展望楽しみ野鳥観察も~日暮里・舎人ライナー

 【汐留鉄道倶楽部】 東京に長く住んでいるので、都内の鉄道はほぼ乗りつくしたはずと思って地図を眺めていたら、都心から一直線に北へ延びるなじみのない路線があることに気づいた。東京都営の新交通システム「日暮里・舎人(にっぽり・とねり)ライナー」だ。

 

日暮里・舎人ライナーの先頭車最前列で車両同士のすれ違いを楽しむ

 JR山手・京浜東北線の日暮里駅を起点に、都道・尾久橋通りの上を高架で駆け抜け、足立区の北端、見沼代親水公園駅までの9.7キロ。5両編成の少し小ぶりな列車が13駅を各停のみ20分ちょっとで結んでいる。開業は2008年3月と新しく、今年でちょうど15周年を迎える。

 最初は「都内乗りつぶし」狙いだったが、実は前から行ってみたかった目的地があった。それは途中の駅名にもなっている「舎人公園」(足立区)である。約65ヘクタールと東京の下町にしては広大な総合公園で、高木の緑も多い。そして目当ては公園中央にある大池に集まる水鳥などの野鳥だ。

 さっそく日暮里駅から乗車する。山手線からの乗り換えは橋上通路で簡単。ちょうど車両が到着したばかりで、降りてきた乗客をかきわけながら進むと、安全対策と風防のためのホームドアががっちり造られていて車両の外観が分からない。最近ありがちな風景だが、車両の塗色やデザインが隠れて見えないというのは、鉄道ファンには残念である。

 

(上)飛翔する姿が美しいマガモとカルガモ=右端、(下)舎人公園の水辺風景

 そこですれ違う車両で確認しようと、先頭車の最前列に乗り込んだ。運転士のいない自動運転なので、運転士気分に浸れる。ゆりかもめなどと同様に側壁をつたいながらタイヤで走行するタイプで、走り出しはするするっとした感じ。最初の急な左カーブを曲がると、あとはほぼ直線で、加減速は快調だ。架線柱がないので左右の眺めもすっきりしている。隅田川に続く荒川を渡る橋梁では高さが一段と増して、富士山のシルエットがきれいに見えた。

 約15分で舎人公園駅に到着。改札を出ればそこがもう公園だ。冬場で風が少しあったが、散歩、ジョギング、赤ちゃんを連れたお母さん…と、そこそこのにぎわい。300メートルほど歩いて大池のほとりに出た。水辺に張り出した木道の感触も心地良く、この日はマガモ、カルガモ、ヒドリガモ、カワウ、アオサギ、カイツブリなど10種類以上の鳥を確認できた。これまで見たことのないグレー系の小型のカモ(?)に出くわし、「珍鳥来園か」と期待して調べてみたら、まま見かけるバンの幼鳥だった。

 

2015年に登場した日暮里・舎人ライナーの新型車両

 ちなみに、ライナーの車両基地はこの公園の地下にあるというからびっくりだ。終点の見沼代親水公園駅までまたライナーに乗車し、すぱっと切れている高架軌道の先端まで見届けてきた。地図で確認したら埼玉県川口市との都県境まで約200メートル。地域では延伸を望む声もあるようだが、現状で「混雑してても赤字」という財政的な課題を抱えており、簡単ではなさそうだ。

 それにしても、日暮里・舎人ライナーとは長くて言いにくい。書くときは真ん中に「・」も必要だ。東京都交通局が発行している無料の沿線ガイドの名称が「にっとね」なので、いっそのこと「にっとねライナー」でどうだろうと思ったが、都電荒川線の「さくらトラム」も定着していないことを思い出した。

 ☆共同通信・篠原啓一 都内の野鳥観察スポットとしては足立区の東隣、葛飾区にある水元公園や大田区の東京港野鳥公園などが有名だが、交通の便では「ライナー降りてすぐ観察」の舎人公園は最高だ。

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