アニメ『ぼっち・ざ・ろっく』のリアルを現役バンドマンが語る「高確率で“廣井きくり”は存在します」

2022年秋スタートのアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』。アニメファンだけでなくバンドマンの間でも話題になったのだとか。そこで現役バンドマンに本作のリアルさについて伺いました。

陰キャで人見知りな少女・ぼっちこと後藤ひとりがギターに目覚め、様々な出会いを経てバンド活動の楽しさを経験していくアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』。

これまで数々の名作アニメを排出したガールズバンド要素に加え、各所に盛り込まれた人気バンド・ASIAN KUNG-FU GENERATIONへのオマージュも話題になった本作。放送が終わって今なお、まだまだ話題の作品でもありますね。そんな本作の大きな魅力として語られているのが、バンド活動に関するリアリティのある描写です。

作品のあちこちにある、時に生々しささえ感じるユニークなリアルエピソード。その数々のシーンは、多くのバンド経験者を中心に評判を呼んでいます。

アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』本ビジュアル

via

実はドラム歴約15年、バンド歴10年以上の筆者も、本アニメを見ながら何度も「このシーン、めちゃくちゃわかる…!」となった一人。ぼっちを始めとした四人のバンド奮闘劇には、思わずあるある!と思ってしまう描写が満載です。

そこで今回は、作品の中でも特にわかる!となったシーンに注目。これまでの私の経験談とあわせて、注目したいバンドマン的『ぼっち・ざ・ろっく!』の見どころをピックアップしたいと思います。

【1】“楽器が上手な人”は必ずしもバンドが上手じゃない!?

まず最初のポイントは第1話「転がるぼっち」より。ぼっちがドラム・虹夏とベース・リョウの3人で初めて曲を合わせるも「ド下手だ…」と評されてしまうシーンです。

ぼっちのイマジナリーフレンド・ギタ男の説明通り、バンドはあくまでチームプレイ。単身で楽器の上手な人が、必ずしもバンドで曲を合わせた時に上手とは限らない、というのは、まさに「バンドマンあるある」なのです。

CD『結束バンド』結束バンド

via

さらに言えば、バンド演奏の際特に大事なのはアイコンタクト。

メンバーと目を合わせることで、相手の思考がわかる…とまでは言いませんですが、「今日は調子よさそうだな」「曲のテンポちょっと早いかも」「ここできっちり決めたい!」などの気持ちや考えは、回数を重ねるほどなんとなく察しが付くようになってくるんです。誰かと視線を合わせることはおそらく陰キャでコミュ障のぼっちにとって、とんでもなく高いハードルだったはず。それを考えれば三人での初合わせが大失敗だったことも、バンド経験がある人にとっては「ですよね~!」と予想がつく展開でもあったことでしょう。

【2】一番のあるある…それはバンドマン金欠問題

続いてのポイントは、物語全体に散りばめられたバンドマン金欠エピソード!

これに関しては大勢のバンド経験者が、アニメを見ながらそのリアリティに震えた(?)のではないでしょうか。

CD『青春コンプレックス』結束バンド

via

作中でも描写のあったチケットノルマも、今回ぼっちは無事達成しましたが、当然ライブに出るたびに発生します。ちなみに私が活発にバンド活動をしていた時は月4~5回、ほぼ毎週ライブに出演し、チケットノルマを課せられたこともありました。さらに度々描写されたバンド練習の時も、スタジオ利用にはお金がかかります。利用料は1人1時間500~1000円が相場ですね。そしてライブハウスへの交通費も原則自費。私の場合は地方でバンド活動をしていたため、県外遠征となると金額もかなりの額になりました…。2時間のスタジオ練習を週1~2回。ライブは月数回、出る度にチケットノルマ約1万円。交通費として電車代や、遠方の場合はガソリン代、高速代、宿泊代の出費。またライブ後の打ち上げも参加の場合は基本的に自腹ですし、プラス音源やMVの制作費を考えると…あとはわかりますね?

これらの金額を考えると、バンドマンが常に金欠な理由も頷いて頂けることでしょう。

Blu-ray『ぼっち・ざ・ろっく! 』1巻

via

さらにベースのリョウのように、バンドマンの中には一部機材コレクター的な気質の人も。

楽器本体をたくさん買う人は少数かもしれませんが、ギターやベースの足元機材・エフェクター(1個数千円~中には数万円の物も!)を大量に収集する知人には、私も何人か覚えがあります。これだけお金がかかる一方で、ライブ出演は週末が多いため、土日夜の出勤が多いバイトは厳しい…という制約もバンドマンあるあるでしょうか。

そのためバイトのシフトとライブ予定の板挟みになりつつ日々活動する人も多いのが、リアルなバンドマンの一面でもあることでしょう。

『ぼっち・ざ・ろっく!』3巻(‎芳文社)

via

【3】高確率で“廣井きくり”のような人は存在する

最後にご紹介するポイントは、作中随一の個性派・ベーシストの廣井きくりについて。

非常にインパクトの強いキャラですが、彼女のような人は実際、少数派ですが確かにバンドマンの中には存在するんです…(笑)ちなみに廣井には実在のモデルがおり、それがバンド・八十八ヵ所巡礼のベーシスト・マーガレット廣井さんであるという噂も。この方、実は過去に米津玄師の楽曲への参加経歴も持つ、知る人ぞ知る凄腕ミュージシャンなんです。

彼女のことが気になる方は、ぜひ元ネタの人物&バンドもあわせて要チェック!キャラに負けず劣らず、こちらも破天荒でサイケデリック、そして最高にカッコいい方々ですよ。

『ぼっち・ざ・ろっく!』5巻(‎芳文社)

via

個人的体感ですが、上記のようなバンドマンには50人に1人程度の割合で出会うことが多い気がします(笑)。

お酒を常飲する一方で、酒癖の悪さで人に迷惑をかけるというよりは自滅の道を進む彼ら。作中の廣井のように機材や財布、家の鍵やスマホをなくしたり、酔っ払って路上で寝ていたり、転倒して大怪我をした人も私の知る限り数人存在しています…。頻度としてはやはり男性が多いですが、稀に女性でもそんなクレイジーな方がいたりします。そんなバンドマンと出会った時は、どうか命だけは大事に…と生暖かく見守ってあげてください…(笑)。

リアリティがヒットの鍵だった?

主人公となる少女・ぼっちの成長や仲間たちとの和気藹々としたバンド活動を描きつつ、時折これまでにないバンドのリアリティも描いたことでブレイクした『ぼっち・ざ・ろっく!』。普段アニメを見ないバンドマンにもおすすめしたい作品です。

(執:曽我美なつめ)

【LIVE映像】結束バンド「忘れてやらない」LIVE at 秀華祭/ 「ぼっち・ざ・ろっく!」劇中曲

via

■面白かった2022年秋アニメTOP10!4位『ぼっち・ざ・ろっく!』3位『SPY×FAMILY』…1位は?

https://numan.tokyo/anime/XLijy

© 株式会社マレ