スヌーズレン 岡山に広める挑戦 大西さん 常設室10日お披露目

大西さんが自宅に設けたスヌーズレンルーム。地域に広める取り組みを今後進める

 建築士の大西直美さん(43)=岡山市南区=がスヌーズレンを体験したのは、昨年3月。倉敷市の児童施設を訪れた時だ。

 光と音がつくる幻想的な空間。身を委ねるうちに、体の緊張が解ける気がした。可能性を感じ自宅で体験会を催したところ、参加者の反応は上々だった。「いつも利用できるといいな」。こうした声に押され実現させたのが、自宅一室の常設ルーム化だ。大勢からの支援で資金を得て、10~12日にお披露目会を開く。

 スヌーズレンは、重度知的障害者の療育法として欧州で生まれた。今では認知症の高齢者や発達障害の子どもが利用するなど、対象のすそ野は広がりを見せつつある。「ルーム完成はスタート地点。これから地域に広めていきます」。挑戦が始まる。

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 大西直美さんがスヌーズレンに関心を抱いた原点は、線維筋痛症を患いはじめた時だ。激痛が全身を襲う原因不明の病。2019年に症状が現れ翌年に診断された。

 痛みは心にも現れた。「健康に見えるだけに、痛みの深刻さは周囲に理解されにくい」。この体験と建築士のキャリアを生かしたいと、ある決断をする。

 22年2月、住まい空間のデザインを提案する個人事務所を自宅に開設した。スヌーズレンに出合ったのは、その翌月。「体や心の痛みを忘れさせるような、居心地よい空間づくりをサポートしたい」との思いに重なった。

 可能性を確信したのは、5月の体験会だった。重い障害がある子が音に反応して笑う姿を見て「非日常的な空間の力」を感じ、常設ルームの実現を決意した。

 資金調達では、山陽新聞社や中国銀行などが運営するクラウドファンディング(CF)サービス「晴れ!フレ!岡山」を利用。80万円を目標に8月から約2カ月募り、延べ50の個人・企業が計87万5千円を寄せた。10日からのお披露目会は、お礼の意味を込めた。

 国内では、障害児の療育施設などがスヌーズレンを採り入れ、県内でも導入例は複数ある。大西さんは、そのうちの社会福祉法人クムレ(倉敷市栗坂)との連携を進めながら、スヌーズレンに対する地域の関心を高めていきたいと考える。

 基盤固めのために、NPOの年内立ち上げを目標に掲げる。もう一つは常設ルームの移設。生活拠点の自宅だと制約があるが、外だとより自由に活動できる―との思いからだ。「気軽にお茶を楽しみ気持ちもリフレッシュできる。そんなカフェ感覚の場を提供できたらうれしい」

 お披露目会(無料、予約制)などの問い合わせは大西さん(090―5277―1680)。

 山陽新聞社は地域の課題解決や新たな魅力創出を図る「吉備の環(わ)アクション」を展開中。大西さんの取り組みを紙面掲載などでバックアップする。

 スヌーズレン 光や音などが五感を適度に刺激することで、さまざまな反応を引き出したり、リラクセーション効果を得たりするように構成した空間。言葉はオランダ語の造語で「においをかぐ」と「うとうと眠る」の意味が組み合わされているという。

大西直美さん

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