日本の少子化対策はどうあるべき? 識者が指摘する“盲点”とは

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、岸田政権の“異次元の少子化対策”について、視聴者を交えて議論しました。

◆岸田首相が"異次元の少子化対策”を明言

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代・XY世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは"異次元の少子化対策”です。

岸田首相は、年頭の記者会見で「異次元の少子化対策に挑戦する」と明言。児童手当など経済的な支援の拡充、学童保育など子育てサービスの充実、仕事と育児の両立策の強化の3つを示しました。

岸田政権が取り組んできた出産・子育て政策を振り返ってみると、まずは今年4月「こども家庭庁」が発足します。その中身としては「こども成育局」で妊娠・出産の支援、子どもの居場所、保育現場での安全確保。「こども支援局」では児童虐待防止、子どもの貧困、いじめ防止、障害児支援を行っていきます。

そして、「出産育児一時金」は、現状42万円ですが今年4月から50万円に増額。ただ、現在の出産にかかる費用は全国平均45万5,000円で、東京都は最も高い約56万円とされており、増額しても足りません。

また、「出産・子育て応援給付金」として4月から妊娠届で5万円、出生届で5万円の計10万円相当のクーポンか現金で支給。これは去年の4月以降の出産が対象で、支給方法は自治体が選定するとしています。

自治体ではさまざま取り組みが進んでおり、例えば、東京都では0歳から18歳の子どもに1人あたり月5,000円程度を所得制限なく給付する方針。また、昨年12月には健康女性の卵子凍結の支援を拡大。これは少子化対策、女性活躍の促進が目的とされています。

そして、区立の小中学校では給食費の無償化も。台東区では今年1月から実施され、葛飾区と北区では4月から予定しています。また、兵庫県明石市では2020年10月から「おむつ定期便」を実施。これは0歳児に毎月無料でおむつなどを届けるサービスで、同時に子育て相談にも対応。その他にも高校生までの医療費無償化、第2子以降の保育料の完全無料化なども行っています。

◆日本の少子化対策として若者の結婚サポートが必要か?

一連の少子化対策に対し、株式会社トーチリレー代表取締役の神保拓也さんは「子育て世代への支援のみに議論が集中しすぎるのは、少子化対策にはならない」と懸念。東京都の5,000円程度の支給を含め、少子化対策の多くがすでに配偶者やパートナーがいる方への支援で「実は盲点になっていると思うのが、独身者の恋愛や結婚の部分へのサポート。そこにもう少し力を入れるべき」と主張します。

2021年の出生動向基本調査では、20代の女性の約3割、男性のおよそ4割は交際経験がなく、調査時点で交際相手がいない人は女性6割、男性7割にのぼりました。

神保さんはその状況を案じ、「低下気味とはいえ、日本は結婚した家庭で平均的に2人ぐらいの子どもがいることを踏まえると、結婚後の支援よりも結婚までのサポート、出会いの創出などそうしたところにも注力する切り口も必要なのでは」と力説します。

Health for all.jp代表の茶山美鈴さんは、出生率を上げるポイントとして「いかに出産から子育て、その先に対して継続的に取り組みを続けられるか」と"継続性”を挙げます。

そして、「そういう意味では、国が行っている支援金は一時的な感じで、自治体の月額給付などは進んできているのかなと思う」と自治体の対策を評価しつつ、「根本的には、女性の働く機会や賃金のサポートが必要。そうした議論からしっかりやっていくべき」と訴えます。

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、岸田首相の年頭会見について「少子化の国は海外から見て投資の対象にならない、そこを変えていかなければならないというような経済的な観点からの子育て支援、少子化対策に思えた」とその印象を語ります。

一方で、神保さんが指摘していた結婚までのサポートについては異議を唱えます。有配偶出生率が下降していないことは事実ながら、すでに数十年に渡り政府が主導する"官製婚活”を行われているとし、「結婚することが正しい、結婚して子どもを産むことが正しいという風潮を作ってしまう。それは大きな間違い」と指摘。

そもそも若い人が結婚して子どもを産まないのは出会いの場がないのではなく、「育てられないから」だと強調し、「そういう意味では経済的な支援も大切」と主張。こども家庭庁を含め、あらゆる政策が、問題を抱えている家庭や貧困家庭、ひとり親家庭をメインに打ち出していますが、大空さんは「本来は全ての子ども、親、子どもに関わる人たちが子どもを一緒に育てていくような社会を作るべき。全ての子どもが対象。その哲学がないのが一番の問題」と訴えます。

大空さんの意見に、神保さんは「少子化対策で成功した国で言うと、フランスやスウェーデンが該当するが、そうした国々は婚外子率が半分程度。つまり約50%が結婚を経ずに子どもが産まれている。ただ、日本は歴史的・文化的背景もあって婚外子率は2%前後」と海外と日本の違いに言及。「結婚がマストとは思わないが、それを経ないと子どもが生まれていない現実的な問題がある」と補足します。

また、神保さんのもとには、これまでキャリアに関する悩み相談が多かったものの、昨今リモートが定着し、より出会いがなくなったと悲しむ声が増えていると言い、「結婚を望んでいる人が、入口がないのでしたいと思ってもできないという悩み相談がものすごく多い。出会いの創出は真剣に向き合わないといけない」と力を込めます。

当番組のTwitterスペースに参加していた視聴者からは、「私も哲学が必要だと思う。シングルマザー、パートナーがいない出産・育児だとしても、経済的不安のない制度が欲しい」との意見があがりました。そして、子どもを産めない最大の理由として「経済的問題」を挙げ、「これが根本理由だとすれば、やはり女性の雇用に問題がある。ここを改善しなければいけない」と訴えました。

こうした意見に、キャスターの堀潤は「経済的な面からも、女性の権利の面からも、構造的に変えていかないといけないものはたくさんある」と頷きます。

茶山さんも「本当に働く機会が大事」と再確認。「女性が子どもを産み、家庭に入り、そこから再びに働きに戻れないといったことが、いまだに起こり続けていると私も実感している。その不安を解消していかないと女性としても子どもを産むことにフォーカスできない」と案じ、「(日本は)安心して子どもを産める国ではなくなってきている」と危惧していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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