「谷水棚田」でキャンプ 有明海望む絶景にモニターの反応上々 農閑期の活用模索

キャンプ地からは眼前に有明海と天草諸島が広がる=南島原市、谷水棚田

 眼前に有明海を望む長崎県南島原市南有馬町の「谷水棚田」一帯で、農閑期の棚田を活用したキャンプが1月末、初めて開かれた。天空の星空や美しい朝焼けなど息をのむ絶景に、参加した3組計9人のモニターは大満足。少子高齢化による後継者不足で棚田の荒廃が進む中、新たな活用法に地元の期待も膨らんだ。
 谷水棚田は、標高約300メートルの傾斜地に階段状の水田が織りなす。初夏に黒光りする水鏡になり、秋は黄金色の稲穂が波打つ。かつては「日本の棚田百選」でも屈指の絶景で、農林水産大臣賞にも輝いた。
 だが、日本の棚田百選は1999年の決定から20年以上が経過。荒廃が進んでいる地域もあるため、主管する農林水産省は新たな枠組みで優良な棚田を選び、保全しようと、2021年秋、令和版「百選」(棚田遺産)を募集した。

星空を眺めながら棚田キャンプを満喫する参加者=南島原市、谷水棚田

 令和版「百選」の選定基準は、棚田がある地域の振興に「多様な主体が参加していること」を明記。高齢化で農業者だけでは棚田の管理が難しい地域が増えると見込まれ、地元住民や行政などが一体となった保全を求めた。22年2月、令和版「百選」が決定したが、谷水棚田は選定基準に合致せず、申請できなかった。
 今回、南島原市と県観光連盟は、棚田の地域資源を活用した「棚田×観光」の新たな取り組みを試行的に実施するため、共催で「天空の棚田CAMP(キャンプ)」と題したモニターを募集。1月28、29両日、現地で地元生産者らの協力の下、実施された。
 小雪が混じる寒空だったが、夜空に輝く満点の星空を眺めながら、温かいたき火に癒やされ、仲間との会話に花を咲かせた。参加者からは「(有明海を見下ろすパノラマビューに)ここまで視界が開けた棚田は初めてで、景色が素晴らしい」「田植えや収穫を手伝い、取れたお米をもらえる棚田オーナー制度とかがあれば保全になる」など貴重な意見が寄せられた。
 市観光振興課の梶原和隆さん(48)は「美しい景観を有する棚田を後世まで継承するにはマンパワーが必要不可欠。観光客に棚田キャンプ体験を通じて、ファンになってもらい、棚田の維持・保全活動につながることを期待したい。さらに磨きをかけて正式開催するとともに、美しい棚田の景観を市内外の方々の力を借りて残していきたい」と意気込む。


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