投資を始めるべきか悩む30代夫婦。ローン返済や教育費の確保のほうが先?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、夫と2人の子と暮らす37歳、パートの女性。一家の金融資産は現金のみ。収入はそれなりにあるものの、インフレ対策として投資を始めるべきか悩んでいます。FPの伊藤亮太氏がお答えします。


我が家の金融資産は全て現金預金です。

昨今のインフレで実質目減りしていると思うと、投資を始めた方がいいのかと悩みます。まずは住宅ローンを繰り上げ完済するのが先か、子どもの教育費を十分に確保するのが先でしょうか。

住宅ローン、教育費、老後費用、投資の優先順番と、投資の始めどきや、ふさわしい商品と額がわかりません。アドバイスをお願いいたします。

毎月とボーナスからの貯蓄額は先取り分で、残業代などで多く支給されて給与振込口座に残る月もあり、そのまま貯まっていて、先取りと合わせて年間450万くらい増えています。

【相談者プロフィール】

・女性、37歳、パート

・夫37歳、公務員 ・子ども2人(10歳、10歳)

・住居の形態:持ち家(戸建て)

・毎月の世帯の手取り金額:45万円(夫25万円〈残業のない月〉、妻17万円、プラス10年後まで売電収入あり)

・年間の世帯の手取りボーナス額:150万円

・毎月の世帯の支出の目安:26万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:9万2,000円

・食費:5万円

・水道光熱費:1万5,000円

・教育費:2万5,000円

・保険料:5,000円

・通信費:8,000円

・車両費:2万5,000円

・その他:4万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:20万円(先取りのみ)

・ボーナスからの年間貯蓄額:60万円(先取りのみ)

・現在の貯金総額(投資分は含まない):3,000万円

・現在の負債総額:住宅ローン1,820万円(金利0.73%〈変動〉、返済期間残り23年)

伊藤:ファイナンシャルプランナーの伊藤亮太です。回答させていただきます。

いただいた情報から、お子さまは双子さんでしょうか。そうすると、ダブルで教育費がかかるため、ご心配なことも多いかもしれません。

とはいえ、現状の資産状況や毎年の貯蓄状況から、特段心配はされなくてもよいと考えます。今の状況から、教育費も住宅ローンの返済も問題なく行えると思われます。

まずは住宅ローン完済を目指しましょう

住宅はいつ頃に購入されましたか? 仮に35年ローンを組まれており、既に12年が経過しているのであれば、住宅ローン控除の適用も終わっているかと思います。30年ローンでしたらもう少し住宅ローン控除が適用できますね。

もし私が同じ状況であれば、まずは住宅ローン控除を使い切り、その後一括して返済することを検討します。現状の貯蓄額が3,000万円に対して、住宅ローンの残債が1,820万円であるため、すべて返済しても1,000万円以上手元に残ります。教育費や予備資金を考慮しても対応可能です。

そのため、住宅ローン控除の終了にあわせて、まずは住宅ローンの完済を目指されてはいかがでしょうか。この理由の一つには、住宅ローンが変動金利であることがあげられます。今のところ、住宅ローンの変動金利が大きく上昇するといったことはないものの、日本銀行の金融政策の修正がそのうち変動金利にも影響を及ぼす可能性があります。そのため、大きな影響が生じないようにするためにも、先に住宅ローンを完済しておかれた方がよいでしょう。

次の優先事項は教育費の確保

住宅ローン返済後は、子どもの教育費の確保が優先事項になります。

仮に年450万円の貯蓄が今後も増えるとすると、お子さんが18歳になった時に住宅ローン完済を行っていたとしてもおおよそ4,600~4,700万円は貯蓄がある見込みです。もちろん、この通りにいかない可能性もあるものの、それでも二人分の大学の学費は十分まかなえるでしょう。仮に二人とも私立・理系の大学院まで通ったとして、一人につき学費以外も考慮し1,000万円ぐらいかかったとしても、貯蓄は2,600~2,700万円は残ります。その段階でもご夫婦の年齢は45歳前後ですから、そこから老後資金を構築しても余裕があります。

単純に15年間、少し低めに見積もって年300~350万円の貯蓄ができたとすると、4,500~5,250万円の貯蓄が追加で可能です。60歳時点で合計7,100~7,950万円の貯蓄ができる見込みです。負債もありません。

夫は公務員ですからおそらく退職金もあることでしょう。60歳時点でこれだけの預貯金があれば何も心配する必要はないと思います。

それでもインフレが心配なら…

さて、ここまでは単純に貯蓄だけしたと仮定して検証してきました。ご相談者のご指摘の通り、昨今のインフレにより、確かに実質的な貯蓄は目減りする状況にあります。そこで投資により実質的な目減りをしないようにお考えかと思います。とはいえ、貯蓄額からして思い切ったような資産運用はする必要はありません。

そこで、一つの方法として、物価連動国債ファンドはいかがでしょうか。物価連動国債は、物価の変動に連動して元本が増減します。そのため、インフレになれば元本が増加し、実質的な資産価値の目減りを回避することができます。

この他、インフレに強い資産として金をあげることができます。例えば、ゴールドファンドに投資することで、インフレ対策につなげることができます。昨今、金価格は円建てで見て安定しており、何かあった場合に備えて保有すると効果的です。

今回のアドバイスをまとめると…

今回のご相談者のように、まとまった資金があり、特に資金的に困る状況でもなく、大きく増やす必要もないのであれば、物価連動国債ファンドやゴールドファンドでインフレ対策をしてみてはいかがでしょうか。

不測の事態の出費等も考慮すると、まずは住宅ローン返済後の貯蓄額の10%ずつそれぞれに投資し、計20%を運用してみてはいかがでしょう。さらに余裕が出てきた場合は追加買い増しなども検討していけばよいと考えます。

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