事業再生が進んでいるという。

【元証券マンの地方創生 事業承継で相乗効果も】

地方創生ベンチャー企業の「そら」。米田社長が3年前、北大時代の同級生と
野村証券時代の元同僚の3人で立ち上げた会社だ。

学生時代から何度も十勝を訪れ、その魅力に触れ続けてきた。社名の由来になったのは広大な十勝の空。目標は高く、夢は果てしなくという思いを込めた。事業の実施を判断する基準は、その事業をやることが十勝地域の総生産を高めることにつながるかどうかという点だ。

そうした考えから最初に手掛けたのは、中札内村にあるグランピングリゾート「フェーリエンドルフ」の再生だ。空港から車で15分ほどという立地に目を付け、運営会社から事業を引き継いだ。

東京の有名シェフとも連携。特産品の卵を長時間薫製したマヨネーズなど、オリジナル商品も用意する。施設のリニューアルや新設も手掛け、利用者数はコロナ前のピークを超えたという。

この取り組みに注目したのが、帯広駅前で90年以上続く老舗温泉ホテル「ふく井ホテル」の経営者。美肌の湯ともいわれるモール温泉が売りで、地場の食材を使ったレストランも人気だったのだが、後継者がおらず事業をこの先も続けるべきか悩んでいた。そんな矢先に、そらの取り組みが目にとまった。

事業を引き継いだそらはふく井ホテルを子会社化。創業メンバーの一人が社長を務め、老舗に新たな風を吹き込んだ。デジタルやSNSに力を入れている。

ふく井ホテルの事業を引き継いだことは、相乗効果を生んだ。グランピングリゾートフェーリエンドルフ内で運営する「とかちエアポートスパそら」。サウナと温泉を楽しめる施設だが、その温泉に使われているのは…ふく井ホテルの温泉。この温泉が
集客力を高めるひとつのきっかけとなった。

【藤丸再生へ 現れたもう一人の救世主】

帯広のシンボル、藤丸百貨店。最盛期には年間145億円あった売り上げはバブル期を境に激減。直近も8期連続で赤字を出し、先月末、122年の歴史の幕を閉じた。

その藤丸は今、そらの手によって再生への一歩を歩み出している。再生を持ちかけたのは藤丸側。去年7月の閉店表明の3カ月前、そらの手腕を見込んで要請した。米田社長は「藤丸側から話を持ちかけられるとは、驚いた」と振り返る。

再生に向けた一番の壁となったのは、土地、建物にそれぞれ10前後いる地権者の調整だ。そんな地権者の調整という大きな壁も、強力な助っ人の登場で乗り越えた。帯広日産自動車の親会社、村松ホールディングスが再生事業に参画。去年12月、そらと村松ホールディングスが出資して新会社を設立。土地、建物の権利をひとつにまとめ、新会社に一本化することで合意した。

新会社には村松社長と米田社長の2人のみ在籍し、無報酬で事業再生にあたる。村松社長も米田社長同様、十勝の魅力に魅せられた一人。藤丸1階のテナントが撤退した際にいち早く空きスペースを活用。新たな情報発信の拠点を創り上げると同時に中心部の衰退を食い止めることにもつなげた。

新会社は「藤丸」の屋号を継承する。現在出てきている案が、百貨店事業と不動産事業の融合。収益が見込める商品ラインアップを充実させる一方で、集客につながるテナントの誘致にも力を入れていく案だ。今後目指していく再生の在り方についてのキーマン2人の考えを聞いた。

米田社長は「構想案のメインとしては、食。食はやっぱり十勝の大きな強みなので、その食を感じられるような場所を新しい藤丸の中に作りたい」と話す。

村松社長は「藤丸の包装紙に包まれた贈答品には価値がある。何を残すか、いかに“本物”を作るかが大事」と話す。

【MC杉村太蔵さんの一言】

MCの杉村太蔵さんは「事業再生のポイントは『ワクワク感』をどう出すか」と話した。“新しくなる”というだけではなく、“魅力がある”というのが必須。まだ構想段階とはいうが、藤丸の再生へ、市民の期待は高まっている。
(2023年2月4日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

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