「ひともんちゃくなら喜んで!」北野日奈子がダンスシーンで犬飼貴丈と“ひともんちゃく”!?「『桃ちゃん怖いよ…』と言われました(笑)」

矢作穂香さんと犬飼貴丈さんがダブル主演を務めるドラマ「ひともんちゃくなら喜んで!」(ABCテレビ・テレビ朝日ほか)。天使すぎる新人コンサルタントと一見乱暴な悪魔社長が、新人離職率100%のブラック企業を救うべく奮闘する本作は、「一瞬で30分終わっちゃう」「テンポがよくて面白い!」「オープニングのダンスめっちゃいい」と、視聴者からの反響と共感の声が続々と集まっています。

佐京紫織(犬飼)が経営するアパレル会社「ジェットブラック」の離職率を改善すべく、人見まもる(矢作)が人事コンサルタントとして派遣されるも、その裏には“マウント四天王”というモンスター社員が潜んでいることが判明。四天王の一角・“ボンバイエ高円寺”こと高円寺エリカ(大谷麻衣)を攻略したのもつかの間、人見の前に2人目の四天王・“シャーデンフロイデ桃井”こと桃井亜里沙が立ちはだかります。嫉妬の鬼である桃井の牙はやがて人見にも向くことに…。

そんな桃井を演じているのは、北野日奈子さん。普段は営業部のエースとして働きつつも、愛する佐京に近づく女性は、あの手この手を使って追い出していく一面も併せ持つ桃井を体現しています。昨年3月に乃木坂46を卒業し、女優としての第一歩を歩み始めた北野さん。ドラマや舞台が次々と控える中で本作にはどんな思いを持っているのか。役の見どころや今の思いを語っていただきました。

――ドラマが始まり、第3話では北野さん演じる桃井の裏の顔も明らかになりました。周りからの反響はいかがですか?

「北海道に住んでいる親戚もTVerで追いかけてくれたり、ファンの方もすごく見てくださっているみたいで。面白いのは、“北野日奈子が出ること”に喜んでくれていて、役がどうかは関係ないというのが今回の学びでした(笑)。ドラマのお話をいただいた時に、『もしかしたらファンの方に嫌われるかもしれない…』と少し考えたんです。イベントでも『こういうお話があって来年放送されるんだけど、嫌いにならないでね!』みたいに先手を打ったんですけど、ファンの方はどんな姿でも応援してくれているんだなと分かりました。第2話の最後の登場の仕方も、めちゃくちゃ怖かったじゃないですか! リアルタイムで見ていたんですけど、夜中の2時半とかに放送しちゃいけないなと(笑)。パステルな服を着ているから許されるのであって、もし白黒コーデだったら…」

――急に世界観が変わりますね…(笑)。

「そうなんですよ! でも、『大丈夫かな…』と思ってリアルタイムで検索してみたら、『何がとは言わないが、よっしゃ!』みたいな(笑)。私のターンが来たことを感じ取ったファンの方がいたみたいです。でも、桃井はあんなもんじゃないですから(笑)」

――マウント四天王の1人・高円寺と比べると、恐ろしさが全然違いますよね。

「高円寺さんは怒りのあまり泣き出すくらいだから、かわいく見えちゃいます(笑)。桃井はほかの人に危害を加えて、精神的に追い詰めるところまで来ているので。演出の面でもすごくホラーなところがあって、家に帰ってから塩を浴びました(笑)。私、ホラーが苦手で、『ホラー作品だけは出ない!』と心に誓っていたんですよ。今回はホラー作品じゃないはずなのに、自分がホラーをやっている気分で…なんというか、『クレヨンしんちゃん』でまれにあるホラー回みたいな感じです」

――あらためてになりますが、今回演じる桃井亜里沙という人物をどう捉えていますか?

「すごく素直で猪突猛進型というか、真っすぐな子だなと感じています。『桃井亜里沙はこういう人物』って見ると、癖があって近くにいたら嫌だなという人物ではあるんですけど、私が桃ちゃんをやっていて感じているのは、“たまらなくいとおしい”というか」

――どういった点でそう感じたのでしょうか?

「これだけ世の中がいろいろ厳しくなってきて、自分の意思さえも相手に伝えるのにワンクッション置くことが必要だと訴えかけられている中で、自分が好きな社長に近づかせまいと新人の子を辞めさせたりするのは、“あり得ないけど、あり得ないと思われていることにも気づけないほど夢中になっている”と思うんです。しかも、その愛がありすぎるが故にそうなってしまっているところも、私なら全力で受け止めて抱き締めますね」

――桃井の手段を選ばないところは、ある意味、“彼女なりの正義”のようなものも感じます。

「本当にその通りだと思います。私、愛があればなんでも正義だと思うんです。もちろん制御する部分もありますけど」

――「愛があれば」…ですか。

「例えば、付き合っている彼がいたとして、愛があれば束縛をするのもOKなタイプなんです。束縛って二通りに分かれるじゃないですか。友達でも全く男女関係に口出しはしないで、お互いに好きな人と飲みに行ったりするか、お互いがいない場では飲んだりせず、女の子がいるところは断るかの二通り。私は絶対こっち(後者)なんです。好きな人がいて、好きだから付き合っているのに、『なんでほかの女の人がいるところに行きたがるの…?』みたいな(笑)。もう桃ちゃん寄りの考えだと思います」

――桃井に共感できるところも多いですか?

「あれだけ素直に行動に移せて、むしろうらやましいです。愛の伝え方が不器用なだけで、行き過ぎているところがいけないけど、行き過ぎなければかわいい。思いとしては誠実だし、実際に佐京さんに喜んでもらうために営業もちゃんと成績を収めて、好きな人に喜んでほしいから『私、頑張る!』と全力で努力できる部分は、一番理想の形なのかなって思います」

――演じる上で気を付けているところを教えてください。

「第4話では、もう自分でも止められない“嫉妬モード全開”になって、物語の後半では桃井の自由さにみんなが突っ込める環境になるんですけど、第3話は結構頑張っていました(笑)。最初のつかみとして、『こいつ何者?』と思わせるのに語尾の母音を強調しているのも、『ただのぶりっ子だ』『こういう、ランチで写真ばっか撮ってる女いるわ』とそこへ注目をさせておいてから、“実はそこではありません…”みたいな物語の運び方は監督から指示していただいたので、そういうところはうまく表現できたのかなと思います」

――先日、矢作さんと犬飼さんに取材をさせていただいた際に(https://www.tvguide.or.jp/feature/feature-1984581/)、「現場がすごく明るくていい雰囲気」とおっしゃっていました。北野さんから見て現場の雰囲気はどう感じていますか?

「本当に学校のようです。年上の方もいらっしゃるんですけど、ほとんどが年下の子で、活気あふれているというか。営業部、経理部といろいろな部署がある中で、みんな自分の部署の後輩と仲良くなるんです。私だと、東ちゃんこと東梨花(北原ゆず)とか西ちゃんこと西立花(福冨タカラ)、黄くんこと黄文革(大倉空人)と休憩時間が同じだったりするので、カラオケで歌う十八番とか話しています。そこでのジェネレーションギャップもあったりして、意気投合しちゃって、もうおしゃべりが過ぎてしまい…」

――スタッフさんから注意されることも?(笑)。

「はい(笑)。でも私は知らないふりをしますよ!(笑)」

――(一同爆笑)。

「グループ活動をしていたので、そういう時に『やばい!』って察せるんですよ。普段はゲラゲラしているけど、なんとなく空気感を感じ取って、スタッフさんが来たら話を止める。スタッフさんから『ちょっと打ち合わせができないから静かに…』と言われても、私は下を向いてニヤニヤ笑っていて。みんなが注意されているのを見て私は『やーい』って思っているので、ずるいですよね(笑)。でも、『プライベートで何をしているか』という話ができるほど打ち解けられています。それこそ、主演の矢作穂香ちゃんとは高校3年生の時に同じクラスだったんです」

――そうだったんですね! 今回の撮影では何かお話されましたか?

「クランクインの日に2人で車に乗ることがあって。その時はまだ打ち解けられていなくて、ちょっと気まずかったんです。私がシートベルトを締めるのに苦戦していたら、ほのちゃん(矢作)が『ここだよ』って言ってくれて。勇気を出して話しかけてくれたところにキュンとしました」

――矢作さん、男前ですね。

「そこから20分ぐらいの移動があったので、『実は高校の時、同じクラスだったんです…』って話しかけたら『え、マジで!? 何の授業出てたの?』となって、写真もさかのぼってみたら、同じ写真に写っていたんです! 『今と全然違う!』みたいになって、ほのちゃんもそこで同級生と分かってから、今では現場に着いたら『うちら同級生だから!』と言ってくれます(笑)。私が元乃木坂だったり、撮影の最初の方は敬語だったこともあって、(矢作から)おとなしいと思われていたみたいなんです。でも私は乃木坂では全然おとなしくはなかったので(笑)、打ち解けてから『いや、日奈子がこうだとは思わなかった!』と言ってくれます。褒めているのか、褒めていないのか、分からないですよね(笑)」

――お二人の仲の良さが、話を聞いているだけで伝わってきます!

「縁としては8年くらいだけど、そこまでつながりがなかったから、私としては『友達になって今1カ月!』っていう感じなのに、ほのちゃんは『うちら8年の仲だから!』っていう感じなんですよ(笑)。それがすごく好きで、私もぐいぐい行くけど、ほのちゃんも『終わったら遊びに行こうよ!』と誘ってくれます」

――現場での矢作さん、犬飼さんの姿はどう映っていますか?

「ほのちゃんと犬飼さんは、やっぱりすごく大変だと思います。連日朝から晩まで撮影が入っていて、結構大変なスケジュールの中でやっている中で、2人がいい雰囲気を出してくれるんです。朝だったら、ほのちゃんから演者さんに声をかけに行って、『これ差し入れだから食べてね』と言ってくれたり、犬飼さんはスタッフさんを和ませてくれて。野球ネタが多いみたいで私は分からないんですけど、皆さんいい人ばかりだし、スタッフさんも優しい方ばかりです。お二人が現場の雰囲気をすごく良くしてくださっているのが伝わってくるんです。2人の人柄があって和やかな雰囲気でやれているので、本当に感謝しています」

――矢作さんからはダンスシーンで「北野さんから教えてもらった!」と伺いました。乃木坂時代の格好いいダンスが印象的ですが、今回のダンスシーンでは大変なところはありましたか?

「ダンスは動画が送られてから練習したんですけど、グループで踊っていたのもあり、手の向きとか足の向きが曖昧というのができなくて。ダンスの先生にも『ここで手首は折りますか?』『手はパーですか?』と聞いていたので、むしろ面倒くさかったと思います(笑)。でもたぶん、そういうところでみんなの疑問が、私の発言によって明確になってきたから『助かったよ』という声があったのかなと。ほのちゃんも『え、元アイドル?』っていうレベルで踊りを覚えてきていて! 『なんでそんな上手なのかな?』と思っていたら、カラオケでディズニーの曲を歌って踊ったり、アイドルの歌をかけて踊ったりして、日頃からダンスを楽しんでやっているタイプだったみたいです。だから、ほのちゃんは全然苦戦せずにやっていましたけど、犬飼さんはですね…(笑)」

――犬飼さんは、「僕はダンスが苦手で…」とおっしゃっていました(笑)。

「それこそ『苦手だから覚えてこない』と言ってきたので、『いや、覚えてきてくださいよ! 撮影時間延びるし!』って強めに言ったら、『桃ちゃん怖いよ…』と言われました(笑)。本番では順番に撮っていく中で、最後に人見・佐京で撮ったんですけど、楽屋に戻ってくるまで少し長かったんです。なので、戻ってきた2人に『お、押してますよ〜』って少し意地悪を言ったりしていました(笑)。でも、オープニングのシーンの犬飼さんのファンの方のコメントを見て、『確かに、完璧に見える人がちょっとかわいかったり照れたりするところって、かわいいんだな』と共演者のファンの方から学ぶこともすごくあって。今回こんなに明るくて今どきっぽい作品も初めてだったので、こうやって和気あいあいとできているのはすごくありがたいです」

――ドラマでは矢作さん演じる人見が社員のやる気を呼び起こすために奮闘していますが、北野さんの仕事へのやる気の源、モチベーションを教えてください。

「グループの頃から変わらないんですけど、私は自分のために頑張れるタイプではなくて。自分のためだったら日々、何もせずダラーっとしているくらい、本当に怠け者なんです(笑)。でも、卒業をして個人で活動していくうちに、一生懸命やったものがちゃんと形に残って評価されると、元乃木坂というところでは今の現役メンバーにも貢献できているのかなと。『卒業して今後どうするの?』と不安に感じている家族も安心させてあげられるし、何よりファンの方からは『アイドルのきぃちゃんも好きだったけど、新しいところで頑張っているきぃちゃんの新しい一面が見れて推しがいがあるよ』と言ってもらえて。やっぱり『人のためになっている』と今のお仕事から感じられるので、そういう言葉が私のお仕事へのモチベーションになっています」

――ちなみに、今後やってみたい役や作品ジャンルはありますか?

「動物に関わるお仕事をやりたいですね。生まれ変わったら動物園の飼育員さんになりたいなと思うくらい動物園に行くのもすごく好きで。犬が好きなので一番は犬がいいですけど、めちゃめちゃ押しそうですね(笑)。今考えたら3カ月ぐらいないと撮り切れなさそうですけど、現役の時から動物番組とか動物に関わる仕事をしたいなと思っているので、女優のお仕事として縁があってできたらいいなと思っています」

ドラマでは嫉妬に駆られ恐ろしい一面を見せる桃井を演じる北野さんですが、取材中は常ににこやかに明るく接してくださいました。インタビュー中は現場でのエピソードを楽しく話してくださる姿がとても印象的で、特に矢作さん、犬飼さんとのエピソードは聞いているこちらも思わず笑ってしまうほど。あっという間に時間が過ぎ、楽しい取材となりました。

【プロフィール】

北野日奈子(きたの ひなこ)
1996年7月17日生まれ。2013年、乃木坂46の2期生として加入。その後、22年3月にグループを卒業。卒業後はドラマ「少年のアビス」(MBSほか)、「警視庁考察一課」(テレビ東京系)、舞台「蒲田行進曲完結編 銀ちゃんが逝く」(22年)に出演。3月から放送スタートのドラマ「とりあえずカンパイしませんか?」(テレビ東京系)、3月2日から上演する舞台「ダリとガラ」への出演を控える。

【番組情報】

ドラマL「ひともんちゃくなら喜んで!」
テレビ朝日
土曜 深夜2:30〜3:00
ABCテレビ
日曜 午後11:55〜深夜0:25
※ABCテレビでの放送終了後、TVer、GYAO!での見逃し配信あり

取材・文/平川秋胡(ABCテレビ担当) 撮影/蓮尾美智子

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