昨年10月、元日本代表FW工藤壮人が32歳の若さで亡くなった。水頭症の手術を受けた後に容態が悪化し、帰らぬ人となってしまった。
日本プロサッカー選手会(JPFA)は、死去した工藤の遺族をサポートするための「工藤壮人選手ありがとうオークション」を行っている。
そうしたなか、JPFAの会長でもある日本代表DF吉田麻也が、FIFPro(国際プロサッカー選手会)でこのオークションの意義について語った。
吉田麻也
「壮人はいい人でした、とても誠実でとてもフレンドリーでした。
彼は典型的な日本人で、物静かでシャイ。でも、一度話したら、いい人だと分かるんです。
僕のチームメイトのほとんどがその印象を共有していました。
2014年のブラジルW杯予選の際、日本代表で彼と一緒にプレーしました。
一緒にプレーしたのは短い時間でしたが、代理人が同じで、壮人のキャリアやクラブについて話したので、彼がカナダやオーストラリアに行ったことは知っていました。
柏レイソルのアカデミーで一緒に育った日本代表の酒井宏樹などとても親しい選手もいました。
このニュースを聞いたとき、僕らはショックを受けました。
僕が住んでいるデュッセルドルフは、ドイツ国内で最も大きな日本人コミュニティのひとつがある街です。
ボルシアMGの板倉滉やフォルトゥナ・デュッセルドルフの田中碧など、多くの選手が近くに住んでいます。
僕らはよく会うので、このニュースを聞いたとき、そのことを話しましたし、ショックを受けました。
そして、JPFAの役員、宏樹など日本代表の選手やスタッフとも話し、自分たちも何かしたいと決意したんです。
どのように壮人の家族をサポートするのが最善かを話し合いました。
J2とJ3にいる、壮人と同じようなキャリアを歩んでいる選手たちに声をかけました。
こういう状況で最も心配なことは何かを聞いたところ、全員が家族とお金と答えたので、経済的な援助がベストな選択肢ではないかと考えました。
オークションのアイデアは私が考えたものですが、それは重要ではありません。僕らは一緒に取りくんでいます。
事前に壮人の奥さんにも相談して、どう思うかを確認しました。チャリティというのはとてもセンシティブで、良い意味にも悪い意味にも受け取られる可能性がある。宏樹が説明したところ、奥さんはオークションに賛成してくれました
「僕らの目的は、壮人の奥さんと娘さんのために、出来るだけお金を集めることです。
オークションは、4つの段階があります。
今後は内田篤人、本田圭佑、キングこと三浦知良も参加する予定です。
オークションを始めると色々な方から連絡があり、女子日本代表選手である岩渕真奈からも支援の申し出がありました。
壮人はMLSのバンクーバー・ホワイトキャップスやオーストラリアのブリスベン・ロアーでもプレーしたのでで、MLSPAやオーストラリアサッカー選手協会の協力で、それらの国の選手も参加してくれています。
限られた時間の中で、自分もたくさん電話をして、ほぼ毎日、参加のお願いをしています。自分の親友である内田も同じことをしてくれています。彼は日本に住んでいて、多くの元選手たちに知り合いがいるんです。
お金も大事ですが、僕らには別の2つの目標もあります。
それは、連帯感を示すということ。僕らJPFAは、選手たちに何があってもJPFAはともにあると感じてもらいたいのです。
壮人が亡くなったと聞いたとき、僕は怖くなりました。もし自分の身にこのようなことが起こったら、自分の家族はどうなるのだろうと。
自分は幸運にも長くイングランドでプレーすることができたので、経済的にはJ2やJ3などの多くの選手たちよりも良い状況にあります。
彼らのなかにも、将来について心配し始めた人がいるはずです。もし、自分に何かあったら、家族や子どもはどうなってしまうのか。その不安を取り除かなければいけません。
そのために、今回のジェスチャー、このオークションはとても重要なのです。
最後である3つ目の目的は、日本や他の国で事故や災害が起きてサッカー選手や野球選手、バスケットボール選手が巻き込まれた際、このスキームを模倣できることです。
このオークションは、僕らがそれほど協力し合えるかを示しましたし、グローバルな連帯を見ることができます。
当然ながら、またこういうことが起きないことを祈っていますが、もしその時は、この事例を活用できるように準備を整えています」
チャリティはセンシティブなものでもあるので家族の了承を得たうえで行うことを決めたそう。
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友人だった酒井だけでなく、内田らも協力してくれているようだ。