部活動の事務連絡で懲戒処分… どう思う?生徒と先生のSNS 専門家に聞くと…

広島県教委の会見(1月13日)
「大変申し訳ございませんでした」

生徒とSNSで私的にやりとりをしたとして、1月、県立学校の教員2人が懲戒処分になりました。

生徒と教員のSNS…。街で保護者に聞くと…。

保護者
「(子どもと教師が)あまり近づきすぎるのも、どうなのかな」
「やっぱりあんまり好ましくないかなと思います」

高校生たちは…。

高校生
「話したいとか質問したいときは、(先生に)連絡とかめっちゃしたいと思います」
「SNSは顔が見えずに話す分、わりとは話しやすかったりもするのかなと思いますけど…」

今回のテーマは「何がいけないの?生徒と先生のSNS」。生徒と先生の距離について考えます。

【スタジオ】
青山高治アナウンサー(以下、青山)
「生徒と先生、もちろんこの世代間によって、SNSとの向き合い方、距離感って全然違いますもんね」

中根夕希アナウンサー(以下、中根)
「SNSって本当に日常の中にも欠かせないものになっているので、それを制限されるとなると、また難しいなとも思いますよね」

青山
「仕事の中にも普通に入ってきてますよね…」

コメンテーター 木村雅俊さん(中国新聞)(以下、木村さん)
「ただ、あれを業務としてやるか、また個々でやるかになってくると、そこで違う線がある」

青山
「本当に、線引きの問題だと思いますね…」

小林康秀キャスター(以下、小林)
「どこで区切るのか…。スマホを持ってる方はほとんどの方は、SNSをしているぐらい、本当便利なものだとは思うんですけれども、ただ、学校の教育現場しかも生徒と教師の間になると、ちょっと事情は違ってくるようです」

「県内ではSNSで私的にやり取りをしたとして、1月、2人の教員が戒告の懲戒処分を受けました。その私的なやり取りということなんですが、どんな内容かといいますと、こちらご覧ください。」

小林
「32歳男性の教員は部活動の事務連絡で処分を受けた、25歳の女性教員は部活動の事務連絡と個別相談で処分を受けたということなんですね」

青山
「私的なやり取りで処分と聞きますけど、部活動の事務連絡と聞くと、ちょっとこの辺りどうなのかなという感じもしますよね」

木村さん
「みんなにすぐ周知徹底できると思ったんでしょうからね…。でもそれが禁止されてるんだったら、ダメですよね。

小林
「これなぜ、こういうルールになってしまったのか…、やはり経緯があるんですよね。
そもそも教育委員会ではこれまでも、生徒と教員がSNSでやり取りをしないように、研修や通知で指導を行っていたんですね。ところが、今年度に入ってから、わいせつ事案が例年より多く発生したということで、過去の事例なども調べてみると、その多くがSNSがきっかけだったということがわかりましたので、県教委は去年の9月から『SNSでのやり取りを懲戒処分の対象にする』ということを決めたということなんですね」

中根
「確かに教員によるわいせつ事案というのはニュースの中でもよく聞くので、生徒を守るために、こういった処分のあり方も、やむを得ないのかなとも思いますね」

小林
「一方で、この事案によって処分するというのは厳しすぎるという声もあったり、こうしたやり取りで生徒が救われる面もあるのでは…と、そういった意見もあったんです。受け止めは人それぞれのようです」

【VTR】
まずは街中で高校生たちに先生とのSNSでのやりとりについて聞いてみました。

生徒
「勉強とか教えてもらえたり、テスト前とかに教えてもらえたら楽になるなあとは思います」
「学校のアプリがあるから、そういうアプリがあれば、別に個人で連絡まではしなくていいかなぁと」
「(連絡を)とる内容によるかもしれないです(何はOK?何はダメ?)プライベート的な感じだったら、ちょっとダメかなと思うんですけど、悩みとかならしょうがないのかなと…」
「好きな先生だったら(連絡を)とりたい」
「インスタ(のアカウントを)知りたい、インスタだけ知っときたいよね~、どんなことをあげるん(投稿するん)かな~って興味あります」

高校生の子どもを持つ保護者たちにも聞いてみました。

保護者
「(先生の)キャラクターとかわからないので、ちょっと心配なのはありますね。(子どもと教師が)あまり近づきすぎるのも、どうなのかな」
「やっぱりあんまり好ましくないかなと思います。学校での連絡で、あくまでもやりとりをするという前提なので、それを延長というか、拡大解釈してするっていうのはどうかなっと思います」

【スタジオ】 青山
「我々が高校生のころは、それこそ先生から全生徒のね、住所と電話番号が載った住所録みたいのが配られてましたけど、今は先生のインスタのアカウントが知りたいっていうそんな時代なんですね」

木村さん
「時代が進んだ分、世代がひとつ前の人たちからすると、あれ?って思うことが今の世代にとっては普通なんですっていうのがね、やっぱりうまく交わらないですよね…」

小林
「生徒は相談の手段としてあったらいいなという声も。保護者からはSNSでのやり取りそのものに対して疑問の声もありました」

青山
「確かに保護者からすると、大丈夫かなっていうところの気持ちは理解できます…。ほかの人の目の届かないところで、ちょっと密室性が生まれて、そこで学校だけのやり取りじゃなくて、個人対個人のやり取りに発展していくんじゃないかというところは思ってしまいますよね」

小林
「心配なのは密室性なんでやはり透明性というところがキーワードになってくると思います。
実は広島県の公立高校では生徒とのやり取りに使えるツールが導入されてるんですがこちら…」

「生徒と教員の間の1対1でのやり取りが可能、クラスや部活動単位の連絡可能、管理職が利用履歴を閲覧可能なので、透明性を確保している・・・ということなんです」

中根
「これを使ってのやり取りですと、処分されないっていうことですか?」

小林
「はい。つまり、県教委のSNSに関する新たな指針というのが、SNSが禁止というよりは、県教委が認めたこの管理職の目の届くこのツールでやり取りをするということなんです」

「こうしたルールが適用されない私立の高校を取材してみました」

「すると、特に取り決めを決めていないという学校…、SNSの判断は教員に委ねるという学校…、一方、SNSでは連絡させず部活のための個別連絡は学校用ツールで可能という学校もあるということなんですよね。学校によって判断が分かれるということなんです。
今、SNSは、社会ではあるのが当たり前の存在、避けては通れない問題ということで専門家に聞いています」

【VTR】
学校現場をとりまくSNS問題に詳しい親和女子大学の 金山健一 教授です。金山教授によると、2007年までの5年間にわいせつ事案で懲戒処分を受けた教員は、全国でおよそ500人。

そのうち半分は、LINEやツイッターなどSNSでのメッセージのやりとりが最初のきっかけとなっていたといいます。

文部科学省はおととし4月、SNSの私的なやりとり禁止などの「対応方針」をまとめ、全国の教育委員会に通知しています。

親和女子大学 金山健一 教授
「最初からわいせつの方になってるわけじゃなくて、SNSの私的なやり取りとか相談とか、そういうところから段々発展して恋愛になったり、いろんなことがあって、わいせつ行為になってしまったということがわかっているので、文科省としてもね(SNSでのやりとりを)否定したいっていうのはねよくわかっています」

【スタジオ】 青山
「やはり、SNSが何かのきっかけになってしまってる部分ってのはあるんでしょうね。そうですね」

木村
「相談するっていうことはあんまり人に見られたくないというのが最初だと思うので、やはりそこが深い悩みだとまた回答を重ねているうちに…というのは、ありがちなような気がしますよね」

青山
「一方で、休日の、例えば部活のスケジュール連絡などはすごく便利で使える部分もありますしね…

中根
「社会に出たときに、SNSとの付き合い方っていうのは学生時代に学ばなければならないなというところも一つありますし、本当にその相談をしたいならば、本来は面と向かって先生に相談できるのが理想なんじゃないのかなと思うところもあります」

小林
「公立高校では特定のツールを使うということになってるんですが、先生に聞いてみました」

「すると『学校で認められたツールは生徒が見ない可能性があり、連絡に負担を感じる』『SNSは公私の線引きが曖昧になる』『生徒が普段使うSNSの方が連絡が早く確実にできる』といった声がありました。こうした声についても金山教授に聞いています」

【VTR】
親和女子大学 金山健一 教授
「内閣府が小学校低学年の子どもたちのインターネット普及率を調べたところ、6歳(小1)で71.2%、9歳(小4)で87.2%の時代なんです。(子どもたちは)みんなもうインターネットが普通になっている」

金山教授もラインなど、生徒たちもよく使うSNSでのやりとりにニーズがあることは否めないといいます。こうした中、対応できるようにする策としては、「教員への公用携帯の支給」をあげます。

親和女子大学 金山健一 教授
「公用携帯があることによって、先生方をそういうことに巻き込まないし、子どもたちも巻き込まれない」

【スタジオ】
青山
「公用携帯を持つことができれば、お互いに巻き込まれずにすむというところなんですかね」

木村
「公用携帯といっても、誰かが見られるのか、2人だけになるのか…。公用だったとしても、そこが最終的に行き着く状況ができてしまうと…」

小林
「ある程度管理されるということになるので、その辺りは透明性が担保されるという部分ではあるのかなと…。ただ、予算などの面ですぐに実現は難しい部分も…」

中根
「先生たちに秩序を保ってもらえれば…というのもありますよね。実際にSNSを使った方が便利なものは便利だし、生徒のことを思うと、その方がやり取りしやすいのかもしれないので」

青山
「生徒が学校で認められたツールを見ないっていう話がありましたけど、それを見るようにできないのかと思いますよね、生徒たちが『このツール、便利!使いやすい!!』みたいな」

小林
「そういった訴えも大事だと思いますし、本当に切っても切り離せない時代なので、これからも検討を続ける必要がありそうです」

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