当時の七十歳といえば、現在では百歳に近い長寿!孔子が晩年になって、人生を振り返った大切な言葉とは?【論語】

子(し)曰(いわ)く、吾(われ)十有五(じゅうゆうご)にして学(がく)に志(こころざ)す。三十(さんじゅう)にして立(た)つ。四十(しじゅう)にして惑(まどわ)ず。五十(ごじゅう)にして天命(てんめい)を知(し)る。六十(ろくじゅう)にして耳(みみ)順(したが)う。七十(しちじゅう)にして心(こころ)の欲(ほっ)する所(ところ)に従(したが)って、矩(のり)を踰(こ)えず。

<訳>先生がいわれた。わたしは十五歳で学問を志し、三十歳になると、独立した立場を得た。四十歳になると、迷うことがなくなり、五十歳になると、天命をわきまえるようになった。六十歳になると、人のいうことを素直に聞くことができるようになって、七十歳になると、思ったようにふるまっても道をはずれるということはなくなった。

孔子が晩年になって、人生を振り返った言葉として有名です。ここから、十五歳を「志学(しがく)」三十歳を「而立(じりつ)」、四十歳を「不惑(ふわく)」、五十歳を「知命(ちめい)」、六十歳を「耳順(じじゅん)」、七十歳を「従心(じゅうしん)」というようになったのです。

当時の七十歳といえば、現在では百歳に近い長寿といえます。孔子は七十四歳まで生きたのですから名実ともに、長老といえるでしょう。

四十歳になったら、自分の人生、生き方に迷うことなく自信をもち、五十歳ともなれば、天命の何たるかを自覚するということでしょうか。そのまま現代の私たちに当てはまります。

人の心の成長というものは、生きている間、限りなくつづくのですから、「もう歳だから」などということなく、新しいことにチャレンジして、自分を高める努力をしつづけることが大切なのではないでしょうか。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 論語』
監修:山口謠司 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1963年長崎県生まれ。博士(中国学)。大東文化大学文学部大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現大東文化大 学文学部中国学科准教授。 主な著書に『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)、『日本語を作った男 上田万年とその時代』(第29回和辻哲郎文化賞を受賞。集英社インターナショナル)、『日本語の奇跡〈アイウエオ〉と〈いろは〉の発明』『ん─日本語最後の謎に挑む─』『名前の暗号』(新潮社)、『てんてん 日本語究極の謎に迫る』(角川書店)、『日本語にとってカタカナとは何か』(河出書房新社)、『大人の漢字教室』『にほんご歳時記』(PHP 研究所)、『漢字はすごい』(講談社)、『語彙力のヘソ』(徳間書店刊)、『おとなのための 1 分読書』(自由国民社)など著書多数。

2500年の時を超え、「聖書」と並び読み継がれてきた孔子の言葉を著した『論語』。「人生最高の教え」と賞される、この全20章500余の短文から現代により通じる「珠玉の言葉」を厳選して紹介、図解でわかりやすくまとめた1冊!

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