パワーポイントの達人は意外と成果を生み出していない?伝わる資料の条件とは

しっかり資料を作っても、商談が上手くいかなかったり、上司から差し戻されたりした経験はないでしょうか?

元マイクロソフト役員の越川慎司( @shinjiko9 )氏の著書『仕事ができる人のパワポはなぜ2色なのか?』(アスコム)より、一部を抜粋・編集して伝わる資料の条件について解説します。


「パワポの達人」が作った資料ほど、商談の成約率は低いのはなぜ?

色数や要素が多すぎて目がチカチカ、頭がクラクラする「デコパワ( = デコラティブパワポ)」

たとえば、大勢の前でプレゼンテーションをするとき。本当に説明に自信がある人は、ホワイトボードの前に立って、必要なことは、その都度、手書きしながら説明を進めたりします。逆に、凝りに凝ったパワーポイントやエクセルの資料を投影しながら説明する人は、実は自信がなかったりするもの。

もちろん全員がそうとは言いませんが、パワーポイントの達人は、意外と実質的な成果を生み出していないものです。

達人なだけに、会議などで説明するときに、ついパワーポイントに頼ってしまうのかもしれません。

あなたも、もし、 カラフルで、文字やグラフを詰め込んだ、凝りまくりのパワーポイント資料「デコパワ」を作っていたら要注意! あなたの作る資料は、説明を受ける人たちの目をチカチカ、頭をクラクラさせているかもしれません。

せっかく、何時間も費やして作った資料が伝わらないのでは、時間のムダ。努力が浮かばれません。お客様へのプレゼン資料なら、成約にもつながらず、骨折り損のくたびれ儲けです。

解決策

解決策として、パワーポイント資料5万ファイルを分析した結果得られた、「読んでもらえるパワーポイント資料」の条件についてお伝えしましょう。

1画面の文字数は105文字以内!

5万ファイルのパワーポイント資料における、「1画面に入っていた文字数」の平均は380文字でした。作った人はよかれと思っているのでしょうが、この文字数では、進んで読んでくれる人はいません。事実、1画面に300文字以上入ったパワーポイント資料を作っている営業はあまり実績が出ていませんでした。

逆に、営業成績が高く、会社内でエースと呼ばれているような方たちが作るパワーポイントの 「1画面に入っている文字数」を分析してみると、平均値の3分の1から4分の1、たったの105文字でした。

パワーポイント画面では、1画面の文字数はこの105文字以内にしてください。文字を羅列するよりも、少ない文字数で、「要は何か」ということが10秒で伝わるようなパワーポイント資料が成果につながります。

画面に使う色は3色以内!

「メラビアンの法則」って、たぶん、1度や2度は耳にしたことがあると思います。ものすごく簡単に言えば、「人は55%の情報を視覚から得ている」という法則。

ですから、相手の目を疲れさせてはいけないのです!

カラフルで、原色がバンバン使われているパワーポイント資料は、それだけで見る人の目が疲れてしまい、それ以上続けて見る気力を失うことがわかっています。

わかりやすいパワーポイント資料の条件は、「相手の目を疲れさせないこと」。

ですから、パワーポイントの画面に使用する色は、「原色以外で3色以内」がベストです! 具体的には、真っ赤よりはあずき色、真っ青よりはダークブルーですね。

色数は3色以内と言いましたが、 仕事ができる人の約4割は2色を使っていて、 割合としては一番多いというデータもあります。

さらに高度なテクニックでは、白色をうまく使うと、より効果的だということもわかっています。白色とは、たとえば余白とか、白抜き文字のこと。重要な情報の周りに余白を入れたり、目立たせたい言葉を白抜き文字にしたりする。白抜き文字には、ろうそくのような効果があり、相手の頭に残りやすいことがわかっています。

対角線を意識する

画面を見たとき、人の視線というのは、左上から右下に向かって、対角線上に移動します。そのうえで、興味を持ったら左上から右上へと移動するのです。

ですから、それを意識して、キャッチーな内容を左上に持ってくるようにする。目線誘導で、対角線上にアイコンを置くのが効果的です。

以上、 「1画面の文字数は105文字以内!」「画面に使う色は3色以内!」「対角線を意識する」 が、読んでもらえるパワーポイント資料の条件です。

この3点を、126社1万8817人の営業担当者に、2か月間、トライアルで実践してもらった結果、資料の作成時間はマイナス20%を実現しました。さらに、商談の成約率は22%アップ!

作成時間が短くなって、成約率がアップするのですから、よいことずくめではありませんか。

3色以内、1画面に105文字以内を厳守!

部長も課長も役員も、全員を一気に納得させる資料の作り方とは?

「部長用」「課長用」と作り分けて資料が増えていく「肩書カスタマイズ」

「課長はこういう資料が好き、部長はこういう資料が好き……」

そんなことを考えて、つい、別々の資料を作ってしまうことがあります。

自分はそんなつもりはなくても、上司から「いいか、部長から決済をもらうには、こういう資料ではダメだ」とか、「課長は感情の人だから、もっと、やる気が伝わってくるような資料にしてくれ」なんて言われることもあるでしょう。

いつの間にか、 階層別に資料を作り分けることが当たり前になってしまう「肩書カスタマイズ」に陥っていて、 なんだか、「資料を作ることが目的になってしまっている」のです。

私の調べでは、不幸なことに6割の人がこの落とし穴にハマっています。

でも、冷静になって考えてみてください。

1つのことを決済してもらうために、複数の説明資料を作るなんて、非効率以外の何ものでもないと思いませんか?

いったい、どうしたら、この「同じ資料を相手によって作り分ける」というムダから抜け出せるのでしょうか。

解決策

まず、 「ターゲットである決裁者は1人しかいない」という事実 を思い出しましょう。

たとえば、最終ターゲットである決裁者が役員であるなら、極端に言えば、その前にいる課長や部長に気に入られるための資料を作る必要はありません。

資料の目的は、ターゲットに動いてもらうこと!

大切なのは、「資料づくりは、目的ではなく手段」だということです。

ですから、ターゲットに気に入ってもらえる資料を作ればいいのです。

決裁者が役員であるなら、 上司である部長、課長も、「早く役員の決裁を取りたい」というのが、共通の思い のはず。それを達成したいために、あなたが作った資料に、いろいろとイチャモンをつけてくるのです。

ですから、あなたがそこを理解して、「○○役員の決裁をいただくために、こういう資料を作りましょう」という提案をすれば、課長も部長も「わかっているじゃないか」と、肯定的に受け入れてくれるはず。

「何のためにこの資料を作っているのか?」→「役員に決裁していただくため」→「だったら一番の近道として、役員向けの資料を作成しましょう」という流れです。

言わば、「役員の決裁を得る」という山登りの頂上を、最初に上司と確認し合ってから資料を作るのです。

そうやって、決裁者が好きな「簡潔な説明資料」を作って、実際に決済がいただければ、それが実績になります。

実績ができたらしめたもの。

「これからは、いつも、役員に決裁していただく資料は簡潔に作りましょう」と、上司にそんな提案ができる土壌が整うわけです。

提案しやすい土壌ができたら、会議の発表資料と同じように、たとえば、 「決裁者への説明資料は全部で3枚にする」という提案をしてみてはいかがでしょう。 上司も見るのがラクになりますから、意外とあっさり受け入れてくれるかもしれません。

「そんなにうまくいくの?」って思いましたか?

私が815社の企業とお付き合いしてきた経験から言わせていただくと、上司たちも、膨大な資料づくりが残業の温床になっていることを理解しています。 それに、できる社員ほど、「説明資料は3枚です」とコンパクトにまとめるのが上手なものです。上司も「説明資料を30枚作りました」なんて言われるよりも、そのほうがよっぽどラクだとわかっているのです。

資料を作る自分も、中身を確認する上司も、それを見て判断する決裁者もラクになる「資料は3枚まで」というルール。ぜひ、提案してみてください。

そして、承認してもらえたら、「ご理解いただきありがとうございます! これからは、この3ページのひな型を使いましょう。ほかのメンバーとも共有しますね」などと伝えてチーム内で展開すれば、上司のあなたへの評価も上がるかもしれません。

「最終ターゲットは誰なのか?」にロックオン!

仕事ができる人のパワポはなぜ2色なのか?

著者:越川 慎司
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