企業内起業!? 焼き芋専門店「焼き芋パンダ」で売り上げアップを狙う中川商店(新潟県長岡市)

目印は焼き芋を持っているパンダのマスコット。表情があいくるしい。

最近、新潟県内に焼き芋専門店が増えたように思う。実際、2022年に同時多発的にあちこちに焼き芋専門店ができている。総務省統計局の「家計調査」によれば、2020(令和2)年度の一家族分のさつまいもの平均的な消費量は、群馬県と同数の5.3本で、32位である。第1位の徳島県12.1本に比べて、6.8本少ないのである。新潟県が生産量・消費量ともに全国1位を誇る枝豆の場合と比べると、どうもぱっとしない。「焼き芋に特化して採算は取れるのか」「冬はともかく、夏はどうするのか」など、いろいろと疑問もつもる。

そんな個人的な事情はさて置いて、2022年12月26日にオープンしたばかりという「焼き芋パンダ」へ話を聞きに行ってきた。お話をきかせてくれたのは、株式会社中川商店(新潟県長岡市美沢4・中川清宜代表取締役)の中川脩平さん(35歳)である。

焼き芋パンダは、中川商店の敷地内にある。同社は土木建設資材・地盤調査・地盤改良などを主な事業とする創業から70年以上の、由緒ある企業である。元々全く別の業種の企業が、どうして焼き芋専門店を始めようと思ったのか。話を聞いてみると、中川さんの発案だということがわかった。

新ジャンルでさらに売上アップを目指す株式会社中川商店

中川さんは、地元の高校を卒業後、千葉県にある大学で農業の勉強をした。その際、サツマイモや里芋などイモ類の生産と販売に、可能性を見出したという。大学卒業後も千葉県内で就農、自身の農園を持つに至った。7年近く専業で農家をした後、地元である新潟県長岡市に戻った。現在は、ご両親の経営している会社を手伝いながら、新潟県と千葉県を往復している。いわば、‟デュアル・ライフ(二拠点生活)“を送っている。

会社敷地内で焼き芋専門店を始めたのは、会社の売り上げが落ちてしまう冬期間の売り上げを伸ばすためだった。今のところ、売り上げは好調で、「一応黒字である」とのこと。「今後は、(冬期間のみではなく、)年中販売する予定だ」と語る中川さんは、「新商品なども考えていきたい」と語る。ちなみに取材時点で、焼き芋以外にも、干し芋も販売していた。こうなると、もう立派な企業内起業である。

事業への想いを語る中川さん。

気になったのは、「焼き芋パンダ」という屋号である。どうしてパンダなのだろうか。「パンダだと覚えやすいし、何よりもかわいくて親しみのわきやすいイメージがある。今後はグッズ販売も検討している」という。

同「焼き芋パンダ」で取り扱っているサツマイモの種類は「シルクスイート」という高級品種である。薄い紅色の皮、中はきれいなクリーム色をしている。焼き上がりは、しっとりして滑らか、まるで絹のような舌触りであることから、名づけられている。甘さも後味に残らないで、あっさりしていて食べやすい。

味はしっとり。それでいてあっさり。名前が表すように、本当にシルクのような舌触りだ。

見よ、このボリューム感!これで約400g。約400円は非常にお得感がある。

同店ではこれを、1g1円(税別)と、格安で売っている。焼き芋のグラム売りとは珍しい。店内で購入するときは、最初に大・中・小と、大まかなサイズを店の人に伝え、その中から電子ばかりで測りながら、価格を決定するシステムである。同店でこのように高級品種を安く提供できるのは、中川さんが千葉県で作ったものを、直接長岡に運んでくるから。中間業者が間に入らない分、非常にリーズナブルな価格で購入することができる。

「衛生面でも安心できる国産のサツマイモを使用した、安価でおいしい焼き芋が食べられますので、皆様よろしくお願いします」と中川さんは語った。謙虚で柔らかい物腰で語る脩平さんの瞳の奥からは、新しいことに挑戦し続ける若き起業家の矜恃を感じた。

店舗を手伝っている中川商店社員の佐藤さん。笑顔がとても印象的だった。

現在は日曜・祝日とお休み。「将来的には、年中無休にする予定」と中川さん。

(文・撮影 湯本泰隆)

【グーグルマップ 焼き芋パンダ(〒940-0856 新潟県長岡市美沢4丁目65−12)】

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