「物価高」倒産 1月は前年同月の6倍の42件

~貨物運送、食品関連で倒産増加~

 2023年1月の「物価高」に起因した倒産は42件で、前年同月(7件)の6倍に増加した。円安は一時に比べ弱まり、外国為替相場は1ドル=130円を挟んで推移している。ただ、今の物価高は円安だけでなく、エネルギーや穀物などの価格上昇によるコストプッシュも大きな要因で、物価が落ち着くまでにはまだ時間を要する。
 東京商工リサーチが2022年12月1日~8日に実施したアンケート調査で、望ましい円相場は1ドル「120円以上125円未満」が25.9%、同「110円以上115円未満」が24.9%と、110円~125円が半数を占める。
このため、現在の1ドル130円前後の為替レートは、まだ「円安」と受け止める企業も少なくないようだ。

 「物価高」倒産は、業種別では燃料価格が高止まりした道路貨物運送業が6件と最も多い。また、食料品製造業が5件、飲食料品卸売業が3件、飲食料品小売業が2件と、食品関連が10件発生し、全体の2割超(構成比23.8%)を占め、価格上昇を吸収できず倒産するケースが目立つ。

 資本金別は1千万円以上が22件(同52.3%)、負債額別でも1億円以上が23件(同54.7%)と、小・零細規模より、中堅規模で「物価高」倒産が目立つのが特徴だ。

 2022年12月速報の国内企業物価指数(日本銀行・2020年基準)は前年比10.2%上昇に対し、消費者物価指数(総務省・2020年基準)は同4.0%上昇だった。生鮮食品を除く4%台は1981年12月以来、41年ぶりの高水準だが、一方で価格転嫁が進まない状況が続いている。
 物価高は、企業から家計まで深刻な影響を広げている。物価高の影響は、経営体力がぜい弱な中小企業や小・零細企業ほど深刻で、「物価高」倒産はしばらく増勢が続くとみられる。

  • ※ 本調査は、2023年1月の企業倒産(負債1,000万円以上)のうち、①仕入コストや資源・原材料の上昇、②価格上昇分を価格転嫁できなかった、等が一因になった倒産(私的・法的)を集計、分析した。

2023年1月の「物価高」倒産、前年同月の6倍の42件発生

 物価上昇はコロナ禍の需要回復や円安に加え、エネルギーや穀物の価格高騰など、様々な要因が重なっている。2022年1月の「物価高」倒産は7件と目立たなかったが、夏場から増勢ピッチが速まり、2022年12月は55件に急増。2023年1月も42件(前年同月比500.0%増)と6倍に増えた。
「物価高」は、時間の経過とともに企業に重くのしかかっている。
 1月は製造業15件、建設業と運輸業が各8件、卸売業4件など、金融・保険業を除く9産業で発生した。「物価高」は幅広い産業で影響が広がっている。業種別では、燃料価格が上昇した道路貨物運送業6件のほか、食料品製造業5件、飲食料品卸売業3件、飲食料品小売業2件など、消費者に直結する分だけ価格転嫁が難しい食品関連業種で目立った。

物価高倒産

【産業別】製造業が15件で最多

 10産業のうち、金融・保険業を除く9産業で倒産が発生した。
 最多が製造業の15件(構成比35.7%)で、原材料価格および電気、ガスなど製造コスト上昇が影響したと思われる。
 次いで、建設業と運輸業の各8件(同19.0%)、卸売業4件(同9.5%)の順。
 円安やコロナ禍からの経済活動の再開による需要増、原油高やウクライナ情勢によるエネルギー、穀物価格の上昇などで幅広い産業に影響が及んでいる。

物価高倒産

【業種別】道路貨物運送業が6件で最多

 産業別を細かく分類した業種別(業種中分類)件数は、最多が道路貨物運送業の6件だった。運賃の上昇分以上に、燃料価格や人件費上昇分が大きく、価格転嫁も容易でないことから資金繰りが圧迫されたことを示している。
 このほか、総合工事業の5件。このうち、土木工事業と木造建築工事業が各2件、建築リフォーム工事業が1件で、建設資材の価格高騰が一因となった。
 また、食料品製造業5件、飲食料品卸売業3件、飲食料品小売業2件と、食品関連業種が並ぶ。

【負債額別】負債1億円以上が5割超

 負債額別件数は、最多が1億円以上5億円未満の19件で、4割超(構成比45.2%)を占めた。
 このほか、5億円以上10億円未満と10億円以上が各2件(同4.7%)で、1億円以上が23件と5割超(同54.7%)になった。
 このほか、1億円未満の小規模倒産は19件(同45.2%)だった。

物価高倒産

【形態別】破産が9割

 形態別件数は、消滅型の破産が38件(構成比90.4%)と9割を占めた。以下、取引停止処分が3件(同7.1%)、民事再生法が1件(同2.3%)の順。
 コロナ禍からの業績回復が遅れ、資金繰り支援策の副作用で過剰債務に陥った企業は多い。そこに物価上昇が押し寄せ、仕入コストアップの直撃を受けている。さらに、新たな運転資金を調達できず、先行きの見通しも立たないことから、破産を選択するケースがほとんど。

【従業員数別】10人未満が6割

 従業員数別は、10人未満が26件で「物価高」倒産の6割(構成比61.9%)を占めた。このうち、5人未満が19件(同45.2%)、5人以上10人未満が7件(同16.6%)。このほか、10人以上20人未満が10件(同23.8%)、20人以上50人未満と50人以上300人未満が各3件(同7.1%)だった。一方、300人以上は発生しなかった。
 エネルギーや原材料などの値上がりは、企業規模を問わず影響を及ぼしている。

【地区別】関東が最多の16件

 地区別は、最多が関東の16件で、「物価高」倒産の約4割(構成比38.0%)を占めた。
 次いで、東北7件、中国5件、中部4件、四国3件と続く。

 都道府県別では、22都道府県で発生した。
 最多が宮城県と埼玉県、東京都、三重県の各4件で、以下、神奈川県3件、岩手県と新潟県、福井県、山口県、岡山県、福岡県が各2件で続く。

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