札幌発 趣味品のリユースで全国展開「アンドトランク」

今回紹介するのは、札幌発のリユース企業「アンドトランク」。

リユース市場は拡大を続けており、2025年には3.5兆円に上ると予測されている。そんな中、アンドトランクは取り扱う商品を「楽器」「オーディオ」「カメラ」に絞り、専門化したことで急成長している。

【「趣味性の高い商品」のリユースで急成長】

札幌・東区の「アンドトランク」。楽器・オーディオ・カメラに特化したリユース企業だ。現在、宮城、群馬、広島、福岡など全国で8店舗を運営している。

この日、札幌店に買い取ったオーディオ機器が運び込まれた。ターンテーブルやアンプ、スピーカーなど14点。オーディオ愛好家が、長い間愛用してきたものだ。市場価値の高いものも少なくない。気になる買取価格は、合計300万円に上ると言う。

シニア世代が収集していたものを生前整理などで売りに出すことは多く、まだまだ「お宝」は眠っているという。

アンドトランクの創業は2015年。当初は自動車のタイヤやミシンを中心に、家具・家電など幅広く扱っていたが、創業から3年目に現在の業態に転換した。楽器・オーディオ・カメラに共通するのは、いずれも「趣味性の高い商品」であるということだ。  

木原社長は「業態転換で客数は減ったが、単価が上がり倍くらいになった」と話す。この業態転換が見事に当たり、売り上げは右肩上がりに。店舗網の拡大で、買取品の数は年間10万点にも上る。

こちらは札幌店の倉庫。検品を終えて、出荷を待つ商品がずらりと並ぶ。 木原社長は「約2週間で8割の商品は1回転する。残りの2割も大体60~90日で売れていく」と話す。単品では売れない商品は、ジャンルごとにまとめて海外に販売している。 

専門化したことで、総合リユース店に比べてきめ細かな「査定」ができるという。例えば、付属品・配線などにも値段を付けるのだという。客にとっては少しでも高く売れる可能性があることが選ばれる理由にもなる。

【出張査定に秘密 接客にDX…独自のノウハウ】

出張査定では、売却を希望する客の家を査定士が訪問する。札幌店は、北海道全域が出張エリアだ。

査定士は、使用期間や保管状況を聞き取り、メーカーや型番をチェック。写真を撮影して本部に情報を送る。値付けは現場の査定士ではなく、本部の担当者が行う。査定士によって値付けの基準にばらつきが出ないようにするためで、リユース業としては珍しい方法だ。

本部の担当者は、現場か送られてきた情報をもとに、買い取り価格の相場を確認。値付けの精度を高めるため、細かな状況について査定士に確認する。

査定士の最も重要な仕事は、客とのコミュニケーションだ。趣味性の高い品物だけに、思い出を十分に話してもらい共有することが客の満足度向上にもつながるという。買い取った商品は、動作確認などの検品をしきれいに清掃して写真を撮影。インターネットのオークションサイトに出品という形で販売する。

アンドトランクの戦略①「店頭販売」しないことで、むやみに店舗を増やさない。店を構えれば、年間の固定費は約2000万円。1店がカバーするエリアは広くなり、出張にかかる経費はかさむが、店舗の維持コストよりははるかに安上がりだ。

戦略②DXの導入。「ペーパーレス化」と「出品作業などの自動化」を行っている。木原社長は「利益のためには原価を下げるのが一般的。我々のような買取店にとって原価にあたるのは、買取価格。しかし競争力や店の信用度のためには、買取価格を下げるわけにはいかない。それなら、中間コストをカットしていくしかない」と話す。

以前の「手書きの査定表」では、改めてパソコンに入力するといった作業が発生していたが、「同じデータは2度と入力しない」ことを目指してシステムを開発。査定士が最初に入力した商品データがすべての工程に反映されるようにしたことで、入力作業の無駄をなくした。 

スタッフが手入力していた、オークションサイトへの出品業務なども自動化(RPA)。こうした取り組みで業務の大幅な効率化を実現した。 効率化で利益を生み、買取価格を上げることにもつなげているという。在庫管理などでも自動化を導入すべく計画が進行中だ。

戦略③「接客重視」の方針。接客力の高い査定士は客の満足度が高く、それが成約率の高さにもつながるという。そこで活用しているのが、客のアンケートはがきだ。  

買取金額の満足度のほか、スタッフの対応や品物の扱い方などについて5段階で評価してもらう。この評価を人事考課にも反映しているのだという。成約率などの成績もデータ化し、改善が必要な場合は、適宜、指導ミーティングを行っている。

ここで使われるのが、査定現場で録音した音声データ。出張査定では、不正防止も兼ねて客の許可を得て音声を録音している。買取部の複数の幹部社員が音声データを確認し、改善すべき点を指導する。1人の査定士について、3か月間は継続して様子を見守り、接客力を確実に高めていくという。

戦略に基づき成長してきたアンドトランク。木原社長は「総合店には売りたくないという客がほとんど。専門店であることによって各ジャンルのハイエンド(高性能・最高級)の商品をたくさん集められる」と話す。この先も、「趣味の物」の買取を軸に展開していく考えだ。

【MC杉村太蔵さんの一言】

MCの杉村太蔵さんは「趣味を扱うビジネスは強い」と話した。趣味にはお金を使う人が多く、こだわりも強いため、専門店に優位性がある。あえて商材を限定することで自社の強みにすることもできる。拡大するリユース市場、これからも注目していきたい。
(2023年2月11日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)

© テレビ北海道