映画初主演の倉野尾成美、小学生の役も「ちょっといけるかも」

倉野尾成美(AKB48 チーム4のキャプテン)映画初主演で、白血病を克服した少女と、そのドナーになった男の数奇な運命を、実話を元に描いた奇跡の感動作『いちばん逢いたいひと』が、2月24日(金)よりシネ・リーブル池袋にて公開されるのを前に、2月9日に完成披露舞台挨拶を開催した。

白血病を克服した少女・楓を演じた倉野尾の他、主治医役の三浦浩一、楓の父役の大森ヒロシ、白血病で娘を亡くしたことで、自らドナー登録する柳井役の崔哲浩、監督・脚本・出演の丈が登壇した。監督が、写真だけ見て倉野尾をキャスティングした話、倉野尾が、小学校時代の役も自分が演じると勘違いしていた話や、広島の切石山で楓が柳井に命の大切さを説くクライマックスの撮影の裏話や、大森の奥様が2〜3年前に白血病で亡くなっていたことを知らずにキャスティングをしていた話などについて聞いた。

丈監督は、観客と一緒に映画を観て、「啜り泣く声や笑い声で泣きそうになりました」と感無量の様子で登壇。

まず、本作制作について丈監督が説明。「プロデューサーの堀さんのお嬢様が実際に白血病の病にかかり、ドナーのお蔭で命を繋ぎました。圧倒的にドナーの数が少ないんです。堀さんは、ドナーをなんとか増やしたい、白血病について広めたいということで、映画化を考えていらっしゃいました。一人のお母さんが映画を制作しようと思って、芸能プロダクションを立ち上げ、監督のマネージャーをやって、四半世紀この映画を作るために生きていたんです。僕の演劇作品をご覧になって、セリフを気に入ってくださって、映画を撮るなら丈に頼もうと思ってくださっていたそうです。最初の打ち合わせからストーリーがあっという間にできました。堀さんの情熱に動かされました」と熱く話した。

映画のスタイルについて監督は、「『白血病について広めたい』ということは押し付けたくなく、『映画としてハラハラドキドキして、ユーモアもあるエンターテイメントにしませんか?』と堀さんに尋ねたところ、『もちろんそれがいい』となりました。医療ものだとしっとりした映像を思い浮かべると思いますが、ダイナミックな画作りにしました。」と語った。

主演の倉野尾成美は、「(娘がドナーに骨髄を提供してもらっただけでなく、)堀さん自身もドナーになって骨髄を提供されているので、そのお礼のお手紙を見させていただきました。(患者とドナーは)お手紙のやり取りしかできないので、貴重なお手紙です。『(患者とドナーは)本当は会っちゃいけない』ということをこの作品を通して知りました。私だったら会って感謝を伝えたいけど、手紙だけでしか伝えられないというのもドラマチックだと思いました。」と本作のストーリーについて言及した。

本作が映画初主演となった倉野尾は、「そんなに映像の作品に携わることがなかったので、『本当に私?』という感覚で今日までいます。メッセージ性がある大切な作品だなと思います。できる限り頑張ったので、多くの人に見てもらえたらと思います。」と話した。

倉野尾は本作のオファーを受けた時に、「小学生からやると思っていました」と話し、会場は大爆笑。倉野尾は「ちょっといけるかも」と思ったそうで、丈監督も「なるちゃんの13歳の時の映像を見たけど、全然変わらないから、できるんじゃないか?」と言い、登壇者は満場一致で”いける”という結論に!倉野尾は、大人時代のみと知って「ホッとしました。勘違いしていて恥ずかしかった」と話した。

丈監督は倉野尾のキャスティングについて、「楓というのはまっさらな人がいいなと思ったんです。女優さんはイメージがついていたりするので、透明感があって真っ白でイメージのないまっさらな人がいいと思って。新人オーディションだと主役の看板を背負うというのは厳しいと思い、既に大きな看板を背負っていて、まっさらな人と言ったら、AKB48か坂道。プロフィールをばーっと並べて、選抜ですよ。これでCD出したら売れるんじゃないか」と回想すると、観客からも笑いが。「楓のイメージで、『この子』と言ったのがなるちゃん。直感が当たりました。なるちゃんでよかった。」と話した。

崔は、クライマックスのシーンで倉野尾と対峙。「最初読み合わせの時に、すごい人数だったので、(倉野尾の)顔が見れない位置だったんです。音だけ聞いていて、声が凛としていて、読み合わせの時に驚きました。」と倉野尾の声を絶賛。「綺麗な女優さんっていると思うんですけれど、地に足がついて、凛とされている稀有な女優さん」と言い、会場から拍手がわいた。

倉野尾はクライマックスの撮影について、「大事なシーンが私の撮影最終日だったので、全然気が抜けなくて辛かったです。ずっと気張っている状態だったので、終わった後は力が抜けて、『終わった〜、終わった〜』とずっと言いながら帰りました」と回想した。

監督はクライマックスの撮影について、「僕が役者としてあのシーンをやるとしたら、カットを割られたら嫌だと思い、『セリフを噛もうが、間違えようが、すっ飛ばそうが、感情だけで最初から最後までやってくれ』と二人に言って、3回通したんです。素晴らしかったです」と撮影時の工夫を話した。

崔が演じる柳井は、本作のもう一人の主人公とも言える存在。「この映画のタイトルが、『いちばん逢いたいひと』。この映画のテーマ・本質ってなんだろうと思って時間経過を丁寧に表現できたらと思いました」と話した。

主治医を演じた三浦は楓の小学生時代のシーンに登場。子供時代を演じた田中千空ちゃんについて、「どこにでもいそうな子でも、お芝居になると、ドナーがなかなか見つからなくて、絶望してという心の表現をちゃんと演じていたし、屋上のシーンを見てボロボロ泣きました。子供時代はあの子でよかったと思います。ドナーが見つかって、新たにもらった命を演じた倉野尾さんの楓もキラキラしていて素晴らしかった。『生きているって素晴らしいことなんだ』というのが、あなた(倉野尾)の存在そのもので(表現できていた)。監督がよくぞ選んだと思います」とキャスティングに太鼓判を押した。

母親役の高島礼子について三浦は、「何十年も前から共演させていただいていて。弁護士や刑事だったりキャリアウーマンの役が多いイメージで、普通のお母さんの役はあまりないんじゃないかな。それはそれは見事に、いい味を出していました。」と話した。

大森は、「カミさんが乳がんが浸潤して肺に入り、延命治療に入り、その治療過程で白血病になったレアなケースなんです。うちのカミさんは亡くなってしまったんですが、オープンにしていなかったんです。キャスティングされた時も、監督のプロデューサーは全く知らずにオファーをいただいたんです。だから、お声がけいただいた時はびっくりしました。」と話した。監督は、「(楓のおじいさん役を演じた)不破さんもお姉さんが白血病と知らないでキャスティングしていたんです。ご縁を感じますね」と驚きの事実を話した。

闘病中のシーンについて大森は、「うちの場合も白血病だったので、無菌室でした。会える人も限られていて、2〜3名家族のみで、他の方はインターフォン越しでガラスの向こうなんです。1スパンが1ヶ月で、3日退院してまた1ヶ月というのを3回繰り返したんですが、その1ヶ月が長いので、辛いながらも笑顔になって欲しいなと思っていました。帰ってきて嬉しいし、本人にも笑顔になってもらいたいし、というので、仮退院の食事のシーンは象徴的でした。よく食事のシーンを作っていただいたと思いました」と、監督に感謝を述べた。

最後に倉野尾が、「この映画を通して初めて知ったことも私自身ありましたし、まずは知ることが大事なのかなと思うので、より多くの人に観ていただければと思います。この作品を観て思ったことを、これから大切にしていっていただければと思います。」と深いメッセージを送った。

■イントロダクション
10年ほど前、自身の娘が白血病になり、家族で乗り越えた経験を持つプロデューサーの堀ともこが、競泳の池江璃花子選手が白血病を乗り越え、東京オリンピックに出場したのを機に、「白血病と骨髄移植」、「ドナー登録」について理解を深めて欲しいと、少女が白血病になった二つの家族の物語が交差するドラマチックなエンターテインメント映画を企画。
その想いに賛同した老若男女のキャストが集結した。
型が適合するドナーが見つかった時の心の底からの感謝の気持ちと、手紙1通でしか繋がっていないドナーとの運命的で目に見えない絆を身をもって知るプロデューサーから生まれた、生きる意味を改めて問う物語が誕生した。

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