映画『零落』 竹中直人が本屋で手にした作品を手にして映画化が決定

俳優の斎藤工、趣里、玉城ティナ、監督の竹中直人、原作者の浅野いにおが、8日、都内で行われた映画『零落』の完成披露プレミア上映会舞台挨拶に登場した。同作は青春漫画の金字塔『ソラニン』を放った漫画家・浅野いにお氏の新境地にして衝撃の問題作を映画化。監督はデビュー作『無能の人』から10作品目となる竹中直人。主人公の元人気漫画家・深澤薫を斎藤が、猫のような目をした風俗嬢・ちふゆを趣里が演じた。

原作ファンだという斎藤は「浅野いにお作品の中で最も内臓の部分を描いてくれた作品だと思います。それが自分の内臓だと思うくらいに衝撃的な印象でした。役を演じるにあたって、自分がミドルエイジ・シンドロームだったかもしれないですが、心当たりしかない。痛いほどわかる。立場は違えど、『零落』という感覚に共感しかなかったです。自分の出来事だと思うくらいに共鳴できました。だから撮影はつらいような楽しいような時間でした。出来上がった作品を観て、それは間違えていなかったと思いました」と振り返った。

個性的なキャラクターを演じた趣里は「いにお先生の描いた女の子を演じるというのは、とても光栄だと思うと同時にプレッシャーでしたけど、自分が読ませていただいて、心を持っていかれた初動というものは、大事に、現場では心強い竹中監督が導いてくれて、明確にイメージを伝えてくれたので、内側からちふゆというキャラクターができていきました」と振り返った。玉城は「名前がないキャラクターなんですけど、だからこそ皆さんの記憶に刺激される人物だと思います」とアピールした。

斎藤に出演オファーを出した竹中は「工と山田孝之と3人で『ゾッキ』という映画を撮ったんですよ。いつも3人で宣伝していたんですが、たまたま孝之がいない日があって、工と2人でごはんを食べに行ったんです。そのときに映画の話しになって『次は浅野いにおさんの「零落」をやりたいと思っているんだよ』と話したら、工から『大好きです』と返ってきて。そのときの工の顔を見て、斎藤工しか深澤は考えられないと思いました」と明かした。

今作の映画化するきっかけについて聞かれた竹中は「赤坂の本屋さんでふとこの本を手にしたんですよ。見た瞬間に心に入り込んできて、この世界観はどこか純文学を読んでいる気持ちになりました。いにおさんに会ったときに、絶対に映画する思いで突き進みましたね」と話した。それを聞いた浅野は「竹中さんの僕に対する詰めっぷりがすごくて、毎回とんでもない量のLINEが届くんですよ。制作過程の細かいところまで書いてきて、すごい熱の入れようでした。あまりに先走り過ぎていたので『漫画原作で映画を作るときは、出版社が間に入るんです』って僕から教えました。そこはかなり直接やり取りさせてもらいました。作品としては竹中さんのフィルターを通していて、竹中さんでなければ、映像化はなかったと思います。竹中さんの思い描いたようにやっていただきました。出来上がりを観て満足です」と喜びの表情を見せた。

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