コスタ社「初夏再開目指す」 国際客船の佐世保寄港 浦頭拠点、供用開始は未定

国際客船の佐世保寄港について「初夏再開を目指す」と語る浜岡氏=東京都内

 世界最大のクルーズ会社カーニバルの傘下にある企業の取締役で、運航会社コスタクルーズ日本・韓国支社長を兼務する浜岡聡一氏(61)が長崎新聞社の取材に応じ、国際客船の佐世保寄港について、「コスタは初夏の再開を目指して準備している」と明らかにした。一方、カーニバルなどが佐世保市浦頭地区に整備した国際クルーズ拠点の供用開始は定期的な寄港が見込めず「未定」とした。
 イタリアに本社を置くコスタ社は、米国などに拠点があるカーニバル社のグループ企業。佐世保市によると、コスタ社は佐世保港での国際客船寄港の実績が最も多い。浜岡氏は取材に対し、「コスタはアジアの近隣国からの訪日クルーズを企画しており、佐世保寄港を予定している」と答えた。
 国際クルーズ拠点は国と同市、カーニバル社が連携し、2020年夏までに岸壁やターミナルビルなどを整備。拠点施設はカーニバル社の傘下企業「カーニバルコーポレーション・ポーツグループジャパン」が管理するが、新型コロナウイルス禍で客船が寄港できず、供用開始が遅れている。
 傘下企業の取締役として、拠点運営の中心的な役割を担う浜岡氏は「現時点では定期的な寄港が見込めない。(拠点の)供用開始の時期は決まっていない」とした。
 国際クルーズを巡っては、昨年11月に業界団体が新型コロナ予防のガイドラインを公表。国土交通省が客船の受け入れを再開させると発表した。

◎カーニバル傘下企業取締役兼コスタ日本・韓国支社長 浜岡聡一氏/クルーズ歓迎、佐世保に熱意感じた

 世界最大のクルーズ会社傘下の「カーニバルコーポレーション・ポーツグループジャパン」取締役と、コスタクルーズ日本・韓国支社長を兼務する浜岡聡一氏に、国際客船の佐世保寄港再開などについて聞いた。

 -日本の国際クルーズの先行きは。
 運航のガイドラインが策定され、今春から順次再開する。欧米では新型コロナ禍前と変わらない状況まで回復している。日本でも社会的な合意が進めば運航はさらに増える。

 -佐世保への寄港再開の見通しは。
 コスタの客船は年内に寄港する予定。初夏の再開を目指して準備している。まずはアジアの近隣国からの訪日クルーズを始める。佐世保港の三浦か浦頭のどちらかの岸壁を使う。

 -浦頭地区に整備した国際クルーズ拠点はいつ供用を開始するのか。
 定期的な寄港が見込めなければ拠点施設の運営は成り立たない。まだその段階にはなく、供用開始の時期は決まっていない。ただ、現地にスタッフを一部配置しており、オープンに向けた準備は整いつつある。開始後はカーニバルグループの客船が優先的に寄港するが、(競合)他社にも活用してもらう。

 -佐世保港の強みは。
 九州は中国や台湾、韓国といった東アジアの市場に近く、ポテンシャルが大きい。その中で、佐世保は官民ともにクルーズを歓迎する熱意を感じる。地域の理解と支援が強みだ。

 -地域との連携は。
 寄港地での観光に力を入れている。欧州のクルーズは寄港地の滞在時間を長く設定しており、地域との交流促進や経済活性化につなげている。
 佐世保には九十九島をはじめ、豊かな自然環境や魚介類があり、たくさんの魅力がある。佐世保を起点に周辺の観光地も紹介できる。県内には、島原半島のイルカウオッチングや雲仙地獄などユニークな場所が多い。各地域の住民や行政担当者と一緒に観光資源を磨き、旅行商品を考えたい。

 -寄港地観光は、現地でツアーを主催する業者(ランドオペレーター)だけが潤うという指摘もある。
 大型バスで観光地を回るツアーより、町歩きなどを楽しむFIT(個人旅行)は増えている。官民でビジネスモデルを変え、地域全体にメリットが広がるようにする。

 -今後も中国人観光客が主な客層となるのか。
 中国一辺倒にはならないのではないか。FITが増える中、航空機で日本に入り、佐世保港を発着点に船旅を楽しむ「フライ&クルーズ」を促せば、欧米の観光客も取り込める。さまざまな国の観光客が楽しめるクルーズを寄港地とともに作り上げたい。

【略歴】はまおか・そういち 一橋大法卒。ユナイテッド航空でマーケティングなどを担当。格安航空会社のバニラ・エアで商品開発部長などを務めた。2018年からコスタクルーズ日本・韓国支社長。大阪府出身。


© 株式会社長崎新聞社