まるで映画のよう…広域強盗事件、手口にフィリピン紙記者も衝撃 現地で報道増えるも「ルフィって何?」

オンライン通話で取材に応じるイグナシオ・ディー氏(左)とロビーナ・アシド氏=3日

 埼玉県さいたま市を含む一連の強盗事件の指示役がフィリピンの入管施設に収容されていたことに関連して、現地の邦字紙「まにら新聞」のフィリピン人ジャーナリストが埼玉新聞の取材に応じた。約40年、現地で報道に携わった英文編集主幹のイグナシオ・ディー氏(66)は容疑者らが施設の中から犯行を指示し、強制送還を免れるために自分たちへの告訴を仕立てたとみられることについて「映画の中の話のようだ。こんな事件はこれまで聞いたことがない」と衝撃を語った。

 施設内で通信機器が使用されていたことには「驚きはない。昨年10月のジャーナリスト殺害事件も、刑務所からメッセージアプリで指示が出ていた」とし、「司法省は機器が持ち込まれた経緯を調査している」と説明した。また、2019年に日本人容疑者が入管施設から強制送還された「地面師」事件を想起したと話し、「日本人犯罪者はフィリピンの取り締まりが厳しくないと思うのだろう。昨年は大量の現金の密輸で日本人容疑者が逮捕された」と指摘。ただ、「一般的なフィリピン人は日本人を信用している。友好的な関係は続く」とし、日本に対するイメージへの影響は大きくないとの考えを示した。

 国防問題などを取材する記者のロビーナ・アシド氏(33)は「マルコス大統領訪日が迫っているので、司法省や入管はこの事件について非常に敏感になっている。政府関係者はこの類いの問題が日本訪問中に注目を集めることを避けたいようだ」と指摘する。「日本社会からの注目を集め入管の警備や汚職の状況が問題視されており、司法省長官は(解決に)本気のようだ」との見方を示したが、一方で入管施設や拘置所、刑務所などの汚職一掃に向けては「そうなってほしいと強く願うが、難しいと思う。汚職は広くまん延しているシステム的な問題だ」と説明した。

 ディー氏によると、現地での報道は増えつつあるが、当初は「タマネギの高騰や元日の空港システム障害など、他に重要なことが多く、事件はあまり注目を集めていなかった」。国内社会の注目は米国防長官の訪問時に協力強化を確認した比米関係などに集まっていると言い、アシド氏も「司法省の会見でも『ルフィ』について聞くのはほぼ日系メディアだけ。現地メディアの記者にはよく『ルフィって何?』と聞かれる」と苦笑いした。

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