大学での学びなおし、語学学習、士業資格取得…最大70%の補助が受けられる「教育訓練給付制度」はどんなひとが使える?

昨今、関心を集めている学びなおし。リスキングともいわれていますが、社会人になってから学びなおしをすることでスキルアップをしたいと思っている人は多いのではないでしょうか。実際に社会に出て働く経験をすることで、学びの大切さを実感するからかもしれません。

学びなおしには費用がかかりますが、だからといって諦めるのはもったいない。「教育訓練給付金制度」を活用すれば、費用の最大70%の補助が受けられます。制度と補助の内容について、見ていきましょう。


会社員、または元会社員なら使いたい制度

教育訓練給付金制度は、働く人の能力開発、キャリアアップを支援する制度。対象は、雇用保険の3年以上の被保険者など、一定の要件を満たした人です。雇用保険の制度なので、原則として雇用保険に入らない自営業、フリーランスの人は対象にはなりません。

給付金の対象になるかどうかは、あらかじめ住所地を管轄するハローワークで確認しましょう。確認は、受講開始(予定)日に受給資格があるかどうか、そして、受講講座が給付金の対象の講座かどうかです。受給資格の有無は勤務先に聞くこともできますが、給付金の支給元であるハローワークへの確認が確実です。

雇用保険の被保険者期間が3年以上だと思っていたらそうではなかったとか、給料から雇用保険の保険料として差し引かれていたが実は雇用保険は入っていなかったとか、受講する講座が対象の講座ではなかったなど、思いがけず対象外になってしまうケースもあります。給付金が受けられると思って受講したらもらえなかった、という事態を避けるためにも、必ず確認(支給要件照会)はしておきましょう。

支給要件照会は、ハローワークや教育訓練施設で「教育訓練給付金支給要件照会票」をもらって、必要事項を記入し、運転免許証や住民票の写しなどの本人を確認できる書類とともに、ハローワークに提出します。電話による照会は、トラブルのもとになるおそれがあるため、来所するか郵送での受付です。

講座は1万以上、教育訓練給付金は4種類

給付金の対象となるのは、厚生労働大臣が指定する講座です。英会話などの語学、キャリアアップに必要なスキルの習得、資格の取得を目指す講座など1万以上の講座が対象です。また、大学や大学院の課程も指定講座になっていて、通学だけではなく、通信制、土日のみの講座、オンライン、eラーニングといったさまざまな学び方も選ぶことができます。

教育訓練給付は、以下の3種類です。
・一般教育訓練給付金:受講費用の20%(上限10万円)
・専門実践教育訓練給付金:受講費用の最大70%(年間上限56万円)を最大3年間
・特定一般教育訓練給付金:受講費用の40%(上限20万円)

それぞれ見ていきましょう。

一般教育訓練給付金

一定の条件を満たす人が、厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を受講し修了した場合、本人が払った費用の20%(上限10万円)が給付になります。給付を受けたら、3年以上経過しないと次の給付は受けられません。つまり、3年に1回は給付金をもらうことができる、ともいえます。詳しく見ていきましょう。

対象となる人

対象となるのは、下記のいずれかの人です。

(1)雇用保険の一般被保険者等
一般教育訓練の受講開始日に、支給要件期間(同一の事業主に一般被保険者等または短期雇用特例被保険者として雇用された期間)が3年以上ある方

(2)雇用保険の一般被保険者等であった方
一般被保険者等の資格を喪失した日(離職日の翌日)以降、受講開始日までが1年以内であり、かつ、支給要件期間が3年以上ある方

たとえば、
・3年以上同じ会社に勤務していて、雇用保険の被保険者である
雇用保険の被保険者かどうかは、給与明細でもわかります。給与明細の控除欄に雇用保険の保険料の記載があれば、雇用保険の被保険者だと考えて間違いないでしょう。

・3年以上同じ会社に勤務していて雇用保険の被保険者だったが、1年以内に退職した
教育訓練の受講開始日が、離職日の翌日から1年以内であれば対象です。会社をやめても1年以内なら利用できます。ただし、はじめての利用であれば、雇用保険の被保険者期間が1年以上であれば対象です。今年から何かはじめたい、という人にはありがたい措置ですね。

厚生労働大臣が指定する一般教育訓練を受講

給付金を受けられるのは、厚労大臣が指定するものが対象です。
TOEICをはじめとした外国語や簿記、ITパスポートなど多種多様で、制度のウェブサイトから検索システムを利用するのが便利です。

給付金と受け取れるタイミング

一般教育訓練給付金は、教育訓練施設に支払った費用の20%に相当する額が給付です。つまり、いったん自分で費用を支払って受講、修了してからの給付になることに注意してください。支給の申請は、受講修了日の翌日から1カ月以内です。また、金額の上限は10万円、費用が4000円を超えない場合は給付されません。受講料が50万円の講座なら、上限いっぱいの10万円の給付金がうけとれます。

専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付は、中長期的なキャリア形成を支援する制度。対象となる訓練は、専門的・実践的なものです。給付金は費用の50%、年間の上限は40万円で最大3年間受け取れます。給付を受けたら、3年以上経過しないと次の給付は受けられません。同時に複数の講座について支給申請はできませんので、ひとつに的をしぼって取り組めるものを選びましょう。

こちらも詳しく見ていきましょう。

対象となる人

対象は、下記のいずれかの人です。

(1)雇用保険の一般被保険者等
専門実践教育訓練の受講開始日に、支給要件期間(同一の事業主に一般被保険者等または短期雇用特例被保険者として雇用された期間)が3年以上ある方

(2)雇用保険の一般被保険者等であった方
一般被保険者等の資格を喪失した日(離職日の翌日)以降、受講開始日までが1年以内であり、かつ、支給要件期間が3年以上ある方

大まかには、上記の一般教育訓練給付金の対象となる人と同様です。ただし、はじめての利用者は、雇用保険の被保険者期間が2年以上であれば対象です。一般教育訓練給付金では1年以上でしたので、気をつけてください。

また、以前に教育訓練給付金を受け取ったことがある場合、その時の受講開始日より前の被保険者期間は通算できません。つまり、以前の受講開始日から少なくとも3年以上、同じ会社で勤務し続けて雇用保険の被保険者である期間がないと、次の給付金は申請できなくなります。

厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練を受講

給付金を受けられるのは、厚労大臣が指定するものが対象です。大学・大学院の課程など、じっくり腰を据えて取り組みたい講座が多くあります。

給付金と受け取れるタイミング

専門実践教育訓練給付金は、費用の50%に相当する額が給付です。金額の上限は年間で40万円、給付期間は最大3年です。年間80万円の費用がかかっても、半分の40万円を受け取ることができるわけです。

6カ月ごとの支給申請にもとづいて支給されますので、受講中から受け取ることができます。もし、途中で受講を中断してしまったら、そこからは受け取れませんのでモチベーションの維持になるかもしれませんね。さらに、受講を修了・資格を取得して、修了から1年以内に就職に結びついた場合には追加で費用の20%を受け取ることができます。この場合、その年の給付は最大で費用の70%、56万円です。

支給の申請時期ですが、受講中は受講開始日から6カ月ごとの期間の1カ月以内、修了したら修了日の翌日から1カ月以内です。また、受給資格確認前までに訓練対応キャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受ける必要があることにも、注意が必要です。

特定一般教育訓練給付金

特定一般教育訓練給付金は、すみやかな再就職と早期のキャリア形成を支援する制度。対象となる訓練は、資格の取得や短時間のキャリア促進プログラムなど、転職にも役立つものが多くあります。給付金は、本人が払った費用の40%(上限20万円)です。給付を受けたら、3年以上経過しないと次の給付は受けられません。

対象となる人

対象は、下記のいずれかの人です。

(1)雇用保険の一般被保険者等
特定一般教育訓練の受講開始日に、支給要件期間(同一の事業主に一般被保険者等または短期雇用特例被保険者として雇用された期間)が3年以上ある方

(2)雇用保険の一般被保険者等であった方
一般被保険者等の資格を喪失した日(離職日の翌日)以降、受講開始日までが1年以内であり、かつ、支給要件期間が3年以上ある方

また、以前に教育訓練給付金を受け取ったことがある場合、その時の受講開始日より前の被保険者期間は通算できません。以前の受講開始日から少なくとも3年以上、同じ会社で勤務し続けて雇用保険の被保険者であれば、また給付金を申請することができます。

厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練を受講

給付金を受けられるのは、厚労大臣が指定するものが対象です。

給付金と受け取れるタイミング

一般教育訓練給付金は、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の40%に相当する額が給付です。いったん自分で費用を支払って受講、修了してからの給付になることに注意してください。また、金額の上限は20万円、費用が4000円を超えない場合は給付されません。受講料が50万円の講座なら、上限いっぱいの20万円の給付金がうけとれます。

支給の申請は、受講修了日の翌日から1カ月以内です。一般教育訓練給付金よりも多くの給付金を受け取れますが、受給資格確認前までに訓練対応キャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受ける必要があることにも、注意が必要です。

あと必要なのは時間とモチベーション

将来の自分のために、新しいスキルを身につけるには活用しがいのある制度。費用の見通しがたったら、あとは時間とモチベーション次第です。2023年を飛躍の年にできるよう、さまざまな可能性を考えてみてはいかがでしょうか。

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