卒業式マスク巡り政府が方針一転 自民「文科大臣の暴走」、野党「朝令暮改も甚だしい」 岸田政権に新たな火種

国会議事堂

 新型コロナウイルス対策としてのマスク着用を巡り、永岡桂子文部科学相は2日午前の衆院予算委員会で、今春の学校卒業式では各家庭の判断により外しても参加できるとの方針を表明した。ところが午後に緊急会見を開き、一転して「政府としての正式な決定ではない」と撤回した。「文科大臣の勉強不足による暴走」(自民党幹部)とされ、野党からは「朝令暮改も甚だしい」(立憲民主党幹部)と批判の声が上がった。

 閣内からの「暴走」に足を引っ張られた格好で、岸田文雄首相は長男秘書官の公用車観光疑惑や松野博一官房長官の政策秘書の飲酒運転辞職に続き、身内が起点の新たな火種を抱えた。

 この日の予算委では、立民の柚木道義氏が「マスクをせず卒業式に臨めるよう方針を示すべきだ」などと迫った。文科相は「対応を速やかに検討したい」とした上で「『マスクをしなければ嫌だ』という子どもはマスクをして出席する。『マスクを外して行く』と家庭で決めた子どもはマスクを外しての参加になると思う」と説明。「個人というよりも家庭での議論が大きな要素を占める」として「家庭の判断」に委ねる考えを示し、「(方針が決まれば)私から各教育委員会に指示を出す」と説明した。

 政府関係者によると、答弁を踏まえ「文科大臣が『卒業式において家庭の判断でマスクが外せる』と表明」と各メディアで報じられると、関係各省へ「家庭に責任を押し付けるのか」「マスクを着けている子どもと着けない子どもが混在してしまう」といった批判や疑問が全国の教育委員会などから寄せられたという。

 首相周辺は「早急に沈静化を」と文科省へ対応を指示。緊急会見で永岡文科相は「政府方針を超える発言はしていない」としながらも、「家庭の判断」に言及したことについて「個人の判断に委ねると言っても小さいお子さんには無理があるから」などと釈明した。

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