サーマルグリル錯覚中、痛み関連脳領域で特徴的な脳波律動 畿央大学が発見

畿央大学大学院健康科学研究科修士課程の修了生である浦上慎司さん(現所属:星ヶ丘医療センター)および同大学ニューロリハビリテーション研究センターの大住倫弘准教授は、サーマルグリル錯覚を経験している時のヒトの脳内で特徴的な脳波活動が観測されることを明らかにした。

温かいモノと冷たいモノを同時に触った時、「痛い」と経験することがあり、この経験は“サーマルグリル錯覚”と呼ばれている。例えば、温かい棒と冷たい棒が交互に並べられているグリルの上に手を置くと、本当は熱くないはずなのに、痛みをともなう灼熱感が惹起される現象である。この現象は、中枢神経メカニズムによって生じると考えられているものの、十分なメカニズム解明には至っていない。

本研究では、健常者21名に実験に参加してもらい、サーマルグリル錯覚中の脳波活動を計測・分析することで、サーマルグリル錯覚に特徴的な脳波成分の抽出を試みた。その結果、温かい棒と冷たい棒が交互に並べられているグリルに手を置きサーマルグリル錯覚を経験している時には、暖かい棒だけが並べられているグリルに手を置いている時とは異なり、痛み関連脳領域/ペインマトリックス(Pain Matrix)の代表である島皮質周辺の脳波律動が特徴的に変化することを発見した。つまり、サーマルグリル錯覚を引き起こす脳領域が島皮質にあると考えることができる。

島皮質は、暖かい/冷たいという感覚の入力のほか、“痛い”という情動経験に関与し、さらに中枢性疼痛をもたらす脳領域でもある。本研究は、サーマルグリル錯覚における中枢神経メカニズムの一端を明らかにしたのみならず、中枢性疼痛のメカニズム解明にも役立つ成果であると考えられる。

論文情報:

【NeuroReport】Cortical oscillatory changes during thermal grill illusion

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