SO競泳の日本代表に初選出 「金メダル持ち帰りたい」 宇都宮の石坂さん

フォームを確認する石坂さん(左)。母真澄さんが優しく指導する=1月中旬、宇都宮市西川田4丁目

 6月にドイツ・ベルリンで開幕する知的障害者のスポーツの祭典「スペシャルオリンピックス(SO)」夏季世界大会の競泳に、宇都宮市西川田3丁目、会社員石坂梨紗(いしざかりさ)さん(33)が日本代表として初出場する。全競技の日本代表45人のうち県勢はただ一人で、1月に1回目の代表合宿へ参加した。スポーツを通じて成長し、「金メダルを持ち帰りたい」と意気込む。

 世界大会は、夏季と冬季それぞれ4年に1度開催される。ベルリン大会は6月13~25日、180の国と地域の選手約7千人が、24競技で競い合う。日本選手団は選手45人とコーチ、役員ら28人計73人で、競泳やテニス、馬術、サッカーなど9競技に参加する。

 石坂さんは25メートル背泳ぎで23秒04の記録を持ち、SOに挑戦する選手の合宿に参加した際の協調性なども評価された。身長は149.8センチと小柄ながら泳ぎは力強い。大会では25メートル背泳ぎと50メートルバタフライなどに出場する。

 知的障害を伴う自閉症があり、相手の気持ちを理解することが難しい。だが誰にでも気軽に話しかけ、周囲を和ませるのが得意だ。

 「一緒に体を動かそう」と両親に勧められ、水泳を始めたのは宇都宮市陽南小4年生の時。市内のスポーツクラブのプールは人が多くて集中できず、25メートルを泳ぎ切るのがやっとだった。

 それでも少しずつ泳げるようになり、中学生の頃、SO日本・栃木のスポーツプログラムに参加した。富屋特別支援学校高等部へ進んだ後は、担任らの熱心なスポーツ指導が「大きな力になった」と話す。

 母真澄(ますみ)さん(65)は「スポーツを通じた成長」を実感する。大会や合宿へ向け自ら用具を準備し、必要書類に記入するようなった。今はプール利用料の支払いなど金銭管理もできる。

 ドイツ文化の勉強も始めた。正月に市内のドイツ料理店で家族とソーセージなどを味わった。休日は父と散歩しながら「ダンケシェーン(ありがとう)」などのあいさつも特訓中だ。

 世界大会は「憧れの舞台」。観客席の両親を想像すると、「力が沸いてくる」と笑顔をみせる。海外の選手との交流も楽しみだ。真澄さんは「世界大会へ連れて行ってもらえる。親孝行をしてくれている」と目を細めた。両親は現地で応援する予定だ。

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