ESG投資で後押しする地球のサステナビリティ

2023年1月、NASA(アメリカ航空宇宙局)などが、2022年の二酸化炭素の排出量が過去最多になったとの分析を発表しました。経済活動の回復も要因の一つですが、ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機で、石炭の使用量が増えたことなども影響しているとみられています。

一方で、ポジティブな兆候も発表されています。国連環境計画は、南極上空のオゾン層が回復しつつあり、2066年頃までに、オゾンホールが急激に拡大する前の1980年の水準に戻るとの見込みを発表しました。1987年に採択された「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」で、オゾン層を破壊するおそれのある物質を特定し、当該物質の生産、消費及び貿易を規制したことにより、全世界でエアコンの冷媒やスプレー缶の噴射剤などに使われるフロンの使用が抑えられました。

モントリオール議定書は、世界で最も成功している環境条約といわれており、これらの対策を続けていくことで、北極では2045年、その他の地域で2040年までにオゾン層が回復すると予測しています。また、このオゾン層破壊物質の削減により、2100年までに温暖化を0.3~0.5℃抑制できるとしています。

フロン削減の成功例のように、企業のCO2排出の抑制努力を評価し、後押ししていくことは、地球全体にとって温暖化防止のための大きな足掛かりになります。もちろん、温暖化は企業だけの責任ではありませんが、経済活動の本格的な再開や石炭利用が余儀なくされる中であっても、排出削減は待ったなしの状況です。

2022年11月、金融庁が「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案を公表し、有価証券報告書に「サステナビリティに関する企業の取り組みの開示」と「コーポレートガバナンスに関する開示」を、必須記載事項としました。これは、今年3月末以降に終了する事業年度における有価証券報告書から適用される予定で、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures=気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った開示が求められることになります。

TCFDは、G20の要請を受け、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、金融安定理事会により設立されました。2023年1月4日現在、世界全体で賛同を示した4,100の企業・機関のうち、日本の企業・機関が1,158を占めています。

これらの情報開示により、各社がシナリオ分析を行うことは、気候変動に伴う事業へのリスクと機会を認識し、自社のビジネスにとっても、地球にとってもネガティブな影響を抑制することにつながると言えます。そして、そのような企業努力を単に「果たすべき責任義務」とするのではなく、投資の側面から応援することは、私たち個人ができる気候変動対策の一つと言えます。

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                                           リサーチチーム

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