堀ちえみデビューアルバム「少女」全曲アレンジは “はっぴいえんど” の鈴木茂  堀ちえみデビュー40周年!待望のCD / DVD-BOXがリリース

ピュアな歌声と佇まい、抜群の存在感を示した堀ちえみ

強力な新人が顔を揃えた1982年デビュー組のひとりである、堀ちえみ。1981年の第6回ホリプロタレントスカウトキャラバンで栄えある優勝を果たして芸能界入りと聞けば、実に恵まれた、順風満帆なスタートであったように思える。しかし、実際デビューに至る道のりはなかなかに険しいものだった。オーディションの模様がテレビ中継されたことで学校から叱責され、両親からも反対されてしまった。そんな時、唯一味方になって周りを説得してくれたのは、幼い頃から可愛がってくれていた祖父であったという。見た目とはギャップがある精神力の強さは、その辺りで培われたのかもしれない。

中学2年生の夏休みに地元の大阪・堺のショッピングセンターへ新曲のキャンペーンで訪れていた石野真子に偶然遭遇したのがきっかけとなり、芸能界を目指す決心をしたのだった。1980年の夏だから、石野はおそらく新曲「めまい」のキャンペーン中だっただろう。「春ラ!ラ!ラ!」「ハートで勝負」を連続ヒットさせて、アイドルとして最高の輝きを見せていた頃の彼女の魅力に、堀が魅せられたのもよく解る。石野にまた会いたいという気持ちが、タレントスカウトキャラバンへの応募を促したのだ。

かくして堀ちえみは15歳になって間もない1982年3月21日に「潮風の少女 / メルシ・ボク」でキャニオンレコード(現・ポニーキャニオン)からデビューした。「潮風の少女」は、高田みづえ「涙のジルバ」や河合奈保子「愛をください」などの作品がある松宮恭子の作詞・作曲。B面の「メルシ・ボク」はシンガーソングライター佐々木勉の作品で、4月にTBS系でスタートした主演ドラマ『メチャン子・ミッキー』主題歌だった。チャートでは最高27位にとどまるも、ピュアな歌声と佇まいは多くの新人たちの中でも抜群の存在感を示した。

すべての曲のアレンジを鈴木茂、ファーストアルバム「少女」

デビューから僅か2ヶ月後の5月21日には早くもファーストアルバム『少女』がリリースされる。デビューシングルの2曲を含む全10曲。冒頭の「夏・SEAWIND」をはじめ、「おもいっきりにダイビング」「亜麻色の風」など夏を先取りした快活なナンバーが中心で、全編に元気なイメージが充満している。張りのあるヴォーカルをさらに際立たせるキラキラしたメロディ。王道のアイドルポップスが並ぶ。作家陣は、作曲に水谷公生、尾関裕司、天野滋、作詞に中里綴、尾関昌也ら。

諸星冬子作詞、天野滋作曲による「愛 ♡だけどロンリネス」は、揺れ動く少女の繊細さが表現された佳曲で、歌の表現力も群を抜いている。このコンビは翌年に名曲「夕暮れ気分」を提供することになる。ミステリアスな曲調でまた違った魅力が垣間見られるのが「ふしぎ七色」。続く「ふれ愛モーメント」の作曲は、石野真子「ジュリーがライバル」を手がけていた幸耕平だったから、きっと嬉しかったに違いない。森雪之丞の作詞・作曲による「微笑んでGood-bye」はアルバムのラストに置かれた曲ながらあくまでも明るく、"すぐまた逢える" と次作への期待を高めて終わる。すべての曲のアレンジを鈴木茂が手がけているため、アルバムに統一感がある。

ホリプロ(東京音楽出版)で山口百恵や浜田省吾、榊原郁恵らを手がけてきた川瀬泰雄が総合プロデュース。白を基調としたジャケットデザイン、盤までホワイトレコードにするというアートコンセプトも川瀬のアイデアによるものだった。そしてメーカー・プロデューサーは、山本リンダをはじめ、中島みゆき、岩崎良美らを担当していた、元・ランチャーズの渡辺有三という鉄壁の布陣。ミュージシャンの顔ぶれも、鈴木茂を筆頭に、佐藤準、林立夫、山木秀夫、笛吹利明、吉川忠英ら、当時考え得る最高のメンバーが演奏を務めている。

もうすぐ堀ちえみの新たな幕が上がる

とにかく歌うことが好きで自分のすべてだと語ってきた堀ちえみにとって、素晴らしき出発点となったファーストアルバムは、期待と希望と意欲に満ち溢れていた。新人アイドルの最初のアルバムとは思えないほどの高い音楽性が窺える。今改めて評価されて然るべき1枚だろう。

それから41年、病気を乗り越えて再び歌のステージに臨む彼女の表情は、歌えることの喜びでいっぱい。もうすぐまた新たな幕が上がる。デビュー曲「潮風の少女」を歌いながら去来する熱き想いはいかばかりであろうか。

カタリベ: 鈴木啓之

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