大地震のトルコ、支援は物資ではなく「義援金で」 駐日大使が必死の呼びかけ「被害者が寒さをしのげるように」

9日、トルコ南部カフラマンマラシュ県で、大地震後に倒壊した建物(ロイター=共同)

 トルコ南部を震源とする大地震は、犠牲者が3万人を超えた。被害のあまりの大きさに、在日トルコ大使館は初めて、日本円で義援金を送れる専用の銀行口座を設けた。伝統的な親日国で、日本各地とも友好・協力関係があるだけに、「支援したい」と考えている方も多いかと思うが、注意していただきたい点がある。大使館は、民間からの支援を義援金に絞っている。理由は、被災地が広範囲で、さまざまな物資が相次いで届くと、受け取る側に大きな負担が生じるためだ。物資の支援は政府間で既に対応が進んでいる。
 被災地は冬季の冷え込みが厳しく、氷点下になることも多い地域。コルクット・ギュンゲン駐日トルコ大使は現地の状況について、こう説明する。「自宅を失った人にとって非常に厳しい生活。当面は、寒さをしのげる衣服や仮設住宅が何よりも重要だ」(共同通信=山口恵)

記者会見するトルコのコルクット・ギュンゲン駐日大使=8日、東京都渋谷区

 ▽大使が語った現地の被害
 8日に記者会見したギュンゲン大使は、沈痛な面持ちで「私の友人も複数、がれきの中に取り残されている」と明かし、「ショックだが、国民一同で困難を乗り切るため、希望を捨ててはならない」と語った。
 被災したのは、大使によると10の県。いずれも古い歴史を誇り、文化の色彩も豊かな土地だという。「恋しい地域全体が被災し、心を痛めている。それぞれの県、すべてに思い出がある。地域、人、文化、歴史…。本当にトルコの大切な宝物だ」
 現在、日本に住んでいるトルコ国籍の人々は約6000人。被災地域の出身だったり、親戚がいたりする人も多く、大使館では、家族の安否確認や緊急帰国の相談対応に追われているという。
 日本とトルコは約9000キロも離れているが、古い交流の歴史がある。有名なのが、1890年(明治23)年の「エルトゥールル号遭難事件」。今の和歌山県串本町にある紀伊大島・樫野崎沖で、オスマントルコ軍艦のエルトゥールル号が台風で遭難した事故だ。
 乗組員500人以上が死亡し、生存者は灯台を頼りに岸まで泳いだ。救助や遺品の回収に和歌山の人々が協力し、日本とトルコの友好関係の礎になったとされている。
 こうしたゆかりを持つ串本町や和歌山県では、今回の地震での義援金募集を始めている。さらに、東日本大震災などでトルコから支援を受けた地域や人々も「恩返しの時」と同様の動きを見せ、援助を始めている。
 こうした動きに呼応するように、大使館では義援金の呼びかけも含めた地震関連の情報をツイッターとフェイスブック、インスタグラムで発信。大使館と名古屋市にある総領事館で、義援金送付のための銀行口座を設けた。義援金は、トルコの「災害緊急事態対策庁」に届けられ、現地の支援にあてられる。
 トルコ大使館の口座は、三菱UFJ銀行、渋谷明治通支店(470)、普通口座3195717、口座名は「TURKISH EMBASSY」 総領事館の口座は、三菱UFJ銀行、名古屋営業部支店(150)、普通口座1273225、口座名は「Turkish Consulate General」

 ▽ウクライナ侵攻への影響は?
 トルコは現在、ロシアによるウクライナ侵攻で両国間の仲介外交を続けている。ギュンゲン駐日トルコ大使は、地震の被害による国際情勢への影響を記者会見で問われると、「もちろん最優先は人命救助や復興だが、地震によってトルコが国際社会での取り組みを怠ることにはならない」と述べた上で、こう強調した。
 「ロシアとウクライナの戦争が激しい状態が続いている中、トルコも戦争終結に向け、平和交渉開始のための努力を欠かさず進める。(ウクライナ産の)穀物輸送の協力についても、以前と変わらず進めていきたい」

【トルコ大使館のツイッターアカウント】
 https://mobile.twitter.com/TorukoInNihon

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