30-DELUX 結成20周年記念インタビュー  代表 清水順二

「笑って、泣けて、考えさせられて、カッコいい」をテーマに初めて演劇に触れるお客様にもわかりやすい内容のエンターテイメントを発信しつづけている清水順二率いる『30-DELUX』。2003年に旗揚げ公演を青山円形劇場で行い、2023年で旗揚げ20周年を迎える。今年は1月に新国立劇場 小劇場にて「30-DELUX×KoRocK 『スペースウォーズ2023 feat. BOYS AND MEN』」を上演、さらに2月に30-DELUEX OSAKA 2nd Live 『シェイクス 2023』-KANSAI side-を、3月に30-DELUX NAGOYA 2nd Live 舞台『シェイクス 2023』-TOKAI side-を上演。代表である清水順二さんのインタビューが実現、今までを振り返って、そしてこれからの活動について語っていただいた。

――今回、30-DELUXが20周年ということで、20年経った感想を。

清水:もともと、20年を迎えることはひとつの目標でした。旗揚げしたときに、会社や劇団は10年続けるだけですごいことだと言われました。それなら思い切って20年で目標達成できなかったら、年間10万人動員する劇団を20年で作れなかったらやめようと決めていたんです。ちょうど20年続けられたので、自分の中では「悔いはない」という気持ちでいっぱいです。

――やれることはやったということでしょうか。

清水:自分がもともと立てた目標ですから。30年、40年と続けたとしたら、僕はもう60歳、70歳になるんです。なかなかビジネスになりえないと言われている劇団という大変な集団をそこまで続けるのは無理じゃないかと思っていました。50歳になるまでが限界かなと…今回の20周年でそれが達成できました。もしも僕の代わりに「30-DELUXをやりたい」という人がいたとしたらその人にバトンを渡して、僕は違うことに挑戦したいなと(笑)。それは劇団とまったく違うビジネスかもしれない、そんなことを思っているくらいです。30-DELUXのやっていることって、身体が資本になってしまうので、身体が動かなくなるとなかなか難しいんですよ。

――たしかに、歌って踊ってアクション、日々の健康管理も大変です。

清水:結局、プロスポーツ選手みたいに毎日やらないと力が落ちていってしまう。だから、僕は劇団の代表として運営とプロデュースを行っているわけですが、毎日は稽古できないです。今回の公演(1月)は年末年始を挟み、さらに映画の公開もありましたから…仕事が被ってしまい、そういうわけであまり稽古ができないので、そこは他の劇団員に現場を任せて、僕は年明け3日間だけ稽古に出て本番に臨むとなると「あ、年をとると30-DELUXの舞台ってたいへんなんだな、プレッシャーなんだな」とひしひしと感じました(笑)。若い子にどんどん頑張ってもらえたらうれしいなと。

――2月3月に『シェイクス』を大阪と名古屋で上演ですね。

清水:もともと3都市のツアーをやろうかなと思っていたんです。ただ、名古屋は名古屋で、大阪は大阪で劇団員の子がいる、それなら、それぞれの土地で…名古屋だったらBOYS AND MENとかBMKとかSKE48とか、大阪だったら僕が殺陣指導しているテーマパークのパフォーマーとか、NMB48の子とかがいたりしますし、現地でファンもついていて、しかもお芝居をしたいという人がいる。BMKが特にそうですね。ただ、名古屋や大阪でそれを迎えられる劇団がなかなかない。彼らはパフォーマンス力もあるし、ファンサービスもすばらしい、それだけではもったいないという発想で、こちらは20周年を迎えるにあたって、それぞれの都市で盛り上がれるようにしたいなと思った次第です。地元のお客さんに応援してもらえるキャスティングがいいんじゃないかって思いました。

――ある意味、地産地消のようなものですよね。それが盛り上がれば、地域にも経済効果があるかもしれないし。

清水:そういうの、すごく大好きですね。上演のあとに、居酒屋で語ったりとかね。お客さんがお金を開催する周辺に落としてくれる経済効果というのを僕も結構考えてました。コロナ禍というのも多少はあるかもしれませんが、地方の人がなかなか東京に足を運びづらくなっているのが現状。東京だけの公演では観に行けません、みたいな人が結構多い。それなら僕はプロデュースだけで、大阪や名古屋はお任せ。博多も以前やったことがあるので、やりたいと言う人がいたらぜひお願いしたい。もしコロナ禍になっていなかったら、全部自分で、東京だけでやっていたと思いますし、こういう発想にはならなかったかもしれません。

<1月公演より>

――今日(1月)の公演も、他のユニットの方々がいらっしゃるとそこからなにか生まれるものもあると思います。またどこか別の地域でやったとしたら、違うユニットが入るのもおもしろそうですね。

清水:まさにおっしゃる通りです。こういうコラボをやっている団体は東京ではいそうでいない。地方の団体と東京の団体が一緒に、しかも稽古をともにしないといけない演劇をやるというのはとてもむずかしいこと。スケジュールも合わないしお金もかかる。でもやったことのないところをやらないと、30-DELUXとしての新しい道は拓けないと思うんです。今まで作ってきた作品、たくさん面白いものがありますから、それを利用して、歌、殺陣、ダンス、お芝居、コメディ、サスペンスいろんな要素を作るノウハウはあるので、それをいろんな地盤にして…今年は海外にも行くんですが、そっちでも劇団を作ったりとか…向こうでもやりたいなと感じています。

――繰り返し上演しているとオチがどうしても同じになってしまいますよね。でもこの作品は、ネタバレしたとて見せ場が多く、面白さは変わらないと思います。

清水:今回の公演で見せたかったのは、ラストパフォーマンス。それぞれの団体がどういう気持ちでエンタメに向かうかというところ、本来合わさらない人たちが、実は合わさることができるんだというのを実現した公演です。東京の団体でコメディ、歌、ダンス、お芝居のコラボをやっているところはあまり例がないと思っていますし、新しい形は作れているのではないかという自負もあります。映画『まくをおろすな!』も時代劇なのにカツラもはめていない、歌も殺陣も踊りもあるミュージカル時代劇。もう、むちゃくちゃなんです(笑)。映画評論家の方から怒られるのかと思ったら、「ネオ歌舞伎」とか言ってもらえて、意外とウケました(笑)。日本の文化、作り物はすごいんです。僕の地元の愛知県も岐阜県も、瀬戸物とか刃物とか、有数のクオリティ。日本はものを作る力がすごい、演劇も同じ。だから逆に日本の文化が混ざったものを作って海外に発信したいなというのが僕の夢なんです。

――今は、YouTubeなど海外に発信できるツールがありますものね。

清水:今年、インドの映画に呼ばれておりまして…30-DELUXでやっている殺陣の動画を送ったら、インドの武術とエンタメとやりませんか、というお話になりました。カラリパヤットゥ(※)という武術とコラボして、僕が殺陣をつけるんです。新しい挑戦という意味では、その流れで東南アジアとか、いろんなところに会社も作って、30-DELUXのステージと映画、今は両方に挑戦したいなという気持ちがすごく強いですね。

――若い方もたくさんいらっしゃいますからね。

清水:はい。劇団を、若い人を育てなきゃという想いでやってきました。「もうちょっとやってみたら」と思うんですけど、やはりすぐに諦めちゃう人もいます。自分にすぐ見切りをつけて辞めちゃう人が昔に比べて増えていて…僕の世代はとにかく十数年やってナンボ、みたいなのがありましたが、若い人にはもう通じないですね。いろんな娯楽があふれているからなのかもしれません。

――たしかに、昔に比べていろいろあふれていますね。

清水:90年代の僕らのころは「役者として売れたい」一心で、がむしゃらにお金にならない舞台にいくつも出ていました。僕の先輩、生瀬勝久さん、古田新太さん、佐々木蔵之介さん、そういう時代で僕らは育ってきましたが、でも今は、全然違う。劇団員って、ギャラが出ているとはいえ、会社員とは比べ物にならないくらい安くて、なかなか食べていくのは大変なこともある。そんな中ですぐに「こんな苦しい思いをして夢を追いかける意味はあるのか」となるので、厳しくはできない、丁寧に教える一方、調子に乗らせてもいけないし。教育が難しくなりました。

――さじ加減が難しい。

清水:こういう場を与えるから自分たちで自由に作って、というスタイルにしました。僕がああだこうだというよりも、何か聞いてきたらアドバイスをすることにしています。

――そのくらいの距離感のほうが今の人には刺さるのかもしれませんね。

清水:僕は最悪の状況を想定だけしています。けが人が出ました、体調不良の人が出ました、という事態が起きたときに出演者の調整をします。そこだけは僕が責任をとっています。稽古はフラッと数日出てみるだけ。もちろんこれができるようになったのは、作家と演出の2人がベテランだから、そのおかげでもあるし、20年やってきたからこそなんだと思います。

――20年でようやくたどり着けたと…。

清水:教育に関するニュースってたくさんあるじゃないですか。そういうのを見ていたら、今までとは絶対に変えなきゃいけないと思った。僕が高校の教員だったというのもありますが、関心が高かったからこそ、20年続けていけたのもあるかなと思います。

――では、メッセージを。直近の5年先についてはいかがでしょう。

清水:そもそも、30-DELUXが作る「なんでもアリ」のエンタメを日本中で流行らせたいという想いがありました。ありがたいことに映画『まくをおろすな!』がほぼ全国でやれるようになったのはその一つ。舞台、ステージを広めたいというのはありますし、海外での地盤を築いておきたいなというのはあります。5年先だったら、その間に日本は誰かに任せて(笑)。僕はひとりで、なにもないところから、知り合いを作ってやるのが好きなんです。5年後には、地道にやって海外に事務所を作れたらいいなと(笑)。1年に2~3回くらい公演して、向こうのファンと交流してみたいんですよ。少数民族と関わるとか、生活をともにしてみたりとか、日本ではできないことをやってみたり…最後まで挑戦する気持ちを忘れないようにしたい。僕は有名人でもなんでもないですけど、ピカソみたいに死んだあと注目されたらいいな(笑)。だから認められるように、諦めないで続けようと思っています。もっとすごい人、いっぱいいますしね。

――ありがとうございました。今後の活動に期待しています。

(※)カラリパヤットゥは、南インド(ケーララ州)に古くから伝わる武術。諸説あるが、一説には、空手や少林寺拳法のルーツとも言われている。

<1月公演レポ記事>

公演情報
30-DELUX OSAKA 2nd Live『シェイクス2023』-KANSAI side-
脚本:IKKAN/脚色・演出:田中精/総合演出:金谷かほり
日程・会場:2023年2月8日〜2月12日 近鉄アート館
出演:
IMO*T

川上千尋(NMB48)
泉 綾乃(NMB48)

枝 尚紀
村瀬文宣
亀田結心
谷口敏也
Daniel Tomio Coelho

JIN
岡 竣太
杉本輝城
赤堀光希
山本和輝

田中 精

柄谷吾史

瓜生泰聖
公式サイト:https://www.30-delux.net/osaka/shakes2023/

30-DELUX NAGOYA『シェイクス2023』-TOKAI side-
脚本:IKKAN/脚色:田中精/演出:斎藤美七海/総合演出:金谷かほり
日程・会場:2023年3月2日〜3月5日 中川文化小劇場
出演:
佐藤匠(BMK)
竹之内景樹

IMO*T

名古屋山三郎(ナゴヤ座)

三隅一輝(BMK)
村瀬文宣

木下竜真
眞野颯
礒谷菜々
髙澤了輔
池谷優奈
鈴木里青
櫛田実怜

田中精

清水順二

30-DELUX公式サイト:https://30-delux.net/nagoya/
スペースウォーズ舞台写真:(C)ジェイズプロデュース・30-DELUX/撮影:堀江香帆
取材:高浩美
構成協力:佐藤たかし

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