三国志最強の男・呂布が登場【図解 三国志】

呂布が方天画戟を手に威圧す

董卓は、姓が董、名は卓、字を仲潁と言う。前将軍で西涼刺史だが、黄巾賊討伐で戦功がなかったため、いわば不作為の咎を受けかねない。それを恐れて十常侍に賄賂を贈り、朝廷からの処分を免れていた。

にもかかわらず董卓は、今度は、掌中にある西涼の大軍二十万をもって、謀反を起こさんと朝廷の隙をうかがい始めたのだ。そんなところに、詔で洛陽へ進撃する大義名分を得たのである。

一方、「何進死す」の報に接した袁紹、袁術、曹操らは兵を率いて宮中に突入し、宦官と見るや誰彼かまわず斬り殺して回った。少帝、陳留王(協)は張譲らに連れ出され、夜通し逃げ惑うことになる。やがて張譲は、逃げられぬと悟って川に身を投げて死す。

頼る者とてなくした少帝と陳留王、まだ十六歳と九歳の若年二人は彷徨った。幸運なことに先の朝廷の司徒・崔烈の弟に助けられ、無事に都に帰還できたが、このときに遭遇したのが董卓だった。誰何する董卓に少帝は怯えて声も出ず、代わりに陳留王が見事に応じたことで、董卓は愚昧な少帝を廃し、陳留王を皇帝に就と決意したのである。

董卓は麾下の軍を城外に駐屯させ、自らは完全武装の騎馬隊を率いて入城。少帝を脅して太尉に就き、その専横は辺りを払って、袁紹ほかの武将に睨みを利かせていた。董卓は、盛大な宴席を設けて皇帝の廃立を宣言した。

盧植が異議を唱え、并州刺史の丁原も真っ向から反対すると、董卓は剣を引き抜き脅しにかかる。と、丁原の後ろに方天画戟を手にした堂々たる美丈夫が目を怒らせている。姓は呂、名は布、字は奉先、呂布の初見えであった。

その迫力に董卓も剣を収めざるを得ない。収拾のつかなくなった宴席だったが、司徒の王允が、「廃立の大事は酒席で議論すべきではない」と諌めたことで、ようやく散会となったのである。

さて、呂布を目の当たりにした董卓は、「あ奴はただ者ではない。呂布をわが陣営に組み入れたら怖いものなしになるのだが……」と垂涎する。と、虎賁中郎将の李粛が、「私にお任せあれ。呂布は私の同郷でありますが、勇敢であっても智謀に欠け、義よりも利を上に置く男です。

餌を見せれば飛びつきます」と言う。董卓が、「どんな手立てがあるのか」と問うと、「将軍がお持ちの、一日千里を走る名馬赤兎と黄金や真珠をもって奴を誘えば、まず丁原を裏切り、董卓どのの手下となりましょう」との策であった。

結果は李粛の言う通り、呂布は丁原を斬り捨てて董卓の元に参じ、義父義息の約定を交わすことになる。だが、これが呂布の裏切り人生の始まりとなったのだった。

『図解 三国志』はこんな人におすすめ!

・中国の古い歴史に興味がある! ・昔の人は何のために争っていたのか? ・三国時代や格言について学びなおしたい
と感じている方には大変おすすめな本です。

魏・蜀・呉、三国の興亡を描いた『三国志』には、「桃園の誓い」「三顧の礼」「出師の表」「泣いて馬謖を斬る」など心打つ名場面、また「水魚の交わり」「苦肉の策」「背水の陣」「髀肉の嘆」など名言や現代にも通じる格言も数多く登場する。また、曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、周瑜、司馬懿など個性豊かで魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、歴史上重要な合戦も多い。英雄たちの激闘の系譜、名場面・名言が図解でコンパクトにすっきりわかる『三国志』の決定版!

シリーズ累計250万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ

図解シリーズは、右側に文章、左側に図解で解説という形で構成されているので、本が苦手な人にも理解しやすい内容です。

図解シリーズには、健康・実用だけではなく大人の学びなおしにピッタリな教養のテーマも満載。さくっと読めてしまうのに、しっかりとした専門家の知識を身につけることができるのが最大の魅力です!

気になる中身を少しだけご紹介!中国では、「革命」によって新たな王朝に禅譲されるのが約束事

『三国志』は「紀伝体」で書かれました。帝の記録「本紀(略して紀)、それ以外の人物の記録「列伝(略して伝)」で構成される歴史書です。陳寿は『三国志』を書くに際してあれこれ惨憺したらしい。魏の曹操(155~220)没後、息子の曹丕(187~226)が皇帝を名乗り、であればと蜀の劉備(161~223)、次いで呉の孫権(182~252)も皇帝を名乗った。

でも、三国に帝(皇帝)がいるというのは古来の中国ではあってはならないこと。天が命じた天子に地上を治めさせるので、天子は一人でなければならなかった。しかし、その天子が徳を失えば、徳のある天子に禅譲することになります。だから陳寿は、後漢の献帝(181~234)から禅譲(実際は簒奪)されたとする魏を正統とすることによって、魏から禅譲(これも簒奪)されたとする西晋を正統とせざるを得ない。

ほんとうは後漢の正統を継いでいるのは、漢王室の末裔とされる劉備が興した蜀と思っていても、陳寿はそうは書けない。故国蜀の滅亡で晋に職を求め、史官として三国の歴史を書くために仕えている身としては、晋朝廷から覚えめでたくあらねばならない、きっとそう悩んだ。

結局、陳寿は「魏書」に「本紀」を置かざるを得ず、「武帝紀(曹操)」「文帝紀(曹丕)」から最後の皇帝「元帝紀(曹奐)」まで著しました。じゃあ、劉備や孫権をどう扱ったか?「蜀書」に「先主伝」を立て、劉備を“先主”と呼ぶ一方、「呉書」の「呉主伝」では孫権は一貫して“権”。「列伝」では当該人物名を生前名の諱で呼ぶのが原則なのに、劉備に関してはその慣例を無視。まさに陳寿は蜀びいきなんですね。

★三国志演義の物語 ★赤壁の戦いの真実とは? ★三国志の始まりとは ★知っておきたい軍事制度とは
などなど気になるタイトルが目白押し!

『三国志』には、心打つ名言や現代にも通じる格言が多くあります。曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、など魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、名場面を図解でわかりやすく解説しているので「三国志」の学び直しに是非読んでいただければ幸いです。

【書誌情報】
『図解 眠れなくなるほど面白い 三国志』
渡邉義浩 監/澄田夢久 著

魏・蜀・呉、三国の興亡を描いた『三国志』には、「桃園の誓い」「三顧の礼」「出師の表」「泣いて馬謖を斬る」など心打つ名場面や「水魚の交わり」「苦肉の策」「背水の陣」など名言や現代にも通じる格言も数多く登場する。曹操、劉備、孫権、孔明、関羽、張飛、趙雲、周瑜、司馬懿など個性豊かで魅力的な登場人物に加え、官渡の戦い、赤壁の戦い、五丈原の戦い等、歴史上重要な合戦も多い。英雄たちの激闘の系譜、名場面・名言が図解でコンパクトにすっきりわかる『三国志』の決定版!

© 株式会社日本文芸社