「毎日会いたくてたまらない」 水路転落で亡くなった4歳男児の両親、再発防止へ心境語る 広島県福山市

長男の写真を集めたアルバムを手に取る父親(撮影・井上貴博)

 広島県福山市緑町の緑町公園そばで昨年11月、男児が水路に転落して死亡した事故。男児の両親が中国新聞の取材に応じ、「毎日会いたくてたまらない」と突然に息子を失った悲しみを語った。以前にも別の転落事故が起きた現場。「これ以上、被害が続かないでほしい」と市に再発防止を求めた。

 男児は当時4歳で、弟(生後11カ月)を含む4人家族。ボール遊びなどが好きな活発な子だったという。会社員の30代の父親は「サッカーを習いたいと言うので、ボールに慣れさせようと休みの日は公園に通っていた」と語る。「幼稚園で友達に会うのも楽しみにしていて、みんなと仲良くなれる子でした」。母親は帰宅後、遊んだ友達の名前をうれしそうに話す笑顔を思い出す。

 男児は弟の面倒見も良かったという。危ない所があると抱き上げたり、泣くとあやしたりしていた。母親には「(弟が)歩くようになったら一緒に手をつないで歩く」「大きくなったらお母さんが行きたいところに連れていってあげる」と話していた。そんな優しい一面もあったわが子を失った両親。母親は悔しさをにじませ、「2人一緒に育っていくところを見たかった」と目頭を押さえた。

 事故当日はいつものように兄弟を連れて、幼稚園の友達やその家族と公園に出かけていた。ふと気が付くと男児がいなくなり、捜し続けたが、水路で発見されたという。「水のある所には絶対行かないよう日頃から言ってきた。でも4歳ではなかなか分からないと思うんです」。母親は複雑な胸の内を語った。

 事故当時、両親は「ショックで他のことは考えられない状態だった」とも語る。しかし、四十九日が近づくにつれ、これまでの市の対策に目が向くようになった。年末に市に連絡し、年明けからやりとりが始まった。現場となった水路では、過去にも子どもたちが転落して死亡する事故があった。両親は「これまでの対応が知りたいが、求めている答えが出てこない」ともどかしさを募らせる。

 市は事故後、男児が進入した隙間にフェンスを取り付けた。今後は水路に面した他の公園や公共施設でも有識者たちから意見を聞きながら対策を進める方針。父親は「対策が必要なのは緑町公園だけではないはず。しっかり対策をしてほしい」と市の取り組みを注視していく考えだ。

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