首相秘書官の差別発言 栃木県内関係者からも怒りと非難 「言葉を失う」「やるせなさを感じる」

性の多様性の啓発に取り組む県人権施策推進室に掲げられたポスター=6日午後、県庁

 首相秘書官を更迭された荒井勝喜(あらいまさよし)氏の性的少数者への差別発言で6日、栃木県内の関係者や市民からは怒りの声や非難が相次いだ。首相の最側近だっただけに「言葉を失う」「やるせなさを感じる」と憤る。政治家を含め繰り返される差別的な発言。5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の開催国である日本が、世界とかけ離れた価値観を露呈したとの批判も聞かれた。

 「完全な差別だ。言葉を失う」。日光市文挟(ふばさみ)町、飲食店経営奥山瑞明(おくやまずいめい)さん(50)は憤りと落胆を隠せない。カナダ人男性と同性カップルであることを公表した。2021年9月、同市が公認するパートナーシップ宣誓第1号になった。

 荒井氏発言の背景には、同性婚の法制化に対する衆院予算委員会での岸田首相の「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」という答弁があるとみる。

 「(理解が進む方向に)もう社会は変わっているのにトップの考えが変わらないから、部下の秘書官からああいう発言が出る」と指摘。「G7で同性婚を認めていないのは日本だけ。サミットでは世界から笑われるのでは」と冷視した。

 宇都宮市で性的少数者ら生きづらさを感じる人への心理カウンセリングを行う斎藤優佳(さいとうゆか)さん(26)は「またか、とあきれを越して、やるせなさを感じる」。政権中枢から出た発言を重く見ている。

 自身も性的少数者の1人。「性的指向だけで権利が公に認められない人たちがどれほどショックを受ける発言か」と嫌悪感をあらわにした。

 住民票の手続きで宇都宮市役所を訪れた同市、主婦山田由美(やまだゆみ)さん(38)は眉をひそめた。以前の勤務先では性的少数者であることを明かして働いていた同僚もいた。「マイノリティーは隣に普通にいる人。認識が実社会とギャップがあるのでは」と話す。

 一方、性的少数者を巡る議論については戸惑いの声も聞かれた。同市、無職男性(86)は「男女の夫婦が中心の家族観で長く過ごした」とし違和感も抱えていることを明かした。「(高齢者の自分には)ついていけない。遠い世界のように感じる」との声もあった。

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