人が生きるためには、信用が大切。儒教で道徳の大切な5つの判断要素とは?【論語】

子(し)曰(いわ)く、人(ひと)にして信(しん)なくば、其(そ)の可(か)なるを知(し)らず。大車(たいしゃ)輗(げい)なく、小車(しょうしゃ)軏(げつ)なくば、其(それ)何(なに)を以(もっ)て之(これ)を行(や)らんや。

<訳>
先生がいわれた。人として信義がないならば、うまくやっていくことはできない。牛車に轅ながえのはしの横木(輗)がなく、四頭だての馬車に轅のはしのつなぎ止め(軏)がなかったら、牛馬をつなぎ止めることもできない。一体どのようにして動かそうか。

人間関係には信義が大切で、信義がなければ社会生活というものは成り立たない、といっています。人として信用できない人というのは、善い人ではないのは当たり前です。

輗も軏も、どちらも馬や牛を車とつなぐための道具のこと。こうした道具を例に挙げて、人にとっての信用の大切さを説いているのです。信用とか信頼とは、かたちとして見えるものではないので、むずかしいものです。では何によって判断するのかというと、行動の積み重ねによってしか見極めることはできないのです。

私を信じて! といわれても、常日頃その人の行動を考えて判断しなければ、信じるかどうかは決められないでしょう。

儒教では、仁・義・礼・智・信の五つを道徳の大切な要素としています。

信じることも信じてもらうことも、人間としては、責任ある行動に裏付けられたものでなければ成立しない、重いものであると解することが重要です。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 論語』
監修:山口謠司 日本文芸社刊

執筆者プロフィール
1963年長崎県生まれ。博士(中国学)。大東文化大学文学部大学院、フランス国立高等研究院人文科学研究所大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員などを経て、現大東文化大 学文学部中国学科准教授。 主な著書に『語彙力がないまま社会人になってしまった人へ』(ワニブックス)、『日本語を作った男 上田万年とその時代』(第29回和辻哲郎文化賞を受賞。集英社インターナショナル)、『日本語の奇跡〈アイウエオ〉と〈いろは〉の発明』『ん─日本語最後の謎に挑む─』『名前の暗号』(新潮社)、『てんてん 日本語究極の謎に迫る』(角川書店)、『日本語にとってカタカナとは何か』(河出書房新社)、『大人の漢字教室』『にほんご歳時記』(PHP 研究所)、『漢字はすごい』(講談社)、『語彙力のヘソ』(徳間書店刊)、『おとなのための 1 分読書』(自由国民社)など著書多数。

2500年の時を超え、「聖書」と並び読み継がれてきた孔子の言葉を著した『論語』。「人生最高の教え」と賞される、この全20章500余の短文から現代により通じる「珠玉の言葉」を厳選して紹介、図解でわかりやすくまとめた1冊!

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