松任谷由実 × 松原正樹【ギターのフレーズが印象的なユーミンソング】ベストテン  合掌 2月8日は松原正樹の命日です(2016年没・享年61)

ユーミンのアルバムにも数多く参加したギタリスト松原正樹

2022年、ユーミンはデビュー50周年を迎え、ベストアルバム『ユーミン万歳!』が大ヒット。大晦日の紅白歌合戦ではAI荒井由実とデュエットをした「Call me back」だけでなく、「卒業写真」もサプライズで歌ってくれました。この「卒業写真」は荒井由実のアルバム『COBALT HOUR』に収録された1曲ですが、鈴木茂のギターが印象的なスタンダードナンバーです。これまでユーミンのアルバムに多く参加してきた鈴木茂ですが、もう一人忘れてはいけないギタリストがいます。そうです、それは今日のコラムの主役である松原正樹です。

1970年代からギタリストとして活躍してきた松原正樹は、2016年に61歳という若さでお亡くなりになるまで、日本のトップギタリストとして多くの楽曲に参加してきました。松山千春の「長い夜」や松田聖子の「時間の国のアリス」など、これまでに参加してきた楽曲はゆうに1万曲を越えているそうです。無意識に聴いてるあんな曲やこんな曲も実は松原正樹のギターなのかもしれませんね。

ギターのフレーズが印象的なユーミンソングランキング

そんな松原正樹は、ユーミンのアルバムにも数多く参加していて、ユーミンサウンドには欠かせないギタリストです。松原正樹が最初に参加したアルバムは、荒井由実の『14番目の月』で、その後も2000年代のアルバムまで継続的に参加しています。

ということで、今回は松原正樹が参加した、ギターのフレーズが印象的なユーミンソング10曲をランキング形式でお届けしようと思います。曲を聴いていただければ「あ!あのギターね!」と納得していただけると思います。ユーミンネタもちょいちょい挟んでいくので、最後までお楽しみください。

10位「よそゆき顔で」(1980年 / 時のないホテル)

アルバム『時のないホテル』のLPの帯には「Featuring Masaki Matsubara on guitar solo」と記載されているので、このアルバムは当然 “松原正樹のギター命” の作品になっています。ジャケットやブックレットはロンドンのブラウンズホテルで撮影され、かなりブリティッシュ色の強いサウンドが特徴です。

印象的なギターソロからはじまる「よそゆき顔で」は、結婚を機に過去に決別をする主人公の心境が印象的に描かれていて、舞台になっている“観音崎の歩道橋”はユーミンファンの聖地にもなっています(もちろん自分も巡礼しました!)。この曲は、ベストアルバム『ユーミン、万歳』にも収録されました。

9位「情熱に届かない〜Don't Let Me Go」(1991年 / DAWN PURPLE)

「情熱に届かない〜Don't Let Me Go」は、こちらもベストアルバム『ユーミン万歳!』にも収録された1曲ですが、個人的にも大好きな曲です。二子玉川駅のホームから見える夕暮れの多摩川の河川敷が舞台になっているのですが、主人公の虚無感と情景がオーバーラップする名曲です。2番の間奏からエンディングにかけて唸る松原正樹のギターソロが、主人公の乾いた哀しみを上手く表現していると思います。

8位「霧雨で見えない」(1987年 / ダイアモンドダストが消えぬまに)

大ヒットアルバム『ダイアモンドダストが消えぬまに』の収録曲の中で1曲を除き松原正樹がギターを弾いています。シンクラヴィアで制作されたサウンドなので無機質になると思われがちですが、要所要所に差し込まれる松原正樹のギターのおかげで楽曲の体感温度のようなものが上がるような気がします。

「霧雨で見えない」の舞台は、渋谷・並木橋のバス停。歌詞のフレーズ「橋の上 霧雨の水銀灯」は、雨に煙る中走る銀色の東横線の比喩だそうです。イントロのギターフレーズだけで、霧雨に煙った街並みが浮かんでくるようです。現在、東横線は地下に潜ってしまったので、残念ながらこの景色は見ることはできませんが。

7位「ANNIVERSARY」(1989年 / LOVE WARS)

バブルの象徴と呼んでも決して過言ではない、ユーミンの大ヒットアルバム『LOVE WARS』ですが、このアルバムのエレキギターは全曲松原正樹です。収録曲「ANNIVERSARY」は当時結婚式の定番ソングとしても愛された1曲で、オリコンの最高位2位をマークする大ヒットになりました。

デジタルの打ち込みサウンドが特徴的なこの曲ですが、エンディングのギターソロがなかったらやけに淡々とした1曲になってしまったと思います。何故なら、エンディングのギターソロがこの曲のクライマックスなのですから…。

6位「メトロポリスの片隅で」(1985年 / DA・DI・DA)

アルバム『DA・DI・DA』は、全曲に松原正樹がギタリストとして参加したアルバムです。「もう愛は始まらない」の勇ましいギターソロや、「SUGAR TOWNはさよならの町」のカッティングのフレーズ、「シンデレラ・エクスプレス」の切ない間奏など、ギターだけ聴いてもいろいろな発見があります。中でもイントロからギターソロが唸る「メトロポリスの片隅で」はイントロだけで心が躍り出します。ステージでは頻繁に披露される曲ではありませんが、イントロが流れるだけで間違いなく盛り上がる1曲です。

5位「カンナ8号線」(1981年 / 昨晩お会いしましょう)

ユーミンのコンサートのクライマックス・シーンでは欠かすことのできない「カンナ8号線」ですが、イントロを聴くだけで旗を振りかざしながら行進したい気分になります。コンサートを観たことのある方は、この意味がよくわかると思いますが(笑)。

「カンナ8号線」は、ユーミンの数あるドライブソングの中でも、「埠頭を渡る風」「中央フリーウェイ」と並ぶ人気曲だと思います。中盤からエンディングにかけてのギターソロが圧巻なのですが、コンサートで盛り上がる曲というのは、ギターソロの部分がいかに重要かということがよくわかります。この曲も、ベストアルバム『ユーミン、万歳』にも収録されました。

4位「真珠のピアス」(1982年 / PEARL PIERCE)

ユーミン自身もお気に入りだというアルバム『PEARL PIERCE』。タイトルナンバーの「真珠のピアス」のイントロは松原正樹のギタープレイなのですが、このイントロが流れるだけで、あたりの空気感までも変わるような気がします。「ギターのマスターピースはこのアルバムから生まれたと思います。」とユーミン自身が雑誌で語っているとおり、このアルバムは “ポップスの教科書” のような1枚なのかもしれませんね。

この『PEARL PIERCE』には、人気曲「DANG DANG」も収録されていますが、エンディングの松原正樹のギターソロがなければ、主人公の激しい悲しみはここまで表現できていなかったかもしれません。

3位「恋人がサンタクロース」(1980年 / SURF&SNOW)

数あるユーミンの代表曲の中でも、必ず上位に食い込むのが「恋人がサンタクロース」です。発売から40年以上経過しても、クリスマス時期には必ずどこからともなく流れてきますよね。メロディはポップなのにサウンドがロックっぽいのは、やはり要所要所で唸る松原正樹のギター効果だと思います。このコラムを書きながら曲を聴いてるのですが、ギターの部分ばかり気になってしまい、これまで当たり前に聴いていたフレーズも非常にありがたく聴こえてきます(笑)。

2位「影になって」(1979年 / 悲しいほどお天気)

昨今のシティポップブームで再評価されているユーミンソングですが、この曲もかなり評価が高いのではないでしょうか? アーバンな雰囲気がたまらない「影になって」は、要所要所に挟み込まれる、松原正樹のギターのカッティングが絶妙な効果をもたらしていると思います。エンディングのフェイザーをかけた単音リフは、永遠に聴いていたいフレーズです。

歌詞の中に、終電あとの成城学園前の “ミスタードーナツ” が出てきますが、中島みゆきが「狼になりたい」の中に “吉野家” を登場させたことから「みゆきが吉野家だったら、私はミスタードーナツだな」と思って作った歌詞なのだとか。とはいえ、具体的にミスドが出てくるわけではなく、ユーミンの場合は「ドーナツ屋の薄いコーヒー」というフレーズですが。

1位「セシルの週末」(1980年 / 時のないホテル)

10位にアルバム『時のないホテル』から「よそゆき顔で」をセレクトしましたが、1位は何といってもこの曲でしょう! ディストーションのかかったギターソロから始まるこの曲は、ブリティッシュロックをこよなく愛するユーミンが一度は表現してみたかった世界だと思います。

当時、アルバムは商業的に大成功だったわけではないですが、ファンの間では非常に人気の高いアルバムです(もちろん僕もお気に入りのアルバムです)。「セシルの週末」は不良娘の主人公が、真面目な彼からプロポーズ受けることで改心していく感動の1曲ですが、松原正樹のギターソロが主人公の心情を効果的に表現していると思います。この曲は、ベストアルバム『ユーミン、万歳』にも収録された人気曲です。

―― ということで。松原正樹×松任谷由実の楽曲10曲選ばせていただきましたがいかがだったでしょうか。これまではギターのフレーズを意識してユーミンの楽曲を聴いてこなかったので、今回このコラムを書くにあたって新鮮な気持ちで曲を聴くことができました。みなさまも是非、ギター目線でユーミンソングを聴いてみて下さい。意外な発見があって面白いかもしれませんよ。

カタリベ: 長井英治

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