元都知事・石原慎太郎さん死去から1年 関係者が語る「都の公会計制度改革」

元東京都知事の石原慎太郎さんが亡くなってから2月1日で1年がたちました。生前、石原さんは「都知事時代の最も重要な改革」として公会計制度の改革を挙げていました。その後のオリンピックの招致や新型コロナ対策の礎にもつながった「公会計制度の改革」にスポットを当て、振り返ります。

2012年10月25日、突如辞職を発表した石原知事は、その会見の中で「機能するバランスシートを作って、それをベースに今日の地方自治体の公式な組織のための新しい会計制度を作った。東京はそれをやり出して非常に合理化されたし、そのおかげで財政再建できた」と、自身の都政を振り返りました。また石原さんは自身の回顧録でも「私がやった最も重要な改革は、財政再建のために従来の都庁の会計制度を単式簿記から複式簿記に一変させたことだと思います」(『東京革命 わが都政の回顧録』幻冬舎・刊)と記しています。

東京都は2005年度まで現金主義単式簿記と呼ばれる、お金の流れのみを記録する方式を採っていました。一方、石原さんが導入した発生主義複式簿記は、金の流れに加え、生じた資産なども記録されるようになります。例えば東京都が5000万円で建物を造った場合、以前は5000万円の支出のみが記録されていました。新たに導入された会計制度では5000万円の支出に加え、生じた建物という「資産」も記録されることになります。東京都・会計管理局の吉野真穂課長は「(新公開制度を導入することで)現金のやりとりだけでなく、都全体として資産がどれぐらいあるのか。コスト情報を分析することによって事業見直しや施設更新時に検証が可能となっている。予算編成にも生かされていると考えている」と話します。

石原さんはなぜ新しい公会計制度を導入したのでしょうか。

石原さんが知事に就任する以前の1998年度、東京都は史上最大の赤字を出すほど財政が逼迫(ひっぱく)していました。およそ30年にわたって石原さんのブレーンを務めた鈴木壮治さんは「都民が税金を納めているわけですから、お金がどんなふうに使われているか知りたい」「説明義務、行政の効率化を説明するためには複式簿記、発生主義でないと駄目だった」と当時を振り返ります。

都が不測の事態に備えるために積み立てる財政調整基金は新しい公会計制度導入直前が4000億円ほどでしたが、2019年度には9345億円まで増やすことになります。そしてこれがオリンピック招致や最近では新型コロナウイルス対策など大規模な財政出動への基となりました。鈴木さんは「(新公会計制度の導入はさまざまな都のプロジェクトへの)戦略的な布石だったと思う」とした上で「金融は一種の社会的権力。社会権力が安定してくるので、それはいろいろな戦略が立てやすくなる」と語ります。また、石原さんの長年の盟友で金融担当大臣などを歴任した亀井静香さんは、石原さんの都知事時代やその公会計制度改革について「(都知事として)まあ、いいことをやったんじゃないの。都民からの税金をきちんと有効に使える。そういう感覚が非常に優れているよね」「単年度だと有効でなくなってしまう。使い切らないといけないことになるから」と評価しました。

1990年代の歴史的な赤字から時を経て、2023年1月に発表された2023年度の東京都予算案は一般会計で過去最大のおよそ8兆円を誇っています。

石原さんは生前、後に続く世代にこんな言葉を残していました。「若いやつ、しっかりしろよ」と──。

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