ロンドンで小池知事がトップセールス 観光都市に学ぶインバウンド復活の課題は?

東京都の小池知事は2月4日までイギリスの首都・ロンドンに海外出張しました。インバウンドの復活を期待している東京都は今回、小池知事自らが「東京観光」をアピールしました。世界から最も多くの人が訪れる観光都市=ロンドンから何を学ぶべきか取材しました。

歴史的な建築物が立ち並ぶロンドンの街には世界中から多くの観光客が訪れています。街の観光や経済などを評価する森記念財団の世界都市ランキングでロンドンは11年連続で1位となっています。一方、東京はランキングで現在3位となっていますが、コロナの影響で4位のパリにその差を詰められている状況です。

こうした中、ロンドンを訪れた小池知事はコロナの影響で減少した東京のインバウンドの回復に向け、地元メディアに説明会を開きました。「トップセールス」を試みる小池知事は日本の伝統文化である茶道を自ら実演し、東京の魅力をアピールしました。

アフターコロナを見据える東京都ですが、観光都市・ロンドンから学ぶべきことを探ってみました。訪れている観光客にロンドンについて聞いてみると「交通の便がいい。古いところと新しいところが入り交じっているのも魅力」「景観が一番素晴らしい。悪いところはバスと地下鉄のチケットがかなり高いこと」といった声が聞かれました。また、東京からの観光客は「クレジットカードがどこでも使える。ちょっとした支払いもクレジットカードで支払えるのは便利」と話していました。

課題の一つとして浮かんだのが「キャッシュレス化」です。ロンドンでは街の中の小さな売店を含めてほとんどの店でクレジットカードやスマートフォンでの決済が可能で、ロンドン名物のバスの中には「キャッシュレス・オンリー」として現金が使えないこともあります。小池知事も現地で行った講演会でキャッシュレス化について「アプリをハイテクに進化させていきたい。なぜなら、東京ではいまだに現金を使っている」と言及しました。東京都のキャッシュレス決済の比率は4割ほど(2022年)ですが、東京都は2030年までに8割まで高めようと取り組んでいます。

そして、もう一つの課題は「コロナ禍からの立ち上がり」です。イギリスは1年ほど前にコロナ対策の法的規制を全廃していて、ロンドンの街中ではほとんどの人はノーマスクです。5月に新型コロナの感染症法の位置付けを引き下げる日本でも、アフターコロナに向けて外国人観光客への対応が求められています。小池知事は「(ロンドンは)コロナでロックダウンも経験したが、既に立ち直りつつある。観光も盛んだ。社会経済活動との両立の良い見本ができたと思っている」と、ロンドンの取り組みを評価しました。

<小池知事の海外訪問の狙い&キャッシュレス化は?>

小池知事の出張の狙いや、インバウンド復活へ向けた今後の注目すべき点をまとめました。

今回の海外出張は小池知事自ら、東京を売り込む「トップセールス」と強調しています。知事はコロナ禍の情勢を分析して「世界はまるで静止画像のような状況。日本はランキングも下がっている」と話していて「国に引きこもっていてはいけない」と強い意気込みを示していました。

一方、東京都はキャッシュレス化を「観光地の魅力向上につながる重要な取り組み」と位置付けていますが、進んでいないのが現状です。最新のキャッシュレス決済の比率を見てみると、ロンドンだけのデータはないものの、イギリス全土でも63.9%(2020年)となっていて、東京を20ポイント以上リードしています。東京都は2030年までにキャッシュレス決済の比率を80%まで引き上げることを目標にしていますが、都の担当者は「高齢者のキャッシュレス浸透が課題」と話しています。

アフターコロナを見据え、キャッシュレス化、そして、東京観光を海外に売り込む"知事のトップセールス”の成果が問われます。

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