離婚後の共同親権、木村草太教授が課題を指摘 福井県で講演「父母不仲なら子の利益害する恐れ」

離婚後の共同親権をテーマに講演する木村草太教授=2月5日、福井県生活学習館

 離婚後の子どもの親権をテーマにした講演会が2月5日、福井県生活学習館(福井市)で開かれた。憲法学者で東京都立大学の木村草太教授が講師を務め、父母が離婚後もともに子の親権を持つ「共同親権」に関して「父母が不仲である場合、子どもの引っ越しや進学、医療などがスムーズに決められなくなり、子の利益を害する恐れがある」と課題を指摘した。

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 講演会は、シングルマザーら女性の社会生活を支援する市民団体「フルード」(福井市)が開催。約70人が聴講した。

 離婚後の子どもの養育について検討する法制審議会(法相の諮問機関)の家族法制部会は2022年11月、制度見直しの中間試案を取りまとめた。親権に関し、父母双方の「共同親権」を選べる案、現行民法のままどちらか一方の「単独親権」だけを維持する案などを併記している。

 共同親権については、親権争いから起きる子どもの「連れ去り」を避けられ、別居親が子どもと会えるようになるといった考えから支持する声もある。木村教授は現行法でも、不当な連れ去りには監護者指定手続きをして、子を元の場所に返すよう強制できる仕組みが既に整えられ、子の利益になるなら面会交流の命令もある点などを説明した。

 その上で「共同親権に必要なのは両親の協力関係だ。相互に話し合える信頼関係がない場合、子についての重要事項をすぐさま決定できない」と訴えた。

 法務省は2月17日まで中間試案に対するパブリックコメント(意見公募)を行っている。木村教授は「当事者や支援者の立場で、共同親権導入に伴う弊害や、どういった制度を望んでいるかを国にぜひ伝えてほしい」と呼びかけた。

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