トヨタ新型プリウスPHEV試乗記/走りのレベルが格段に向上。新たなEVパフォーマンスカーとして期待

 モータースポーツや自動車のテクノロジー分野に精通するジャーナリスト、世良耕太がトヨタ新型プリウスPHEVを初試乗。舞台は袖ケ浦フォレスト・レースウェイで、制限速度80km/hのルール内のなかで、新型プリウスPHEVの走りの魅力に迫る。

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 第4世代にあたる前型のトヨタ・プリウスは、ハイブリッド車(HEV)と、外部電源からの充電が可能でEV走行距離が長いプラグインハイブリッド車(PHEV)が別立てだった。PHEVはHEVと異なる内外装を備えており、『プリウスPHV』という専用の車名が与えられていた。

「カタログもハイブリッドとPHEVでは別でした」と、新型プリウスの開発責任者を務める大矢賢樹さんは言った。「そうすると、HEVを買うお客さんはPHEVのカタログは絶対見ない。逆に、PHEVを買うお客さんはHEVのことは考えない。第5世代では、PHEVを目に留めてもらいたいと思いました。それにはどうしたらいいかと考えたときに、同じカタログに載せればいいと」

 第5世代にあたる新型プリウスは、HEVもPHEVも共通のデザインを採用している。『プリウス』として同じカタログに載せるためでもあるが、狙いはそれだけではない。前型は1.8リッターのハイブリッド車のみの設定だったが、新型は1.8リッターに加え、2.0リッターのハイブリッド車の設定もある。さらに、その上をいくハイパフォーマンス仕様の位置づけがPHEVだ。

トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)
トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)のサイドシルエット
トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)

「昔は素の自然吸気があって、上級にターボ仕様があったりしました。PHEVはそのイメージです。プリウスの一連のラインアップのひとつとして選んでいただきたい」

 HEVかPHEVかで選ぶのではなく、「どのパフォーマンスが欲しいか」の観点で選んでほしいということだ。新型プリウスのパワートレイン別の主要スペックを以下に記す。

エンジン排気量 タイプ システム最高出力 0-100km/h加速

1.8リットル HEV 103kW(140ps) 9.3秒

2.0リットル HEV 144kW(193ps) 7.5秒

2.0リットル PHEV 164kW(223ps) 6.7秒

 パフォーマンスの視点で新型のPHEVを見ると、前型より50%以上向上したEV走行距離も魅力だ。前型PHEVのEV走行換算距離は60km(WLTCモード)だったので、新型は90km以上の数値が期待できる(PHEVの発売は2023年3月頃の予定。ゆえに、価格を含め正式なスペックは現時点で未発表)。

 袖ケ浦フォレスト・レースウェイ(全長2436m)には新旧のプリウスPHEVが待機していた。最初に前型に乗ってEV走行で1周し、ピットレーンでHEVモードに切り換えて2周。新型でも同じパターンで走った。

トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)
トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)

 走りを意識したTNGAプラットフォームを採用しているだけあり、前型PHEVの走りに致命的な欠点があるわけではない。よく走るし、充分に力強い。ところが新型に乗り換えて仰天した。EV走行ではモーター駆動に特有の、静粛性の高さが際立った胸のすくような走りが味わえる。大容量のバッテリーを搭載する必要性から、EVは背の高いSUVタイプが多いが、プリウスのようなサイズの背の低いクルマで力強いEV走行が(相応の距離・時間)味わえるのは貴重だ。

 ロールの絶対量は前型に比べて明らかに小さく、ロールスピードも抑えられており、走りのしっかり感がレベルアップしている。制限速度は80km/hの約束だったのできっちり守ったが、無意識にライン取りをイメージしていることに気づき、ひとり苦笑した。プリウスPHEVは走らせる気満々なクルマである。ハイパフォーマンスカー好きなら、気に留めておきたい1台だ。

トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)のコクピット
トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)
トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)のシフトまわり
トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)のフロントシート
トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)リヤシート
トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)
トヨタ新型プリウスPHEV(プロトタイプ)のリヤスタイル

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