【連載コラム】MLB全30球場を制覇 第11話 海と繋がる野球場

澄み渡る青空。美しい芝。白球が奏でる音に、歓声が重なり合う。最高峰のプレーに心躍り、熱く盛り上がる場所。今年アメリカ中を飛び回り、MLB全30球場を制覇したスポーツアナウンサー福田太郎が、あなたを「夢のボールパーク」にお連れします。MLBスタジアムの世界へ、ようこそ。

海と繋がる野球場

サンフランシスコ名物の「スプラッシュ・ヒット」は、文字通り、海に飛び込むホームランのことです。ライトスタンドを越え、マッコビー湾に水しぶきが上がると、カヤックに乗って待ち受けるファンが、一斉にボールを追いかけます。

素晴らしい景観と共に、野球を楽しむも良し、海の上で、その一球に賭けてみるも良し。大自然の恩恵を受けた、唯一無二の体験が出来るボールパークです。

[マッコビー湾を照らす朝日が、とても美しい!](

オラクル・パークへ

街の中心部へと向かいます。「サンフランシスコ国際空港(東京から直行便で約9時間)」からダウンタウンまでは、電車を乗り継ぐと、およそ45分。車だと20分くらいです。試合前にちょっと足を伸ばせば、ドラマ「フルハウス」のオープニングでお馴染みの『ゴールデン・ゲート・ブリッジ』や、坂道を登るケーブルカー、桟橋の観光地『ピア39』での、朝食やランチを楽しめます。

潮風に導かれ、大きなヤシの木に囲まれたら…Oracle Park! Nice to meet you!

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巨大オブジェの正体は?

「オラクル・パーク」の象徴とも言える「コカ・コーラ」と「グローブ」のオブジェ。レフトスタンドに近づけば、見上げるほどの大きさに、圧倒されるはずです。

「コカ・コーラ」のボトルは、長さ24メートルほど。内側は、鉄の筒が張り巡らされています。実はこれ…子供たちのための『滑り台』になっています。ゴール地点にはホームベースがあって、滑り終えると、スタッフのおばあさんが「セーフ!」と言って、出迎えてくれます。そのお隣には、小さな野球場もあります。

世界最大と言われている「グローブ」は、なんと実物の20倍!1920年代に使われていた4本指のビンテージ仕様です。写真を撮りに来たファンを、オルガニストが、素敵な演奏で出迎えてくれます。

[コカ・コーラとグローブの巨大オブジェ](

Ballparkの楽しみ方

とにかく景色が美しい球場なので、色んな角度から楽しみましょう。僕の一番推しは、一塁側最上階席からの絶景です。左からダウンタウンのビル群、ベイブリッジ、サンフランシスコ湾、マッコビー湾を、野球のフィールドと重ねて、一望することが出来ます。ザ・サンフランシスカン・ビュー!開放感、爽快感抜群の、とても美しい眺めです。

[パノラマ写真で、一枚絵に収めたい壮観!](

港町ならでは、充実のシーフードも美味しいものばかりです。クラブサンドは、カニの身がぎっしり入ったペーストを丁寧に塗り込んだ、ガーリックトースト。外はサクサク、中はふわっふわです。

[溢れんばかりのカニの身が!](

スプラッシュ・ヒットに挑む

「スプラッシュ・ヒット」と呼ばれるのは、サンフランシスコ・ジャイアンツの選手が放った、海まで届くホームランだけです。相手チームの一打やファールボールは、カウントされません。球場がオープンした2000年から、2022年シーズンまでの23年間で「97本」を数えました。平均すると、年間4本のペース。ライトフェンスに掲げられたメーターが、今シーズン「100」の大台に到達する可能性が高まっています。

さあ、スタジアムでの観戦を満喫出来たら、海に出ましょう!球場に隣接する『シティ・カヤック』は、レンタルのお店。1時間単位で借りられるので、誰でも「スプラッシュ・ヒット」のボールゲットに挑戦出来るんです。船着場では、球団のキャラクターでもあるアザラシが、気持ち良さそうにお昼寝しています。

[多分アザラシ](

マッコビー湾には、大きな船で気ままにパーティーを楽しむ人たちや、岸の上から釣竿でボールを狙う強者まで、三者三様。

中でも有名なのが、50個以上の「スプラッシュ・ヒットボール」を獲得したレジェンド・デイブさんです。彼に弟子入りしたファブさんは「スマホじゃだめだ。タイムラグがない、ラジオを聴きながら待つ。バッターによってポジションを変え、打球音に耳を澄ませるんだ。」と、師匠の教えを守り、91号を手に入れました。最後は誰よりも早く、海に飛び込めた人が、ライバルとの戦いを制します。中継映像にも映り、ファブ・オーバーボード(=船外活動)というあだ名がついたほど体を張ったと、笑顔で教えてくれました。

野球の楽しみ方が、こんなにも多様であることを教えてくれる「オラクル・パーク」で、あなただけの体験が出来ることを、心から願っています!

[唯一無二の、素晴らしいひと時を!](

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福田太郎(ふくだ・たろう)/ 1991年生まれ。HTB北海道テレビ放送アナウンサー。プロ野球の実況中継や、朝の情報番組MCを担当した後、2022年2月から11月まで休職。MLB全30球団・ボールパークを訪ね、世界最高峰のスポーツエンターテイメントを学び、12月に復職。写真:福田太郎

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