「緑なき島」、高額報酬、天下り、はぐらかし続けるNHK|和田政宗 1月31日に行われた自民党総務部会(NHK予算審議)は大紛糾となった――。NHKは国民の受信料から成り立っている組織である。「経営改革」と言いながら、自らの報酬に手をつけない経営陣がこの世のどこにいるだろうか。

旧島民に会ってすらいない「緑なき島」問題

1月31日、自民党総務部会・情報通信戦略調査会合同会議が開催され、NHK予算について審議が行われたが、大紛糾となった。それは、「緑なき島」問題へのNHKの対応が不十分であることと、NHK理事の高額報酬についてであり、NHKが改善に向け取り組んでいないことが原因であった。党の部会はクローズの会議であり議論の詳細は明かせないので、私がどのような発言をし、NHKがどのように答えたかを中心に記していきたい。

まず、NHKが制作した短編映画「緑なき島」問題。この短編映画は昭和30(1955)年にNHK総合テレビで放送され、長崎県の端島炭鉱(軍艦島)を取り上げている。しかし、使われている映像の一部が、端島炭鉱のものでないという蓋然性が高く、しかもその映像で描かれている炭鉱作業員が、狭い坑道の中で上半身裸で作業していたことから、韓国が「過酷な強制労働の証拠」としてプロパガンダに使用しているという問題である。

これについては私は国会質疑でも指摘し、韓国の放送局KBSや国立日帝強制動員歴史館において「強制労働」のプロパガンダで「緑なき島」の映像が使われており、使用させないよう求めてきた。しかし、NHKは「著作権が切れているので対応できない」との回答で、私は「番組を制作した放送局の責任として使用をやめるよう必要な手段を取るべきである」と追及してきたが、NHKは一向に手を打ってこなかった。

さらに、NHKの映像を元に行われている韓国のプロパガンダは、謂われなき批判であると声を上げている端島の旧島民への対応について、NHK会長は国会で、「島民の方々に向き合いながら、新たな検討をするように指示をしたい」と答弁したが、NHKは旧島民に会ってすらいない。こうしたことから、NHKの対応について「どうなっているんだ」との厳しい声が自民党総務部会で議員の間から挙がったのだが、求めた説明へのNHKの回答は全く以前と同じであり、大紛糾となったのである。

私からは、改めて韓国KBS等の映像使用をやめさせるよう述べるとともに、NHK会長が「島民に向き合う」と自民党の質疑者に国会で答弁しながら旧島民に会ってすらいないのは、自民党も国会をも愚弄するものであると追及した。

しかし、NHKは「真摯に受け止める」との逃げの姿勢で何ら具体的な対応を示さなかったためさらに紛糾は続き、最後は総務部会長が「引き続き総務部会で取り上げる」と引き取った。党の総務部会としてNHKの逃げを許さないこととなったのは大きなことであり、「緑なき島」問題はさらに追及を続けていく。

理事報酬と退職金で計5400万円!

次に私が取り上げたのはNHK理事の高額報酬問題である。私は国会議員になって以来、あまりに高額なので引き下げるべきだと主張してきたが、NHKは全く改革しようとしてこなかった。

NHKの理事報酬は年間2206万円。過去に理事を外部から招聘したこともあるが、現在の理事10人は全員内部昇格だ。すなわち、NHKの退職金を得た上で内部昇格し理事を務めるわけだが、2年間理事を務めるだけで理事報酬と退職金で計5400万円となる。なおご承知の通り、この高額報酬の原資は国民の受信料である。

理事報酬の額については、外部の優秀な経営幹部を招聘するのであれば、これくらいの金額をお支払いしなくてはならないと考えるが、現在は全員が内部昇格であり、NHK退職までに相当な生涯賃金を得た上で、さらに高額の理事報酬を得る。これほどの報酬が必要だと私は全く思わないし、皆さんもそう考える方が多いと思う。

引き下げるべきだという私の主張に対しNHKは、「理事の報酬は、経営委員会が決めるもの」との説明を続けてきたが、報酬額は事前にNHKの理事会で決定し経営委員会に提案するもので、削減しようと思えば簡単にできるのである。

「経営改革」と言いながら、自らの報酬に手をつけない経営陣がこの世のどこにいるだろうか。

さらに理事退職後、NHKの子会社、関連会社、関連法人に天下れば、さらに高額報酬が続く。今回の総務部会で私は改めてNHKに対し、高額報酬と天下りの改善を求めたが、NHKの回答は我々をはぐらかすものだった。

NHKは、「2年前から子会社等の社長については現役出向者がほとんどであり、理事退職者やOBがなるべく就任しないようにしている」と述べ、総務部会は一旦「それなら改善しているんだな」という雰囲気になったが、NHKは事実を意図的に隠しており、実は「社長」についてはそうであるが、社長以外の取締役などにはNHKのOBがじゃんじゃん就任しているのである。

パワハラ、セクハラ、不祥事が止まらない原因

これを私が指摘したところ、「はぐらかしたのではなく、社長について説明した」とNHKの理事は述べたが、このように事実を隠さなくてはならないこと自体がおかしいと思わないのだろうか。

ちなみに昨年NHK理事を退任後、NHK厚生文化事業団理事長になった人物がいるが、理事長の報酬は1260万円である。その他の関連会社等でも社長や役員は、同等か同等以上の報酬となっている。これら関連会社や関連団体の収入は、NHKからの仕事の受注(=受信料収入)が元になっていたり、NHKのネームバリューで資金が集まったりするものである。

NHKはこれら高額報酬について、国民に堂々と説明がつくものと言えるのだろうか。もし言えるのであれば、隠すのではなくむしろ積極的に公開すれば良い。理事報酬や天下りに手をつけないなか、若手職員の給与に影響が出ており、NHKは優秀な人材の獲得競争に勝てないというしわ寄せが出ている。

そして、理事に昇格すれば、職員のみでキャリアを終えるよりも生涯賃金は5000万円以上も変わり、理事の強力な権力をも得られることから、理事昇格に向けた権力闘争は激しく、組織もゆがむ。パワハラ、セクハラ、不祥事が止まらない大きな原因もここにある。

NHKは国民の受信料から成り立っている組織である。理事の高額報酬も天下りも改革できないのであれば、民営化して自身で収入を得れば良い。引き続き、党の会議や国会審議で追及していく。

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和田政宗

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